同じ投資信託でもコストが大きく違うことがあるのはなぜ?確認すべき点

投資信託には2つのコストがあることは、“投資信託の不都合な真実”かかっているのは必要なコスト?不純な投資信託の見分け方の記事でも説明したとおりです。が、全く同じ投資信託なのに購入時手数料が異なったり、同じタイプの投資信託なのに運用管理費用の料率が異なったりするケースがあります。こういった一物二価の状況を、どのように考えればよいのでしょうか。


同じ投資信託なのに異なる購入時手数料

基本的なことですが、投資信託を購入・保有するには2つのコストを負担する必要があります。購入する際にかかるのは「購入時手数料」で、これは購入金額に対して何%という料率で徴収されます。たとえば2%の購入時手数料がかかる投資信託を100万円分購入すると、2万円の手数料(厳密には消費税も加算)が取られます。

また保有期間中には「運用管理費用(信託報酬)」が日々、徴収されます。これは信託財産中から支弁される形になるので、投資信託の保有者自身はあまりコストを取られている感じはしないと思いますが、たとえば日本株のアクティブ運用ファンドになると、年率で2%程度が差し引かれます。

この他にも信託財産留保額や解約手数料がかかる投資信託もありますが、ここでは言及しません。

さて、購入時手数料と運用管理費用ですが、全く同じ投資信託なら同率かと思っている人もいるでしょう。

でも、現実には違ったりしています。たとえば投資信託会社が直接販売している「直販ファンド」であれば、販売金融機関を介していないので購入時手数料がかからないのに、全く同じ内容の投資信託を証券会社や銀行などの販売金融機関から購入すると、購入金額に対して2%程度の購入時手数料を取られるケースがあるのです。

なぜ手数料を払って投資信託を買うのか

もちろん、販売金融機関としてはその投資信託を販売するのに、それ相応の手間をかけていますから、購入時手数料を取るのは当然でしょう。

それにこの20年の流れとしては、投資信託の購入時手数料は自由化されており、投資信託会社は一定の水準を上限と定めたうえで、各販売金融機関が上限以下で購入時手数料の引き下げ競争をするのは原則自由です。同一の投資信託について購入時手数料の料率が異なるのは、競争原理という点からも決して間違ったこととは言えません。各金融機関が「うちだったら同じ投資信託でも購入時手数料をお安くしておきますよ」と競争すれば、最終的には投資信託を購入する個人にとってのメリットになります。

問題なのは、そもそもノーロードで販売されて人気化した投資信託を、販売金融機関が投資信託の残高を積み上げたいがために取り扱う際に、購入手数料を徴収しているケースです。

投資信託会社の直接販売ルートで購入すれば、高い手数料を取られずに済むのに、わざわざ2%の購入時手数料を払って、全く同じ性質の投資信託を販売金融機関ルートで買うのは、なぜでしょうか。

近くに購入窓口が無いからというのは、理由になりません。というのも直接販売を行っている投資信託会社の投資信託は、基本的にインターネット経由で購入できるからです。

金融機関に勧められて投資信託を買う人が多い世代

最近はたくさんの投資信託関連情報が、インターネットで流されています。そうであるにも関わらず、なぜ高い購入時手数料を払って、同じ投資信託を、投資信託会社の直接販売ではなく、銀行や証券会社から購入しようとするのでしょうか。

ひとつ考えられるのは、投資信託は今でも「金融機関に勧められて購入する金融商品」だということかも知れません。

投資信託協会が定期的に行っている「投資信託に関するアンケート調査」によると、「投資信託の興味・関心・購入のきっかけ」は、「金融機関の人に勧められて」が圧倒的に高く、2020年調査では全体の40%を占めました。次いで「インターネットで見たり調べたりして」が25%、「投資信託に関する本を読んで」が12.5%となっています。

さらにこれを年齢別にみると、「金融機関の人に勧められて」という回答比は、20代が24.1%、30代が23%、40代が24.5%ですが、50代は36.3%に上昇し、60代は52.1%、70代になると61.5%にもなります。

つまり投資信託を販売している金融機関にとってシニア層以上の高齢者は、「いいカモ」にされているかもしれないのです。この年代の人たちは、直接販売を利用すればもっと有利な条件で投資信託を買えるのに、金融機関の言いなりになって、わざわざ不利な条件で同じ投資信託を買っているのです。それだけ金融機関に対する信用が厚い世代なのかも知れません。でも、だからといって自分から情報を取りに行かなければ、いつまでも高い手数料を払い続けけることになるのです。

インデックスファンドにはびこる運用管理費用の一物二価問題

もうひとつ、投資信託の「一物二価」については、運用管理費用に関しても言及しておく必要があります。これは特にインデックスファンドに関してですが、ここ数年、インデックスファンドの運用管理費用引き下げ競争が激化するなかで、全く同じ株価インデックスに連動させるインデックスファンドであるにも関わらず、片や年1%、もう一方は年0.2%というような、理屈に合わない事態が生じています。

これは、ローコスト・インデックスファンドが人気化したため、多くの投資信託会社が採算度外視で運用管理費用を限界まで引き下げたインデックスファンドを新規設定したからです。ところが、それ以前に設定されたインデックスファンドは、今も運用を続けられているのに、高い運用管理費用を取り続けています。同じ期待リターンのインデックスファンドでありながら、コストが違うというのは何ともおかしな話です。

ひとつ言えるのは、販売金融機関はわざわざコストの安い投資信託を勧めて来ないということです。商売ですから、少しでも高いコストの投資信託を売りたいと考えるのではないでしょうか。だからこそ投資信託で資産運用をする場合は、販売金融機関に勧められて買うのではなく、自分で調べて買うようにすることが大事なのです。

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