“投資信託の不都合な真実”かかっているのは必要なコスト?不純な投資信託の見分け方

「投資信託の購入・保有にはコストがかかるので、出来るだけ安いコストのものを選びましょう」と言われます。

それはその通りですが、コストからその投資信託が不純かどうかも見えてきます。その見分け方を考えてみましょう。


運用管理費用とは

投資信託に純粋、不純の別があるのかと言われると、少し微妙なところがあるのですが、何となく透けて見えることがあります。それは運用管理費用(信託報酬)の料率です。

運用管理費用とは、その投資信託の運用や組入資産の管理・保全にかかる諸経費を受益者に負担してもらうもので、投資信託の信託財産から日々、差し引かれます。単純に言うと、たとえば年間の運用管理費用が1%だとしたら、1%の365分の1ずつ毎日、投資信託の信託財産から支弁されていくイメージです。

もうひとつ投資信託のコストとしては、投資信託を購入する際に購入金額に対して一定率を販売金融機関に対して支払う「購入時手数料」があります。

購入時手数料の場合、たとえば購入金額に対して2%が取られるとしても、運用管理費用のように保有期間中、取られ続けるものではなく、あくまでも購入時のみ徴収されるものなので、保有期間が長くなるほど1年あたりのコスト負担率は低くなります。

購入時に2%が取られたとしても、その投資信託を10年間保有すれば、1年あたりのコスト負担率は2%÷10年=0.2%になるという理屈です。

販売金融機関にとっては二度おいしい投資信託

繰り返しになりますが、この購入時手数料は全額、投資信託の販売窓口となる販証券会社や銀行などの販売金融機関が受け取ります。つまりたくさん売れば売るほど、販売金融機関は多額の購入時手数料を受け取ることになります。販売金融機関もただで商品を販売するわけにはいきませんから、投資信託を販売した手間に相当するだけの手数料を受け取るのは、ビジネスとして当然のことです。

しかし、実は販売金融機関が投資信託から得ている収益は、購入時手数料だけではありません。これは投資信託の目論見書などにも記載されているのですが、運用管理費用のなかに「代行手数料」という項目があり、販売金融機関が投資信託の残高に応じて受け取るフィーになります。つまり投資信託という金融商品は販売金融機関にとって、お客様に販売した時だけでなく、お客様がその投資信託を保有し続けてくれる限り、その残高に応じたフィーを日々、受け取ることが出来る、まさに一粒で二度おいしいプロダクツなのです。だから証券会社や銀行などの販売金融機関は、一所懸命になって投資信託を売ろうとするのです。

これら投資信託の手数料については、いくつかの問題点が指摘されており、これからも順次、「投資信託の不都合な真実」としてこの欄で書いていきたいと思うのですが、今回のテーマは運用管理費用の含まれる代行手数料に関することです。

目論見書の内容をチェックする

投資信託を購入し、目論見書を丁寧に読み込んだことがある人は、恐らく少数でしょう。最近はやや簡略化された目論見書も用意されていますが、それでも難しい言葉が細かい字で書かれている書面を見るだけで、読む気が無くなる人もいると思います。

でも、目論見書に記載されている運用管理費用についてはしっかりと目を通してもらいたいと思います。それは、本稿のテーマである「不純な投資信託」かどうかを見極めるうえで、運用管理費用の項目が非常に重要になってくるからです。

運用管理費用がどういう構造になっているのかを簡単に説明しておきましょう。

投資信託は、その運用に必要な各種業務を遂行する投資信託会社と、お客様から預かった資産を管理する受託銀行(大半は信託業務を営んでいる銀行)、そして実際に投資信託をお客様に販売するのと同時に、購入代金や解約代金、あるいは償還金、決算ごとに支払われる分配金の受取窓口業務を担う販売金融機関の三者で運営されます。

このうち投資信託会社と受託銀行は、純資産残高に対して日々、一定率で徴収する運用管理費用を分け合って受け取ります。

次に販売金融機関ですが、こちらは前述した購入時手数料の他、代行手数料を受け取ります。通常、代行手数料は運用管理費用の一部に含まれる形で、投資信託会社や受託銀行が受け取る分と一緒に計上されています。

ここで問題にしたいのが、投資信託会社が受け取っている運用管理費用と販売金融機関が受け取っている代行手数料の料率のバランスです。

運用管理費用の代行手数料分が高いことの不思議

運用管理費用の内訳は目論見書に詳しく記載されているので、ご自身でも確認されると良いと思うのですが、たとえば年間の運用管理費用の料率が全体で2%だとしましょう。

このうち受託銀行が受け取る額は、年0.1%前後です。年2%から年0.1%を差し引くと、残るは年1.9%であり、これを投資信託会社の運用管理費用と、販売金融機関の代行手数料とで分け合います。

問題はそのバランスです。

確かに販売金融機関に売ってもらわなければ、投資信託にお金は集まりません。投資信託会社が直接、顧客に自社運用ファンドを販売する直接販売もありますが、現状、販売金融機関を経由して売られている投資信託が大半を占めています。

加えて、顧客接点の窓口として存在することにより、顧客から購入代金を受け取ったり、解約代金や償還金を支払ったりする作業がスムーズに運びます。だから販売金融機関にも一定のフィーを付与するのは当然なのかも知れませんが、そうだとしても両者のバランスが悪すぎるのです。

たとえば上記の例で、年1.9%を分ける場合、投資信託会社の運用管理費用が年0.95%、販売金融機関の代行手数料が年0.95%というように、同率のファンドが結構多いのです。昔は、なぜか代行手数料の料率が高めに設定されているファンドもありました。

このように、投資信託会社が受け取る運用管理費用に比べて、販売金融機関の代行手数料が高めに設定されているのは、投資信託会社と販売金融機関の力関係で、販売金融機関が強いケースです。過去においても、販売金融機関の子会社という位置づけの投資信託会社が運用し、もっぱら親会社である販売金融機関でしか販売されていない投資信託に、こういうパターンが見られました。これは親会社の懐を潤すために、子会社である投資信託会社が投資信託を運用しているという構図でもあります。不純だとは思いませんか。

販売金融機関も投資信託に関連した作業を行っているので、妥当なフィーを得る権利があるという意見はもちろん正しいと思います。

でも、だからといって投資信託の運用を行っている投資信託会社が受け取っている運用管理費用と同率の代行手数料を取るのは行き過ぎです。購入資金を受け入れ、解約資金や償還金、あるいは分配金を支払うという作業の持つ付加価値が、投資信託を運用してパフォーマンスを維持するという作業の付加価値と等価だとは、とても思えないのです。

この話を読んで興味を持たれた方は、自分が持っている投資信託の目論見書を確認してみてください。代行手数料の料率が、投資信託会社の運用管理費用の料率と同じか、それを上回っている場合は、販売金融機関のプレッシャーが極めて強いか、もしくは投資信託会社がたくさんファンドを販売してもらいたくて、販売金融機関が受け取るフィーに色を付けているかのいずれかです。

そして、いずれにしてもそこには不純な計算が働いているのではないかと、邪推してしまうのです。

© 株式会社マネーフォワード