新バイオ映画はゲーム派も必見!『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』 超人気シリーズの変遷を徹底解説

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

ゲーム「バイオハザード」の進化

ゲーム「バイオハザード」シリーズは1996年のシリーズスタートから本数を重ね、現在までゲームは関連作も含め27本。ハリウッドでも映画化され、「ゾンビもの=バイオ」と言えるほどゾンビ、そしてゾンビゲームを普及させるのに大きな役割を果たした。と同時に絶えずホラーゲームの新しいフォーマットを提示し、牽引してきた。

1作目「バイオハザード」は全世界で大ヒット、海外では「レジデント・イービル」のタイトルで普及していくことになる。3Dアドベンチャーゲームのフォーマットで、惨劇の起こった洋館を舞台に、監視カメラ的なアングルで展開されていくゲームは、死角や予想もしなかったところからのゾンビの出現や、弾薬などの限られた資源が生むサスペンス等、新しい趣向に満ちたホラーゲームであった。

舞台を市街地に移した2作目、探索だけでなく全編が巨大な敵に追われる恐怖に満ちた3作目など、1作目のフォーマットを用いながら、毎回異なるアプローチを加え、バイオは新たなホラーゲームの形を作ってきた。

特に劇的な進化を遂げたのは4作目からだ。今までの操作系統を一新、主人公の肩口からのカメラアングルに変更、銃などの装備、照準により主軸を置いたガンシューティング・アクションに生まれ変わった。敵も単なるゾンビではなく寄生体的なモンスターが登場、舞台も『変態村』(2004年)のようなユーロホラーの流れをいち早く取り入れていた。

アフリカを舞台にした5作目では後方支援とでも言うべきパートナーシステムが加わり、続く6作目では複数のキャラクターの視点からの物語が展開。外伝的作品となった6作目「リベレーションズ」では、限定された船の中や牢獄など、最初のバイオの様に限定された閉鎖空間での物語に原点回帰させ、エピソードごとにダウンロードして続きを追って遊べる、という現在の配信ドラマを意識した試みもされた。その続編「リベレーションズ2」では、同じ島の反対側からやってきた人々の別視点からの物語を描くという『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)的アプローチも画期的だった。

また、自社(カプコン)のゲーム以外でも任天堂の「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズに主役級キャラのクリスがゲスト出演するなど、メーカーを越えて活躍。そして「バイオ~」世界はゲームや映像媒体以外にも広がりを見せ、モデルガンメーカー・東京マルイは、クリスらが使用するカスタムガンをガスガンで発売した。

「バイオ~」は家庭用ゲームだけにとどまらない。アトラクション用の「バイオハザード4D」は大畑晃一監督を迎え、映像を駆使したホラーアトラクションの先駆となった。さらに、フルCGアニメでアナザーストーリーを描く「バイオハザード ディジェネレーション」等が作られており、近年でもNetflix配信の連続アニメシリーズ「バイオハザード:インフィニット・ダークネス」などが配信されている。

そんな「バイオ~」シリーズは「バイオハザード7 レジデント イービル」でさらなる進化を遂げた。今までとはまったく異なる一人称視点、主人公は特殊部隊とは無縁の一般人。異常な家族に監禁され、そこから脱出するところから始まり、冒頭の敵はゾンビですらない……と、まったく今までの『バイオ~』とは異なっている。

この「7」は、画質クオリティが向上したおかげでより映画的表現が可能になったためか、ますます映画作品からの影響が増している。まず基本設定からして『悪魔のいけにえ』(1974年)なのは一目瞭然で、館周辺が沼に囲まれている舞台設定は『悪魔の沼』(1976年)である。廃屋の中で老婆に追い回される、といった『ギフト』(2000年)的なテイストも(しかも有無を言わせず見つかったら一発死)。障害物=天井から吊された死体を避けつつ追っ手から逃げ回ったり、ようやっと手に入れた武器で逆襲に転じたりと、プレイヤーが受ける精神的ストレス、恐怖は相当なモノである。

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アメリカンホラーを題材とした「7」に続き、8作目となる最新作「バイオハザード ヴィレッジ」は、怪しげな洋館に現れる狼男などのクリーチャーと相対しなくてはならないという、ヨーロッパホラーをも内包する作品となった。

そもそも日本でのタイトル「バイオハザード」は、生物テロ的な要素を多分に含んだものだが、地獄のような呪われた館に放り込まれる、という7~8作目の設定は海外版タイトル「レジデントイービル」=“邪悪な舘”が、よりふさわしくなった感がある。

ホラーというジャンルを全て包括しようとしているかのような、独自の路線を歩む現行のナンバリングシリーズと並行してリリースされているのが、かつての2~3作目の「リマスター版」の発売である。しかも、ただのリマスターではない。監視カメラ風のアドベンチャーゲームだったオリジナルを、4作目以降の3人称視点の射撃を重んじた、現代的なシステムにアップデート。今後のゲーム版「バイオ~」の進化も実に楽しみなところだ。

原点回帰! 映画『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

そして、「バイオ~」はもちろん映画版の効果が大きい。ゲームをプレイしない層は、まず映画を思い浮かべる人も多いはずである。ポール・W・S・アンダーソン監督、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演で作られた映画版『バイオハザード』シリーズ計6作(2002~2016年)はゲームを下敷きにしつつも、回を重ねるごとに世界的規模の災害を描く「世界終末映画」となっていき、映画オリジナルの展開を見せていく。

アンダーソン監督(2~3作目は脚本のみ)にとっても『バイオ~』シリーズは出世作となり、当時モデル業がメインだったミラも、弟がゲーム版のバイオの大ファンであったことから映画への出演を決め、女優として知名度を上げ、将来の伴侶となる監督と出会っているので、バイオによって人生を変えられたと言っても過言ではないだろう。

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そんな中、あらたに公開される映画版最新作『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は装いも新たに、ゲーム版「バイオハザード」の内容に非常に忠実な映画化作品となっている。リブートというよりも、むしろシリーズの原点に回帰したような映画になっており、『バイオ~』の世界観がわかりやすく伝わるように作られている。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

カプコンは今回の映画化に際し、初期段階から脚本や参加キャラの造形などのCGデータ、建物のマップまで提供。そのためゲーム2作目の警察署など、「あ、ここプレイした!」と思うようなゲーム内の場所や名シーンが再現されている。惨事を引き起こすきっかけになるトラックドライバーに感染が次第に広がっていく様子などは、ゲームを完全に再現しており驚かされる。このようなシーンが映画全編、随所に登場するのだ。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

屋敷の肖像画といった舞台道具や、タイプライターなどゲームでは不可欠なアイテム、秘密の部屋の鍵の形に至るまで、細部まで徹底してゲーム版の世界が再現されている本作。監督がゲーム版の大ファンというのも納得できる、随所に“バイオ愛”が炸裂している作品だ。観客もゲームをプレイしているかのような感覚が味わえるのではないだろうか。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

「最初にプレイしたときの恐ろしい感覚を再現」 映画『バイオハザード』リブート版始動! ファン待望のキャラ登場!!

ホラーとアクションのバランスが良い本作は、ただ忠実にゲームをなぞるのではなく、映画オリジナルの展開も多々含んでいるので、ゲームをプレイしたことがある観客も驚くはずだ。レオンやウェスカーなどお馴染みのキャラたちのゲームとは異なる設定など、ゲームを知ってる人も知らない人にも楽しめる作品だろう。この映画を観ることで、「ゲームの方もプレイしてみたい!」とバイオ世界に入るきっかけになるのではないだろうか。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

“いかにゲームで映画的な表現ができるか”にこだわってきた「バイオハザード」シリーズ。今回の映画版は、その試みとは逆に“ゲームの名場面をいかに映画の画面にコンバートするか”という挑戦に満ちているような気がする。それは、「バイオ~」が歴史あるシリーズであることと同時に、文化として根付いているということでもある。今後も「バイオハザード」と映画との関係性から目が離せない。

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』

文:多田遠志

『バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ』は2022年1月28日(金)より全国公開

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