自ら“ゴミを拾う”選手の育て方 強豪シニア率いる元巨人投手の「言わない」指導

友部リトルシニア・原田明広監督【写真:川村虎大】

友部シニアを率いる元巨人投手の原田明広監督

茨城・笠間市で活動する友部リトルシニアは、実力とともに育成力にも定評がある。2018年ドラフト1位で巨人入りした高橋優貴投手の出身チームで、2021年の夏の甲子園にはOB4人が出場した。指導するのは、元巨人投手の原田明広監督。First-Pitch編集部では、子どもたちの成長を促す「ひきだすヒミツ」に迫った。

3学年で36人と決して多くはないものの、人数以上に感じる大きな声がグラウンドに響く。選手たちは監督の指示を受けることなく自ら行動する。背景にあるのは、“人間力”を育てる指導にある。

原田監督は、茨城・笠間高から1984年ドラフト外で巨人に入団。1991年の引退後は地元に戻り、37歳の時に友部リトルシニアを立ち上げ、自ら監督に就任した。

選手らに意識させているのは、自ら考え、判断させること。「投手が投げてから、コンマ数秒で打者は判断しなきゃいけない。瞬時の判断というのは、日ごろから考えていないとできないんです」と話す。中でも、気付きができる人間になることが結果につながると考える。

あえて指導せず、見て覚えさせることも

「常に周りを見て最善の判断ができるのが、野球にも生きてくるので。例えば『ゴミを拾いなさい』と指導されて拾うのは誰でもできますけど、何も言わずに拾うのが“気付いている”人間なんです」

気付きを促すためには、時には「言うのを我慢することも大事」だと話す。あえて何も言わずに、監督自らゴミを拾うところを見せることで、気付かせる時もあるという。

ただ、野球の練習だけで身につくものではない。「普段の生活から気付けなかったら、グラウンドで気付けるわけがないんです。だから選手には『90度だけじゃなくて、周りの270度が大事だよ』と伝えています」。本塁から見たグラウンドのフェアゾーンの角度を引き合いに出し、視野を広げようとしている。

育てたいのは、人間力のある選手。そして、人間力を育てられる人材になること。「プロもうれしいですけど、教員になって、選手らを指導する立場になってもらいたいですよね」。原田監督の目線は、選手育成の先を見据えている。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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