世界初?全裸で読む漫画 銭湯と漫画を愛する2人の挑戦

東京都内でも銭湯の廃業が相次いでいます。そんな中「銭湯愛」が散りばめられた世界初とみられる“裸で読む漫画”が話題となっています。銭湯と漫画を愛する2人の男性に注目しました。

銭湯を愛する謎のヒーローが旅をしながら銭湯の魅力を世に広げるドタバタギャグコメディー漫画『セイントセントー』が読めるのは、東京都内にある銭湯です。これは、熱き志を持った2人の男が手掛けた"世界初?全裸で読む”をコンセプトに描かれた"浴槽限定連載漫画”です。最新話が更新されるのは毎月1日で、都内3カ所の銭湯に貼り出されます。

そんな人気漫画を企画したのは、台東区にある「萩の湯」の店主・長沼雄三さんです。銭湯を営む家に生まれた長沼さんは2001年に家業を継ぎましたが、営業を続ける中で「私が継いだ2001年にはお客さんが1日平均200人ぐらいだったが、前年は210人、5年前は250人ぐらい来ていた。このまま毎年10人ぐらいずつお客さんが減っていくと、10年後には100人となって経営は成り立たない」と危機感を持つようになったといいます。

近年の入浴者数の減少は銭湯にとって死活問題になっていて、都内の公衆浴場はこの10年間でおよそ3分の2に減少しています。こうした状況に長沼さんは古かった銭湯をきれいに改装したり、日替わり湯の内容や月ごとのトピックスを記載した"新聞”を貼り出すなど、考えられる工夫を積極的に行いました。こうしたアイデアが功を奏して、周辺の銭湯が閉店する中でも長沼さんが手掛ける銭湯は入浴者数をおよそ3倍に増やすことに成功しました。

さらに新たな秘策を思い付くのです。それが「オリジナル漫画」です。長沼さんは「自分が小学生の頃、週刊少年ジャンプやマガジンが流行していて、競うように月曜日みんなでジャンプを買いに行って読んでいた。それをお風呂屋さんで再現し、子どもたちの評判になればいいなという思いで考えた」と話します。

思いを実現するために長沼さんが相談したのが、数々の銭湯関連のポスターやキャラクターグッズを手掛け、自身も"大の銭湯ファン”というイラストレーターのメソポ田宮文明さんでした。相談を受けたメソポ田宮さんは「誰か若い人がいないかという相談だったが、すごく面白そうだと思って、じゃあ私がやらせてもらいたいと話をした」と振り返りました。実はメソポ田宮さんには志半ばで止まっていた"ある思い”がありました。それは「銭湯を知らない人に銭湯の良さを教えるというキャラクターで、友達と一緒に実写の特撮ムービーを作ろうという物語を考えていた」というのです。

意気投合した2人は漫画制作に向けて動き出します。ギャグ漫画の『セイントセントー』は、紙面に銭湯業界が抱える問題を取り上げたり啓発のメッセージも載せました。メソポ田宮さんは「銭湯業界の現状も教えてもらって『あ、やっぱり大変なんだな』とも思った。自分でできることがあったら協力したいと思った」と話します。

セイントセントーの人気は高まり、それに伴って銭湯の入浴者数も1日平均1000人まで伸びています。長沼さんは「存在感がなくならないよう、いろいろな角度から銭湯をアピールしていって、一つ一つのサービスがお客さんに届くと『ここはいろいろなことをやってくれる銭湯なんだ』と面白味を持ってもらえると思う」と話しています。

銭湯のさらなる魅力を発信するために、2人の熱きチャレンジはまだまだ続きます。

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