国民投票法による憲法改正の認知度について(データアナリスト 渡邉秀成)

今年2022年には第26回参議院選挙が予定されています。国政選挙の投票率が低下傾向にある中、今年7月に予定されている参議院選挙の投票率はどの程度になるのでしょうか?これまでの衆議院、参議院選挙投票率の推移をグラフ化したものが下記になります。

前回2019年参議院選挙では投票率が50%を下回りました。投票した人は有権者の半分以下ということになります。

このように投票率が低調にある中で、今回はしばしば取り上げられる国民投票による憲法改正についての認知度について観察したいと思います。

まずはグーグルトレンドを利用して憲法改正についての検索動向のグラフが下記になります。

2016年7月に人気度が100をつけています。2016年7月10日には第24回参議院選挙が執行されており、主な争点の一つとして憲法改正についてがありました。そのために憲法改正について検索をする人が多かったのではないかと推測されます。

この憲法改正ですが、国政選挙において有権者が投票する際に考慮する内容の優先順位としてどのくらいの位置にあるのかについてグラフ化したものが下記になります。

有権者が投票する際に考慮する内容として上位に位置するのが、医療介護、年金、景気対策、子育て・教育等生活に密着するものです。第24回参議院選挙、第48回衆議院選挙では選挙の争点として有権者の意識に上ることが多かったと推測される関係で投票する際に考慮する内容として上位に来ています。

年代別に投票する際に考慮する内容としてグラフ化してもそれぞれの年代で生活に直結する内容が上位に来ています。憲法改正そのものが投票する際に上位に位置することはあまりありません。

そしてこの憲法改正の国民投票がどの程度有権者に浸透しているのか、認知されているのかについての意識調査が公益財団法人明るい選挙推進協会によってなされています。
この調査は第18回統一地方選挙(2015年平成27年),第19回統一地方選挙(2019年平成31年)、
第24回参議院選挙(2016年平成28年)、第25回参議院選挙(2019年令和元年)、
第48回衆議院選挙(2017年平成29年)の選挙後に実施された意識調査の中で設問として取り上げられています。

どの程度認知されているのかについて、これら調査結果の数値をグラフ化したものが下記になります。調査の日付順にグラフを並べています。

注:平成27年10月8日から11月5日にかけての調査では、設問が「あなたは国民投票法(憲法改正国民投票法)を知っていますか」 というものですが、それ以外の調査は「憲法改正のためには、国民が賛否を投票することが必要となります(国民投票制度)が、あなたは この制度を知っていますか。1つ選んで番号に〇をつけてください。」となっています。

調査結果を見ると「内容は知らないが言葉は聞いたことがある」というものが最も多く、「だいたい内容を知っている」がそれに続いています。これらの調査結果を見る限り憲法改正の国民投票について、具体的に憲法改正の国民投票について知っているという人の割合より、内容までは知らないけれども、報道等で見聞きしたことがあるという人が多いという印象を受けます。

このような認知度である憲法改正についての国民投票法ですが、総務省のページを見ると、

「憲法改正案に対する賛成の投票の数が上記の投票総数の2分の1を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第96条第1項の国民の承認があったものとされます。」

https://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/kaihyou.html 20220107 閲覧

と記載されています。

もう一度、国政選挙投票率のグラフを見ていただければわかると思いますが、直近の国政選挙の投票率は50%前後で推移しています。仮に国民投票の投票率が50%であったとすると、その投票した人の過半数、つまり有権者の4分の1程度の賛成で憲法が改正されます。

このような状態で国民意思が反映されているのか?疑問に感じる部分があります。最低投票率等を設定する必要等があるように感じます。

そして、現行憲法と改正憲法とを比較をして、どの部分がどのように改正されるのか?その改正は国民生活にどのように影響が出るのか?等が国民、有権者にわかりやすく、理解しやすい形式で周知されていることが必要であると思います。

国政選挙において有権者が投票を棄権してしまう理由として、「政党の政策や候補者の人物像など、違いがよくわからなかったから」「自分のように政治のことがわからない者は投票しないほうがいいと思った」というものがあります。

このようなことがないように、国民投票による憲法改正では有権者に対してわかりやすく判断材料を提示する必要があるものと思います。

ここ数年、報道データやGoogleトレンド等を観察すると、憲法改正という言葉が多く出現する傾向が見られるので、今回は国民投票法による憲法改正の認知度について触れてみました。

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