【特別寄稿】2022年 パチンコ業界の展望と、市場および販売台数の予測(WEB版)/鈴木政博

新型コロナウイルスの感染拡大が低水準となり一息ついた昨年末から一転し、オミクロン株の急激な感染拡大に見舞われる年明けとなった。沖縄県・広島県・山口県には「まん延防止等重点措置」が適用され、東京都や大阪府でも感染拡大の歯止めがきかない状況だ。このまま飲食店での会食自粛ムードが広がり外出が減れば、ぱちんこ業界も夜の稼働のさらなる低下などの影響は免れない。こうした改めて厳しい状況に陥っている中、今年のぱちんこ業界はどのような状況になるのか。今回は、旧基準機の完全撤去後の様々な要因もふまえ、2022年の業界展望について考えてみたい。

1. 今年の遊技機設置台数・販売台数へ影響を与える事案
今年の業界展望への影響についても、やはり「新型コロナウイルス感染拡大の終息」がどうなるかに大きな影響を受けることとなりそうだ。現状は新たな「オミクロン株」によると思われる感染拡大が爆発的に広がりつつある状況で、沖縄県・広島県・山口県には「まん延防止等重点措置」が適用され、東京都や大阪府でも感染拡大の歯止めがきかない状況となっている。広島県・山口県では全ての飲食店で酒類提供の停止、20時までの時短営業を求めており、沖縄県でも認証店は酒類提供20時までで21時までの時短営業、非認証店では酒類提供の停止、20時までの時短営業を求めている。

他にも、現在この原稿執筆時点で1日の新規感染者数が東京都で約2,200人、大阪府で約1,700人と感染拡大に歯止めがきかない状況だ。オミクロン株は重症化率が低いとはいえ、感染者や濃厚接触者の隔離措置を行っていることからエッセンシャルワーカーの人手不足が深刻になりつつあり、医療従事者や公共交通機関・物流ドライバー、介護従事者や教育関係など各所で「社会インフラ確保」への懸念が広がっている。

また食品や光熱費をはじめ、燃料や高速道路通行料金などの値上げで物流コストもアップするなど「物価高」への懸念が広がっており、日本国内の賃金水準が上がらない中での物価高は、こちらもパチンコなど娯楽産業への参加意欲に影響を及ぼす可能性が高い。

一方で遊技機に目を向けると、ぱちんこ機に関しては、今年1月末での旧基準機完全撤去後の市場をみても、比較的好調な状況が望めそうだ。逆にパチスロ機に関しては、近く2,400枚上限リミッターへの何らかの緩和はありそうではあるものの、一気に明るい展望とはいえない状況は続く見込みだ。

新台販売台数では、2022年1~2月末時点納品分までの新台販売台数は、弊社調べでは、概算でぱちんこは1月120,000台、2月55,000台で約175,000台、パチスロは1月120,000台、2月12,000台で約132,000台となっており、そこまで悪い数値ではない。ただしパチスロに関しては、1月販売分は旧基準機撤去に伴う特需も含まれているため、このまま好調に推移する可能性は低いと考えられる。
2. 今年の遊技機設置台数・販売台数に影響を与えるポジティブ要素
現時点では、残念ながら2022年の遊技機設置台数に影響を与える「ポジティブ要素」について大きなものは少なく、非常に限定的となりそうだ。ただし新台販売台数については、ぱちんこ機については一定の期待感がある。一方パチスロ機についても2,400枚上限緩和についての正式リリースを待つまで何とも言えないが、これにより「低ベースAT機」については6号機当初の性能と比較すれば一定程度の改善は見込めそうだ。

新台販売においてポジティブ要素と思われるのは、ぱちんこ機については「C時短を使った新たなゲーム性」が続々と発売される見込みで、これらの中から大ヒット機種が出てくれば、需要が一気に広まる可能性はある。また「P大工の源さん 超韋駄天」を先駆けにハイスピード機の大ヒット機種が相次いで発売された流れも勢いは留まっておらず、こちらのジャンルも好調を維持しそうだ。

パチスロの新台販売については、2,400枚上限緩和後のAT機に期待される。ここでヒット機種が生まれてくれば、現状の大幅縮小傾向から底を打つ可能性は十分にある。

また、スマートパチンコ、スマートパチスロと呼ばれる「管理遊技機」にも注目だ。当初は今年の6月~8月頃の登場が予定されていたが、こちらはユニット面の部材不足も含め、全体的には時期が遅れつつある現状が聞かれる。ただし、ぱちんこ、パチスロどちらも緩和部分はありそうで、正式な発表がされるまで期待感を持って待ちたい。

3. 今年の遊技機設置台数・販売台数に影響を与えるネガティブ要素
遊技機設置台数についてのネガティブ要素は、言うまでもなく今年1月末での「旧基準機の完全撤去」だ。特にパチスロについては減台してベニヤにしたり、パチスロ専門店を中心に、一部ぱちんこ併設店でも閉店のアナウンスが続々と聞かれる状況となっている。2022年中に、2021年の水準まで遊技機設置台数が復活する可能性は絶望的だ。

今年の新台販売数という視点で見ると、やはり今年の最大のネガティブ要素は「旧基準機の完全撤去による新機種購入意欲の低下」と「オミクロン株の感染拡大の影響による稼働低下で入替予算が減少」する可能性の2点が大きいだろう。昨年~今年1月まで、旧基準機の完全入替で入替コストが大幅に上昇したことで、今年は新台の買い控えを考えるホールも増えそうだ。また昨年秋以降の、新型コロナウイルス感染拡大が一時的におさまっていた時期の稼働を見ても、コロナ前と比較すると8割程度までしか戻らなかった。ここからさらに、オミクロン株による飲食店の時短営業が広がってくれば、外出する人が減りぱちんこ店も夜の稼働が伸び悩む可能性は否めない。ホールの稼働が落ちれば当然、新台購入予算も減るだろう。

さらには、部材不足での販売時期延期が昨年後半は相次いだが、全世界的なオミクロン株の大流行で、こちらもいつ、安定的に部材が調達できるようになるのかわからない点も、遊技機販売についてはネガティブ要素となるだろう。
4. 市場の設置台数予測と、販売台数予測
まずは(別表1)をご覧いただきたい。これは全国の「遊技機設置台数」の推移だ。昨年までの数年間、パチンコは毎年10万台以上減少し続け、パチスロは2016年までは増加が続いていたが2017年にはついに減少に転じた。

これを踏まえて、2022年の市場はどのようになるか。まずはパチンコ。これは減少が続いている傾向に変化はないが、やはり昨年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響と、旧基準機の完全撤去で休業・廃業店の割合は増加している。昨年末の予測設置台数は230万台だが、今年は一段と減少して220万台程度まで減少すると予測される。

パチスロに関しても、2017年から減少が続いているが、今年は旧基準機完全撤去によるパチスロ専門店の閉店が多く、併設店でもパチスロ減台が見られることから一気に130万台を割り込み125万台程度になるのではないかと予測される。

次に(別表2)の店舗数だが、ここ何年も「中小規模店が廃業」して「大型店がオープン」する傾向が続いており、店舗数としては毎年5%前後の減少が続いてきたが、今年はパチスロ専門店の廃業がかなり増えることが予想されるため、ついに7,000店舗程度まで減ると予測される。

最後に(別表3)をご覧いただきたい。これは「遊技機販売台数」の推移だ。パチンコは減少、パチスロも2012年をピークに減少へ転じている。パチンコについては、2009年に約350万台だったものが2019年には113万台と3分の1に、2020年にはついに100万台を割り込んだ。

さて今年のパチンコだが、昨年は旧基準機の完全撤去の特需もあり100万台を復活し約110万台を販売したものの、旧基準機の完全入替終了による買い控え、オミクロン株の感染拡大による稼働低下での入替コスト削減に加え、店舗数の減少、部材調達が遅れ販売計画が下振れする影響も考慮すると、80万台程度まで減少しそうだ。

一方パチスロは、設置台数が大きく減台されていてシマが減っている点、6号機のみでは粗利が確保できず新台購入資金が捻出しづらい点などもあり低迷しそうで、2,400枚規制緩和以降のパチスロ機への一定の期待感も考慮しても、売れなかった2020年並みの45万台程度となりそうだ。

2022年も新型コロナウイル感染拡大の影響が止む気配はなく、部材不足も含めてパチンコ業界には非常に厳しい状況が続きそうだ。一刻も早く感染拡大が終息し、日本国民が自由に外出して余暇を十分に堪能できる状況に戻ることを願ってやまない。

(以上)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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