【高校野球】少人数で“分散練習”の難しさも…イチロー氏の教えで深まった「自分自身との会話」

11年ぶり4度目の選抜出場を決めた国学院久我山高【写真:中戸川知世】

5人程度の少人数グループで曜日や時間を限定

第94回選抜高校野球大会に11年ぶり4度目の出場を決めた国学院久我山高(東京)。昨年11月29日から2日間、イチロー氏(マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)から直接指導を受けたことで話題となった。現在は新型コロナウイルスの感染防止に知恵を絞っている。

「ありがとうございます。新型コロナウイルスの感染状況が非常に悪化している中ですが、引き続き感染対策を行い、しっかり準備していきます」。28日、国清英明学校長から選抜大会出場決定の朗報を聞いた上田陽太主将(2年)は、そう抱負を述べた。実際、記念すべきこの日も、都内では4日連続で過去最多となる1万7631人の感染が確認され、選抜大会開幕を2か月後に控えるチームにも危機感が高まっている。

同校野球部には、引退した3年生を除くと59人の部員(2年生27人、1年生32人)が在籍しているが、都内の感染者急増を受け、今月中旬から少人数のグループに分かれて“分散練習”に切り替えている。尾崎直輝監督は「人数を5人程度に絞り、曜日や時間を限定しながら、感染が蔓延しないように工夫しています」と話す。

選抜出場が決まったこの日は、久しぶりに全部員がグラウンド上に顔をそろえたが、それでも少人数ごとに距離を取って分散し、監督、コーチが巡回する形を取っていた。「ポジションを超えての接触を控え、ポジション内でもあまり接触しないように心掛けています」と尾崎監督。「部員全員がそれぞれの場所で同じ意識を持ち、同じ熱量で練習、努力を重ねている」と言うが、なかなか全体ミーティンを開けず、コミュニケーション不足は否めない。

国学院久我山・尾崎直輝監督【写真:中戸川知世】

オンライン学習システムの「グーグルクラスルーム」を導入

そこで、オンライン学習システムの「グーグルクラスルーム」を導入。尾崎監督は「動画などを添付しながら、今日は各グループがこういう練習を行ったとか、週末にはこういう練習をするという情報を、全部員で共有するようにしています」と説明する。「感染者が出て1度でも活動がゼロになってしまうと、再スタートのタイミングを計るのも難しくなる。安全運転で活動しているのが現状です」と言う。

チームはイチロー氏の直接指導に大きな刺激を受けた。上田主将は「走塁面では基本的な体の動かし方からコース取りまで、打撃では技術だけでなく打席内での考え方まで、いろいろ教えていただきました。自分たちがこれまでやってきたものとは“別物”でした」と振り返る。昨夏の西東京大会で決勝まで進み(東海大菅生に敗戦)、新チーム結成後の秋季東京都大会で優勝と、チーム力が上昇していたところに、イチロー氏の教えが加わった。尾崎監督は「選手たちは以前より細かく考え、自分自身とよく会話するようになった」と目を細める。

過去は春3度、夏3度の甲子園出場で通算1勝(2019年夏)。選抜大会ではまず通算2勝目、次にチーム初の1大会2勝、そしてベスト8進出までを目標に掲げる。さらに、一昨年12月にイチロー氏から指導を受けた智弁和歌山高が昨夏の甲子園で全国制覇を果たしたことから、尾崎監督は「選手たちは野球に本気で向き合い、イチローさんに教わったことを体現していけば、ああいう結果につながると思っているのではないか」と手応えを感じている。

こうして蓄えてきた実力を発揮するためにも、感染対策は大前提。コロナ禍は2月1日にキャンプインを控えるプロ野球界にも支障をきたし始めた。球児たちの積み重ねを台無しにすることがないように、願うばかりだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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