東京さ行ぐだ

 「僕は旅立つ」と恋人に告げた若者が「東へと向かう列車」に乗る太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」は1975年のヒット曲。こんなに何もない村はイヤだ、東京で金を貯めて銀座で牛を飼うのだ、と東北の青年がアツい決意をまくしたてる吉幾三さんの「俺(お)ら東京さ行ぐだ」は84年▲そんな昭和が遠くなって、若者たちの東京志向はいくらか変化しているのだろうか、それとも…と、昨日の紙面の記事を読みながらあれこれ考えた。〈東京一極集中が鈍化している〉らしい▲総務省の人口移動報告によると、東京都への転入者から転出者の数を差し引いた「転入超過」が2年続けて過去最少を更新したという。都心部の23区は初めて転出超過に転じ、千葉、埼玉、神奈川を加えた東京圏の転入超過数も過去最少だったそうだ▲ただ、よく見ると、転入者が転出者を上回る地域はそもそも10都府県だけの“少数派”。人口が都市部に移動する傾向は相変わらずで、これでは「鈍化」が全てを言い当てているかどうか少しばかり怪しい▲さて、わが長崎県。転出超過数の5899人は多い方から3番目で、市町別では19市町が転出超過。数字が重い▲ほとんどの自治体が同じ悩みを抱える。地方は何を目指し、何が語られるべきなのだろう。本県は知事選が近い。(智)

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