「この街」

 〈街の外れの駅であなたを見送ったのは2年も前のことね/元気にしてるかな〉-砂浜は埋め立てられ、広場にはビルが建って、みんな消えていくけど、生まれ育ったこの街が好き…と、故郷への愛着を歌う森高千里さんの「この街」▲4月30日に長崎公演が予定される全国ツアーのタイトルにもなっている。〈この街が大好きよ/のんびりしてるから/魚も安くて新鮮♪〉-森高さんは熊本出身だが、最後の一節にはひたすら共感…そんな長崎県人も多そう▲曲が発表されたのは1990年。短期間に大きく変貌するふるさと-は、バブル期の“地方都市あるある”だが、ちらっと思ったのはコロナの流行によるステイホームの間にずいぶんと様子が変わった長崎駅周辺の風景だ。そんな中、4年に一度の知事選がきょう告示される▲難題山積の本県。節分や立春のこの時季らしく、春風が吹くような…と気楽な話ばかりはできまいが、ふるさとの姿を見つめ直し、長崎の可能性や魅力を再発見する機会にできれば、と期待している▲感染の勢いがなかなか弱まらない。外出にも気を遣い、人の集まりは難しく、何かと制約の多い選挙戦が予想されるが▲候補者たちはこの街のどんな未来を語るだろう。選ぶこちらは強い関心と高めの投票率で街への愛を示したい。(智)

© 株式会社長崎新聞社