きょう成人の日 コロナ禍ばねにイベント企画 長崎大生ユニット「ピオニール」 「面白い輪広げ、楽しい街に」

「都会でも地方でも街を楽しむ権利は同じだ」と語る春田さん(左)と衣川さん=長崎市内

 10日は「成人の日」。長崎県内では約1万2800人の新成人がそれぞれの決意を胸に新たな一歩を踏み出す。長崎大経済学部2年の春田晃志さん(19)と衣川日菜実さん(20)は、新型コロナウイルス禍が始まった2020年4月に入学。同級生の顔も知らずに過ごした時期をばねに、空間づくりユニット「Pionier(ピオニール)」を立ち上げた。唯一無二の空間や自分たちだけの遊び方を作り出すイベントを企画する。
 「長崎は楽しくない」「何もない」-。原動力はそんな周りの声だった。
 長崎市出身の春田さんは、県外から来た学生らの言葉に「本当にそうなのか」と疑問を抱いていた。反骨精神から「自分たちで面白いものがつくれるんじゃないか」。一方、神戸市出身の衣川さんは港や坂、自然など神戸と似た長崎の街並み、風土に魅力を感じて長崎大に進学。「4年間、せっかくこの場所にいるから楽しい場所にしたい」と思っていた。
 入学後、大学主催のイベントはなく授業はオンライン。同級生の顔もよく知らないまま突入した夏休みに、2人はサークルのつながりで知り合った。
 コロナ禍で学生たちは「交流に飢えていた」。趣味が合い、初対面で意気投合した2人は、制限されていた出会いや娯楽を大事にする機会をつくろうと、出会って1カ月後に初めてのイベントを開催した。
 夜の海辺の芝生にキャンドルなどで明かりをともし、布のスクリーンに映画を放映。春田さんがDJを務め、会員制交流サイト(SNS)で集まった長崎大の1年生約20人と幻想的な空間で映画や音楽を楽しんだ。
 ピオニールの活動テーマは「長崎をどれだけ“面白く”できるか」。1人でも多くの若者の興味に引っ掛かるよう、イベントのポスターなどはとことんこだわってデザインする。「先駆者であり続けたい」との思いから、ユニット名は「パイオニア」を意味するオランダ語から名付けた。
 目に見えないウイルスとの闘いで計画が思うように進まず、挫折を味わうこともある。県内で活動する人や行政の担当者とも話をしながら、その時々に合わせて次の企画に向け準備を進めている。

海辺の芝生にキャンドルをともした交流イベントなど独創的な空間づくりを続けている=長崎市、長崎水辺の森公園(ピオニール提供、一部加工しています)

 新型コロナが落ち着いていた昨年12月は、カフェと古着屋をコラボさせたイベントを開いた。1日で100人以上が会場に足を運び、それぞれのこだわりを持つ人やサブカルチャーが好きな人など個性豊かな若者たちがつながった。
 都会にいても地方にいても街を楽しむ権利は同じだ。活動の目的は「ただ好きなものを楽しむ、シンプルなこと」。独創的な空間づくりを通して「長崎の街でどれだけ面白い輪を広げられるか」。2人の挑戦は続く。


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