「核禁条約会議」再延期に 長崎県内被爆者ら落胆 軍縮議論の停滞懸念

 3月にオーストリア・ウィーンで開催予定だった核兵器禁止条約第1回締約国会議の再延期を受け、長崎県内の被爆者らからは2日、落胆の声が上がった。核拡散防止条約(NPT)再検討会議も延期され、核軍縮議論の停滞を懸念しつつ「準備期間」と受け止めた。
 非政府組織(NGO)として締約国会議に出席予定だった核兵器廃絶地球市民集会ナガサキの朝長万左男実行委員長(78)は「提案する計画を練り始めていた。勢いをそがれた」と明かす。条約の課題を議論すべき会議の延期が続き「加盟国にはダメージ」と指摘。準備期間と捉え「将来の核軍縮に向け、核兵器国に具体的な提案をできるようにすべきだ」と語った。
 核兵器廃絶を求める署名を集める「高校生平和大使」も渡航し、会議の傍聴やスピーチ、屋外での署名活動などを模索していた。派遣委員会の平野伸人共同代表(75)は「現地で核廃絶への熱気や雰囲気を確かめたかった。子どもたちも大きく成長できたはず。意欲に満ちた子もいて、かわいそうだ」と肩を落とした。
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(81)は「締約国会議の開催で核軍縮の議論に目が向き、緊張をほぐすことにつながると期待していたので残念」と語る。
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の中村桂子准教授は「より中身の濃い議論をしようという表れ」とみる。延期期間で「市民社会は日本政府にオブザーバー参加や条約の中身への貢献などを働き掛けていくべきだ」と訴えた。
 長崎市の田上富久市長は「非常に残念。被爆地長崎は延期後の締約国会議にできる限り参加する方向で調整を進める。対面方式で早期に開催されることを切に望む」とのコメントを発表した。


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