「核戦争回避」五大国首脳が声明 「歓迎する」「行動で示して」 長崎の被爆者から評価と注文

 米中ロ英仏の核保有五大国が核戦争回避を最重要責務とうたう共同声明を発表したことについて、長崎県内の被爆者らからは評価する声が上がった一方、今後の具体策や核抑止政策への注文も相次いだ。
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(81)は、共同声明について「本当に実現する気持ちがあるならば歓迎する」と一定評価。ただ現実には、核弾頭搭載も可能な「極超音速兵器」の開発競争が米中ロを中心に繰り広げられていることなどから、田中会長は「言っていることと実際にしていることの整合性がない」と指摘。「くちだけでなく、核兵器削減に向けた具体的な期限や数を設定し、行動で示してほしい」と注文を付けた。
 県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(78)は「『核戦争をしない』と意思表示したことの意味は大きい。核なき世界に向けて、新たなステップに進む可能性を秘めている」とみる。声明の詳細については推測するしかなく「評価するのは早計」とした。
 国内外で核兵器廃絶を訴える「高校生平和大使」派遣委員会の共同代表、平野伸人さん(75)は「大きな一歩を踏み出した。世界の流れが核兵器廃絶に向かっている。被爆者や高校生の地道な努力が後押しできたのでは」と語る。ただ、声明が核廃絶ではなく核抑止に重きを置いていることに「(私たちが求める)核兵器廃絶とは矛盾している」と苦言を呈した。
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の広瀬訓副センター長は、3月に予定される核兵器禁止条約の締約国会議が開かれる前に出すことで「核兵器禁止条約ではなく、NPT(核拡散防止条約)の枠組みで真剣に取り組むとくぎを刺したかったのでは」と指摘。「核保有五大国の焦りが見える。(声明は)核禁条約の影響を無視できないことを示した」と分析した。


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