正統続編「ゴーストバスターズ/アフターライフ」公開記念 シリーズふりかえり

圧倒的な 情報量と豊富な知識に裏打ちされた考察、流麗な語り口で人気のYouTube映画レビュアーの茶一郎さん。映画スクエアの公式YouTubeチャンネル「映画スクエア Topic」で公開した「ゴーストバスターズ/アフターライフ」予習動画の公式書き起こしをお送りします。

【公式書き起こし】「ゴーストバスターズ」シリーズふりかえり

今回は「ゴーストパスターズ」「ゴーストパスターズ2」の正統派続編、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」公開記念として、今までの映画「ゴーストバスターズ」2作とプラス1作品を、ゆるくまとめていきます。

まずは伝説の始まり、1984年の「ゴーストバスターズ」。私の「ゴーストバスターズ」体験は、小学生低学年の頃、テレビかビデオで見た記憶です。とても怖い映画というイメージでした。特に2作目「ゴーストバスターズ2」は、トラウマシーンを今でも覚えていて、怖い映画だなという印象でした。「キャスパー」「グレムリン」などと並んで、子供でも安心安全に怖がれるホラーコメディの古典・クラシックが「ゴーストバスターズ」だと思います。

『ゴーストバスターズ』デジタル配信中Blu-ray 2,619円(税込)/DVD 1,551円(税込)/4K ULTRA HD & ブルーレイセット5,217円(税込)発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

「ゴーストバスターズ」 文化祭的祝祭感あふれる開業成功物語

「ゴーストバスターズ」の物語は、ニューヨークで超常現象・心霊の研究を行っている3人の研究者の視点で始まります。ビル・マーレイ演じる超能力の実験で被験者をナンパしている、ポーカーフェイスで不真面目なピーター・ヴェンクマン博士。3人の中では頭脳担当のハロルド・ライミス演じるイゴン・スペングラー。そしてハート(心)担当は、ダン・エイクロイド演じるレイことレイモンド。この3人の研究者が、心霊研究の費用を打ち切られ、大学を追い出されて路頭に迷うさなか、ピーターの提案によって害虫駆除ならぬ幽霊駆除業者「ゴーストバスターズ」を開業することとなります。しかし、CMをしても依頼は来ない、次第に貯金も底を尽きていき・・・というのが「ゴーストバスターズ」の序盤です。

1人目のお客様として、自宅で怪奇現象にあって「ズール」という謎の言葉を聞いた女性のディナが、ゴーストバスターズを訪れます。ピーターはディナに一目惚れをして、幽霊退治を言い訳に、彼女に近づこうとします。映画はゴーストバスターズ開業物語と並行して、ピーターとディナのロマンス、謎の言葉「ズール」から始まった怪奇現象の謎をめぐる物語が描かれていきます。

「ゴーストバスターズ」は、お母様は幽霊が見え、心霊現象にとても興味があった、レイモンド役のダン・エイクロイドが作品の原案を作りました。幽霊もののホラー・コメディ、1941年の「凸凹お化け騒動」、1940年の「ゴースト・ブレイカーズ」といったクラシックからインスパイアを受けて、幽霊を捕まえる業者の話にしようとしました。当初は、複数のゴースト退治業者がおり、幽霊駆除業が認知されていて、50体くらいのゴーストが大量に登場する話だったそうですが、最終的にはゴーストバスターズという存在しない仕事を新しく開業する、3人の研究者の開業物語となりました。

映画もテーマソングも特大ヒットしたことは、言うまでもないでしょう。この超自然現象に巻き込まれながら、それを職業的に解決するというアイデアは、「メン・イン・ブラック」「エボリューション」と、いろいろなのちの映画に影響を与えています。それだけではなく、本作の影響で全米で「◯◯バスターズ」という業者会社が増えていったということも聞いたことがあります。このあたりの当時の文化的的影響というのは、リアルタイム世代の方からお聞きしたいあたりです。

小さい頃見たときの印象は、怖い映画という感じだったんですが、大学生の時に見返したら、開業映画として面白いと、あらためて思いました。レイが借金をして、物件の内見シーンがあって、消防署の跡地を借りて、いよいよ初出動・初幽霊退治。初仕事を成功させたことで、一躍ゴーストバスターズは有名に。一躍有名になると依頼も増えて、ウィンストンというメンバー・仲間も増えていく。ここまでの中年開業成功物語。この祝祭感、全編観客を巻き込んだ文化祭的祝祭感が、とても好ましく感じました。

”ゆるさ”も魅力

本作はダン・エイクロイドを筆頭に、ハロルド・ライミス、何よりビル・マーレイと、コント、コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」という戦場で戦ってきた一流コメディアンたちが、自らストーリーを考えて、演じて、撮影時はアドリブをたくさんして、即興劇のような役者さんのドキュメンタリックな関係性が映画に刻まれています。この役者さんたち、一流コメディアンによる手作り的な文化祭感。そこから生まれる良い意味での”ゆるさ”と”祝祭感”というのが、「ゴーストバスターズ」の1作目で、一番私が好きな点です。

少なくとも私の中では、本作はすごいウェルメイドでカッチリとした娯楽作という感じではなく、コメディアンたちが即興でとても親近感のあるやりとりを見せて、またコメディアンとしての俳優の性格と、コメディアン同士の関係性を積み重ねていって、最終的にストーリー的には彼らをニューヨークでの大成功に導いていくという、この手作り”祝祭感”とその”ゆるさ”が魅力と思っています。

ガチなゴースト&ガジェット

一方で、ゆるいと言いながらガチな部分もあります。それは視覚効果=VFXです。当時は最先端、今見ると若干合成が古く見えてしまいますが、アニマトロニクス=ロボットを使った撮影のシーンは、今見てもすばらしいです。本作を筆頭に、80年代のアニマトロニクス演出はすてきです。

ゆるい雰囲気なんですが、ゴーストとゴースト退治用のガジェット造形はガチです。おなじみのプロトンパックはもちろん、特筆すべきは中盤の初幽霊退治で登場するゴースト、シリーズの代名詞ともいえる緑の幽霊、通称「スライマー」。「ゴーストバスターズ」をご覧になったことのない方も、一度はどこかで見たことがあると思います。ダン・エイクロイドの相方で、もともと本作に出演する予定だったジョン・ベルーシをモデルにしたという、このオーブ幽霊「スライマー」。このゴーストはリブート版も合わせて全作品に登場していますし、最新作「アフターライフ」でもスライマーに似たゴーストが登場しますが、どういう関係性なのか注目したいあたりです。

「アフターライフ」では、初代リスペクトということで、1作目「ゴーストバスターズ」に登場したゴーストの「テラードッグ」も出てきます。「マシュマロマン」もミニになって登場します。ゴーストの再登場もそうですが、新作「アフターライフ」は、ぜひこの1作目そして2作目をご覧いただくと、よりお楽しみいただける作品になっています。

『ゴーストバスターズ2』デジタル配信中Blu-ray 2,619円(税込)/DVD 1,551円(税込)/4K ULTRA HD & ブルーレイセット5,217円(税込)発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

「ゴーストバスターズ2」 ニューヨーク・ラブ

続いて1作目の5年後、1989年の続編「ゴーストバスターズ2」。物語も、前作から5年後の時間軸になっています。前作でニューヨークの街を救った「ゴーストバスターズ」でしたが、街を無茶苦茶にしたということで、逆にニューヨーク・州から訴えられています。ピーターが恋をしたディナには、シングルマザーとして赤ちゃんがいます。前作のラストから一変し、最悪の状況から物語が始まっていきます。またもやニューヨークに怪奇現象が起き、そんな時は「ゴーストバスターズ」ということで、ゴーストバスターズがゆるく再集結します。

重要な点として、前作「ゴーストバスターズ」、本作「ゴーストバスターズ2」は、ニューヨークが舞台のニューヨーカーについての映画ということがあります。これは、本作で特に強調されます。前作では、一部ロサンゼルスで撮影していますが、ほぼニューヨークで撮影されました。ニューヨークのストリートをゲリラ撮影したシーンもあって、80年代のニューヨークがドキュメンタリックに映画として残っています。

ニューヨークという街に根ざして、時にニューヨークの市民に応援され、時にニューヨークの役所が敵になって・・・、でもまたニューヨークの市民に讃えられるゴーストバスターズ。1作目のラストでは、ニューヨークのスカイスクレイパー=摩天楼を背景に、どう考えてもミスマッチなピラミッドのような建造物が登場。ニューヨークというロケーションを、うまく物語に生かしています。そして「2」も、ニューヨークの下水道が事件解決の鍵になり、何よりニューヨークでしかありえないラストがあります。

ハロルド・ライミスは、「マイ・ニューヨーク・ラブ」映画と本シリーズを表現していますが、80年代のニューヨークの雰囲気を映した、「ニューヨーク・ラブ・シリーズ」が、ゴーストバスターズだと言えると思います。これが新作「アフターライフ」ではどうなるか。その変化もご注目ください。

異例な映画 リブート版「ゴーストバスターズ」

新作「アフターライフ」には直接的には関係しない作品ですが、映画「ゴーストバスターズ」としては3作目があります。2016年の「ゴーストバスターズ」。ここではリブート版=再始動版と表現します。1989年の「ゴーストバスターズ2」はヒットしましたが、1作目ほどの成功ではありませんでした。さらに、主演のビルマーレイが製作会社とのいざこざで3作目への参加を拒みました。ダン・エイクロイドいわく、ビル・マーレイ演じるピーター不在の「ゴーストバスターズ」3作目の原案があったそうですが、実現には至らず。完全にシリーズを白紙にして再起動することとなりました。

今作に限っては私もリアルタイムで見ましたが、予告解禁のタイミングから荒れました。論争というか、ほとんど罵詈雑言に近いレベル。このリブート版「ゴーストバスターズ」は、主人公たちがそのアンチコメントに反論するシーンも追加撮影されて、アンチに対して映画の中で答えているという、痛快であり異例な映画にもなりました。

リブート版では今まで中年男性を主役とした「ゴーストバスターズ」とジェンダーを逆転させ、中年女性が主役の「ゴーストバスターズ」となっています。監督に起用されたのはポール・フェイグ。監督作では「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」が一番有名です。この監督は「サタデー・ナイト・ライブ」に出演している一流女性コメディアン、コメディエンヌと組んで、男性が主役になることが多い既存の映画ジャンルにおいて、ジェンダーを逆転させる映画ばかり作っています。警官バディものだと「デンジャラス・バディ」、スパイ映画だと「SPY/スパイ」とか、そういうブロマンスコメディのジェンダー逆転版を作っているポール・フェイグらしい男女逆転版「ゴーストバスターズ」が、このリブート版です。ストーリー自体は、ほぼ1作目の「ゴーストバスターズ」をなぞっています。

今までの「ゴーストバスターズ」シリーズとは別物として、私は大好きな作品です。特にこのリブート版では、ガジェットが魅力的にアップグレードされてます。今までのプロトンパックはもちろん、二丁拳銃型のプロトンピストル、掃除機+シュレッダーのようなプロトンチッパー、パンチでゴーストを退治するプロトングローブとか、ガジェット萌えとしては素晴らしい新ガジェットが登場します。そのガジェットを作るエンジニアのホルツマン、ケイト・マッキノン演じる超クレイジーなホルツマンというキャラクターのたたずまいが素晴らしいです。

強化された点としては、ドラマが強固になりました。リブート版の主人公は、小さい頃に幽霊を見た経験から「お化け女=ゴースト・ガール」 といじめられてきました。そんなトラウマを抱えながら”幽霊を信じない”と自分を偽ってきた主人公が、友情のために偽ることをやめてフィメール・ヒーローになるというストーリーも、感動的で強固なものでした。

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』 2022年2月4日(金)全国の映画館にて公開

いよいよ公開「ゴーストバスターズ/アフターライフ」

残念ながら、このリブート版はあまりヒットせず、新たに過去シリーズ、1989年の「ゴーストバスターズ2」の正統派続編として2021年、日本では公開遅れまして今年、「ゴーストバスターズ/アフターライフ」が公開されます。

監督を務めるのは、なんと過去シリーズの監督アイヴァン・ライトマンの息子ジェイソン・ライトマン。幼少期に1作目「ゴーストバスターズ」の撮影現場に立ち会っていたというジェイソン・ライトマン監督が、幼少期の記憶をそのまま映画の中に入れたかのように、イゴン・スペンクラーの娘と孫が主役の映画となっています。今までのシリーズとはまた別の、「IT/イット」「ストレンジャー・シングス」的な、ジュブナイル・ホラー作品としての要素も加わりました。果たしてどんな映画になっているのか。1作目に登場したゴーストたちはどう絡んでくるのか。ご期待ください。

今回は「ゴーストバスターズ/アフターライフ」公開記念、「ゴーストバスターズ」シリーズのゆるいまとめでした。

【作品情報】
ゴーストバスターズ/アフターライフ
2022年2月4日(金)全国の映画館にて公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


茶一郎
最新映画を中心に映画の感想・解説動画をYouTubeに投稿している映画レビュアー

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