公務員獣医師が不足 有効策見いだせず苦悩 佐世保市

繁殖障害がある牛を治療する公務員獣医師(県畜産課提供)

 長崎県で佐世保市職員として働く獣医師が慢性的に不足している。限られた人材を全国で取り合い、市への応募者が低迷。市は「非常に大きな課題の一つ」として、条件の緩和や待遇改善など確保策の検討を進めてきたが、思うような確保につながらず苦悩が続いている。
 公務員獣医師は、家畜保健衛生所や食肉衛生検査所などで勤務。口蹄疫(こうていえき)などの悪性伝染病の流行を抑えるなどの役割も担う。県によると全国で1年間に獣医師となるのは約千人。そのうち牛や豚など大型の動物を扱う公務員獣医師を目指すのは2割ほどにとどまる。このため公務員獣医師は全国的に不足し、限られた人数を都道府県や市町で取り合っている状況という。
 市は人材確保に向けて36歳までだった年齢制限を59歳までに広げ、年間を通して募集。仕事の複雑さや難しさなどを踏まえ月額2万円を別に支給するなど処遇を改善してきた。それでもここ5年の採用数は1人で、応募者がゼロの年もある。定員25人に対し2021年度の在籍数は19人で欠員は6人。OBのほか、畜産技師や管理栄養士など獣医師に代わって業務できる別の専門職を臨時的に配置している状況で、有効な打開策は見いだせていない。
 人材確保の呼び水となる待遇だが、市職員課が公務員獣医師を雇用する九州内の17自治体の初任給を調べたところ、佐世保市は低い方から数えて6番目。最も高い熊本県とは5万7千円の差があった。
 安定雇用に向けて修学資金制度の新設も計画している。具体的な制度の中身は協議を重ねるが、獣医学部・科に進学する学生に資金を貸し、市内での就業期間に応じて返還を免除するなどの支援を検討する。同様の制度は既に県と壱岐市が創設済みで、同市では05年以降、5人(うち3人は学生)に貸与。1人が市内で獣医師として働いている。
 佐世保市は、市内就職を選ぶ動機付けが大事として「人材確保策や手法についてスピード感を持って取り組みたい」としている。


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