A.エスパルガロが初日トップ。アプリリアがワン・ツーに並ぶ/2022MotoGPセパン公式テスト1日目

 2月5日、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで、MotoGPの公式テストが始まった。初日となったこの日は、体調が懸念されていたマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)、そして3名のテストライダーが参加し、全27名のライダーが走行を実施。アプリリア・レーシングのアレイシ・エスパルガロがトップタイムをマークした。

 2022年シーズン最初の公式テストは、2020年までと同様にマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで予定通り開催となった。2021年シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響でカタールのロサイル・インターナショナル・サーキットでのテストに変更されたため、マレーシアでの公式テスト実施は2年ぶりである。

 今季のMotoGPは、再びエンジンのアップデートが行われることが一つの注目ポイントだろう。これもまた新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みたもので、コスト削減を目的に2021年は原則として、エンジンのアップデートができない技術規則となっていたからだ。なお、年間のエンジン使用可能基数やテストについての条件が緩和されているコンセッションという優遇措置を受けるメーカー──今季はアプリリアのみ──については、これに該当しない。

■アプリリア:1番手、2番手タイムを記録

 さて、2年ぶりにセパンで行われたMotoGPの公式テストで、初日トップタイムを記録したのが、アプリリアを駆るアレイシ・エスパルガロである。そして2番手に続いたのは同じくアプリリアのマーベリック・ビニャーレス。アプリリアがテスト初日の1番手、2番手を占めた。

 テストではレースウイークとは異なり様々なパーツを試し、ときには十分にタイムアタックをしないこともある。そのため、順位だけで一概に判断することはできない。ただ、この日A.エスパルガロが記録した1分58秒371というタイムには注目したいところだ。というのも、このタイムは2019年のマレーシアGPで記録されたオールタイム・ラップ・レコード1分58秒303に迫るものだ。なお、2番手のビニャーレスも好タイムで、A.エスパルガロから0.013秒差の1分58秒384だった。

 A.エスパルガロは初日終了後、この日のテストについて語った。バイクには好感触を抱いているようだが、それでも楽観視はしていない。

「バイクのフィーリングはいいと思う。2021年型よりもかなり気に入っているよ。でも、ライバルの中での位置を考えないといけない。1秒速くなればきっと『すごくバイクが速くなりましたね』と言われるだろうけれど、それは重要じゃないんだよね。周りが1.2秒速くなっていたら、僕たちはそれより0.2秒遅いことになるんだから」

「(2021年最終戦後に)ヘレスでテストしたバイクは、ほとんど2021年型だった。様々な方向性でいろいろなシャシーを試したけれど、機能しなかったんだ。それで、新しいフレームは全く違った方向性になって、バイクがよくなった。特に旋回、それからハンドリング。バイクはとても機敏になり、エンジンも少し力強くなっている」

 この旋回性のよさについては2022年型の車体がスリムになったことが影響しているという。A.エスパルガロは1カ月前に写真撮影のためRS-GP22にまたがり「これはすごいぞ、まるでMoto2バイクだ」と思ったそうだ。「おかげで高速コーナーでのスピードの乗り方、コーナーへの飛び込みなどがよくなった」と、A.エスパルガロは実走を経た印象を語った。

 このバイクの形状についてビニャーレスは「まだバイクに慣れる必要があるから、まだ判断しかねるな」とコメントしたものの、バイクについておおむね好印象という点ではA.エスパルガロと共通している。

■ヤマハ:クアルタラロが記録したトップスピードについて言及

 2021年チャンピオンのファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)擁するヤマハは、そのクアルタラロが6番手でヤマハとして最上位だった。ヤマハがかねてより課題とする一つがエンジンパワーである。

 クアルタラロはこの日、332.3km/hのトップスピードを記録したが、これについて「本来の速さではない。明日、バイクについてもっとよく確認したい」と述べている。今のところ、エンジンパワーについて革新的な改善があった、というわけではなさそうだ。

「もちろん、もっともっと馬力は欲しいよ。でも結局、今は大きくエンジンを変えることはできない」

■ドゥカティ:デスモセディチGPは仕上がりつつあるか

 ドゥカティは2022年よりこれまでの6台から総勢8台となり、勢力を拡大した。そのドゥカティは2年目のエネア・バスティアニーニ(グレシーニ・レーシングMotoGP)が4番手でドゥカティとしては最上位。ファクトリーライダーで昨年、クアルタラロとタイトル争いを演じたフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)は19番手、ジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)は22番手にとどまっている。この結果はタイムアタックをしなかったことによるものだ。

 バニャイアは「新しいフェアリングもエンジンもいいフィーリングだったよ。でも、僕たちはエンジンと電子制御をうまくまとめないといけない。そこについて取り組んでいるんだ。すでに今日の最後の方で、よくなっていた」と語り、ミラーは「試していないものはあるけど、全体的なパッケージはいいよ。すごくポテンシャルがあると思う。バイクで気持ちよく走れてきたところだよ」とコメントしている。

■スズキ:エンジンパワーが向上

 3番手タイムを記録したのがアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)で、ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)は7番手という結果。二人共通して言及していたのは、「エンジンのパワーが少し上がったみたいだ」ということだった。

 リンスは「電子制御の面では、まだ改善の余地がある」としつつも全体的に満足していると語っている。この電子制御についてはミルも「今日は少しそこで苦しんできたから、今夜、調整しないといけない」と言う。ただ、二人とも概して満足のいくテストだったようだ。

■ホンダ:マルケスがテストに参加

 昨年のエミリア・ロマーニャGP後のトレーニング中に発生したアクシデントが影響し、複視を発症したマルケスは、セパン公式テストの初日から参加した。残念ながらマルケスのオンラインでの囲み取材は行われなかったためMotoGP.comのコメント動画で確認すると、複視の状態は問題なく、ただ、2020年初戦で負傷した右腕、そこから影響を受ける右肩についてはまだ完治とは言えないようだ。なお、2度の転倒を喫しつつもホンダ勢として最上位の8番手タイムを記録したのがマルケスだった。

 ホンダが2020年、2021年の苦境を経てバイクの大きな変革に取り組んでいることは確かだが、取り組み方についても変わってきている。ポル・エスパルガロ(レプソル・ホンダ・チーム)は「バイクのフィーリングはよかった」と語ったうえで、このようにコメントしていた。

「昨年、僕たちは理解したんだ。マニュファクチャラー全体として一緒に取り組まねばならないってね。ホンダは(ファクトリーライダー、サテライトライダーという)すべてのライダーに同じバイクを供給しようと大きな努力をしている。それは、このプロジェクトに大きく役立つだろう」

■KTM:ビンダーに原因不明の問題が発生

 少々、消化不良気味のテスト初日、そんな印象を残したのがKTMだ。サテライトチームのテック3・KTM・ファクトリー・レーシングにはMoto2クラスからの昇格組、レミー・ガードナーとラウル・フェルナンデスが新加入したことから、レギュラーライダーとして「テスト」を担うのは主にファクトリーライダーのブラッド・ビンダーとミゲール・オリベイラの二人だと考えていいだろう。

 そんなビンダーにはセッション序盤からリヤが跳ねるという問題が発生した。このためすぐにタイヤ交換をしなければならず、タイヤを1セット棒に振ってしまったのだという。一方のオリベイラは、「新しいバイクはポテンシャルが高い」とポジティブなコメントとともに「まだ完全には仕上がっていない。スピードもフィーリングもまだまだこれから」「バイクはポテンシャルがある。でも、まだ準備万端というわけではない」とも述べていた。

 セパン公式テストは2月6日に行われる。セパン・インターナショナル・サーキットでの公式テストはこの日で最後となり、2月11日から13日にかけてインドネシアのマンダリカ・インターナショナル・サーキットで開幕前最後のテストが実施予定だ。

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