2日目トップはドゥカティのバスティアニーニ。アプリリア、スズキも上位を維持/2022MotoGPセパン公式テスト2日目

 2月6日、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットでMotoGPの公式テスト2日目が行われた。レギュラーライダーにテストライダー3名を加えた27名のライダーが走行を実施。2日目はエネア・バスティアニーニ(グレシーニ・レーシングMotoGP)がトップタイムを記録している。

 テスト2日目も現地時間10時から18時まで実施され、この日の午後は激しい雨が降った。この日記録されたタイムを確認してみると、前日よりも上がっているのは当然としても、その差は昨今のMotoGPを表すように非常にわずかで、トップのバスティアニーニから0.5秒差以内に13名のライダーがひしめいている。この日の午前中は多くのライダーがタイムアタックを行い、アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)によれば、セッション開始後の1時間は「予選のような時間帯だった」ということだ。

■ドゥカティ:電子制御面のアジャストに注力

 ドゥカティはバスティアニーニがトップタイムを記録し、さらに3番手にはホルヘ・マルティン(プラマック・レーシング)、そしてフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)が6番手でセパンでのテストを終えた。

 バニャイアによれば、テストはかなりポジティブなものになったようだ。

「昨日も僕たちはいい仕事をしたけれど、今日の午前中はものすごく前進したよ。今日についてはとても満足なんだ。ペースはすごくいい。もし今日レースだったとしても、いい戦いができると思うよ。レベルはまだ望むところまできていない。もっともっと強くなりたい。ただ、2日目にしてすでに昨年のバイクに近いところまで来ている」

 改善点としては、電子制御だという。これは前日にも言及していたものだ。今季はエンジンも新しくなり、合わせる作業が必要だとしている。これについては14番手だったジャック・ミラー(ドゥカティ・レノボ・チーム)も触れていた。

「エレクトロニクスとパワーデリバリーについては、最も力を入れて取り組んでいるんだ。今年は完全に新しいパッケージ。2020年、2021年を通じて、昨年のマシンが開発されていたのはご存知の通り。シーズン終盤にはかなりいい感じでチューニングされていた。(今年は)またベースから始めて、積み上げていく必要がある。でもずっと言ってきたように、今いるところからスタートして(開幕戦)カタールまでにいるところを考えている。このパッケージは間違いなくもっとポテンシャルがあると思う」

 確かに電子制御の面で改善が必要な部分はあれど、ともに今季のバイクに対する手ごたえを感じていると見てよさそうだ。

 また、6日にはドゥカティ・コルセ・ゼネラルマネージャーのルイジ・ダッリーニャ氏の囲み取材が行われたので、そちらの話も加えよう。デスモセディチGP22について何をメインのコンセプトとしたのかと問われると、ダッリーニャ氏は「全体的に昨年のバイクについては満足していました。しかし、もちろんパフォーマンスが足りていない部分もありました。(オーストリアの)アッセンではパフォーマンスに問題がありました。高速コーナーやその進入です。この点は、改善すべきポイントの一つでした」と答えた。

「今年最初のテストでは、ラップタイムではなく、やることやライダーがしなければならないことにフォーカスしています。昨日、新しいバイクの開発をスタートしました。とても満足していますよ。よくなるだろうものもあれば、そうではないものもあり、まだもう少し取り組まねばならないところもあります。しかし、今日テストして、ポジティブなものを見つけました。次のテスト(インドネシアでの公式テスト)もやはり重要でしょう。シーズン前最後のテストになりますからね」

■アプリリア:ビニャーレス、バイクへの適応に時間が必要

 2日目もアレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)が2番手、マーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)が5番手につけ、アプリリアの進化を再確認する結果となった。

 しかし、ビニャーレスはバイクの適応に思ったよりも時間がかかっていると認めている。チャンピオンシップを争うライダーたちとは僅差であり、結果を手に入れるにはさらにもっとバイクにアジャストしていかねばならない、と考えているようだ。

「(今日は)0.2秒以内に6人のライダーがいる。バイクには満足しているのだけど、一方で、このコースで6人のライダーがレコードを上回るタイムを出しているのを見ると、プッシュしていかなければならないんだ。(開幕戦の)カタールで準備ができているようにしたいけれど、そうじゃなければ、(第6戦の)ヘレスでば万全を期していたいと思う。バイクをさらに理解したい」

■スズキ:両ライダーがペースに自信

 アレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)が4番手、ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)が12番手となったスズキ。セパンのテストでは2021年バレンシアGP後のへレステストで使用し、さらに微調整が加えられた2022年型エンジンが持ち込まれたほか、新たなスイングアーム、サスペンションなども投入されている。また、新しいバージョンのリヤ側のスクワッティング・デバイス(車高調整デバイス)も試すとされていた。

 リンス、ミルともに2日目終了後、口をそろえたのは「ペースがよくなった」ということだ。リンスは「昨日から今日の午前中、ニュータイヤでのラップタイムを改善したんだ。エンジンパワーがちょっと向上したのがあるんじゃないかな」と言う。

 片やミルは「昨日から今日にかけて特にペースがよくなった。ユーズドタイヤでいい走りができていたよ」と語っている。どちらも1日目から2日目にかけて前進し、それは満足のいくものだったのだろう。

■ヤマハ:クアルタラロ、ライディングは改善するも……

 少し懸念が残ったのはヤマハだ。ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は7番手だった。

「走り出してすぐ1周目から満足だったよ。さらに自然に走れるようになったんだ。すごく満足だよ。走りについてはとても満足だ」とかなり明るいコメントなのだが、これはあくまでもクアルタラロ自信の走りについての話となる。昨日もクアルタラロは「自分の走りをもっとよくしたい」と己にフォーカスして話していた。

 バイクについてはと言えば、この日何をテストしたかを問われ、クアルタラロはこう答えているのである。

「今日は新しいシャシー、車高を低くするセットアップなどいろいろテストしたよ。でも、正直言って……、このテストにはもっと期待していた。(インドネシア)マンダリカで最終的に何ができるのか確認しよう。今あるものとだいたい同じものをまたテストするだろう。ただ、違うサーキットだからね」

 また、「昨シーズン、ドゥカティはめちゃくちゃ速かった。でも、(このテストで)さらに印象に残ったのはホンダ、スズキ、アプリリアだね。正直言って、これまでのところ僕たちが彼らのような進化をしたとは思わないんだ」とも言う。

「戦えない、ということじゃないんだけど。彼らが僕たちよりも大きく前進したということなんだ。僕たちは苦しんでいるところがある。新しいタイヤでも何かがおかしくて、苦戦している」

 クアルタラロは己のライディングには満足しつつあり、一方でライバルと比較したとき、バイクに懸念を抱いているのだ。とはいえ、テストはまだ3日間残っている。クアルタラロの期待は満たされるだろうか。

■ホンダ:マルケスが2日間のテストを終える

 この日もホンダ勢で最上位の8番手タイムをマークしたのは、やはりマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)だった。マルケスは1日目には62周、2日目は49周を走っている。ただ、フィジカル面が少し不足していた。マルケスは2021年のエミリア・ロマーニャGP後のオフロードバイクでのトレーニング中に転倒し、これが影響して複視を発症。ウインターブレイクではその回復に努めていたのだ。

 確かにフィジカル面での出遅れはあるだろうが、マルケスはすでに“急がば回れ”を知っている。今回のテストでの体調を聞かれ、マルケスは2日目に少し休んだ時間があったことを明かした。

「状態は2018年、2019年に近いと思うよ。今、問題ないと感じているのは確かだ。でも、トレーニングを2週間前に始めたばかりだからね。昨日はうまく走れたし、今日の午前中には攻めたいときにそれができた。でも、今のところ1日中安定したペースで走り、攻めて走ることはできない」
「今日はずっと走っている予定だったんだけど、いったん走行をストップするようにチームにお願いしたんだ。うまく走れないだろうからって。午後にはまた戻ったよ。残念ながら、午後に雨が降ってしまったけどね。でもとにかく、バイクに乗っているのが最高のトレーニングになる。
それに、新しいバイクを理解するためにもね。(2022年型には)初めて乗るわけだから」

■KTM:昨年から続く問題の解決は

 KTMはミゲール・オリベイラ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)の15番手が最上位という結果でセパンテストを締めくくった。ブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)は18番手。テック3・KTM・ファクトリーレーシングのルーキー勢はMotoGPバイクに慣れている最中だろう。

 テストではタイムが全てではないとはいえ、ビンダーのコメントが前向きなものではないことも気がかりだ。ビンダーはテストでは期待していたけれど、うまくいかなかったのだと言う。「バイクがあまりよく走らなくて、今のところ、タイムが出せないんだ」

「求めているのは、スロットルを開けたときに前に進みたいということなんだ。スロットルを開けたとき、まずタイヤがスピニングしてトラクションが途切れるということが起こる。スピンし始めると、グリップを取り戻すのはとても難しい。昨年のシーズン後半戦ではスピンの問題に悩まされ続けていた。それが僕たちの主な問題なんだ」

「ここ(セパン)に来て、まったく異なるエアロ・パッケージになった。それはいいところもあれば、難しいところもある。でも、機能させるにはまったく違ったセットアップが必要なんだ。
そして、僕たちにはその効果を最大限に引き出す時間がないんだ」

 ビンダーのチームメイトのオリベイラは、昨年と今年のバイクの違いについてテストを振り返ってこうコメントしている。

「昨年のシーズン中、新しいタイヤを履いたのにグリップが生きなかったことが何度もあった。それは電子制御の働き方が関係していたんだ。それが昨年との一番の違いじゃないかな。あとは少し違った空力デバイス。僕たちのねらいはタイヤが使えるときにコントロール下に置き、速く走ることだ。さらなるスピードとペース。それが目標だよ」

 セパン・インターナショナル・サーキットでの公式テストは2日間の日程を終え、2月11日から13日にかけてインドネシアのマンダリカ・サーキットで開幕前最後のテストが実施される。

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