「ゆかりのある全ての人に見てもらいたい」 かつての炭鉱の島、高島(長崎市) 元住民の山﨑さん、写真集を自費出版

写真集「記憶の島―故郷・高島」を出版した山﨑さん=長崎市西海町

 1986年に閉山したかつての炭鉱の島、高島(長崎市)の元住民で同市西海町の写真家、山﨑政幸さん(60)がこのほど、8年がかりで島を撮影した写真集「記憶の島-故郷・高島」(ぶどうぱん社)を自費出版した。記憶に残る風景と目の前の現実とを重ねて撮った数々をまとめた一冊。
 父親が炭鉱で働いていた山﨑さんは、地元の高校を卒業するまでの18年間、島に住んだ。人口は多い時で約1万8千人。炭鉱住宅のアパートが林立し、自身は海の見える8階の6畳二間に両親、妹と4人で暮らした。「学校や共同浴場などに行くため毎日階段を3往復はした。隣同士は家族のようだった」と懐かしむ。
 10年前、同窓会を機に約30年ぶりに訪れた島は、昔のアパートや炭鉱設備などが撤去され、変わりように驚いた。「高島の今」を記録することを決意しその後8年間、毎月通って撮ったという。
 家族4人で暮らしたアパートは幸い残っていて、市に許可を得て撮ることができた。ただ島の中には「シャッターを切っても、記憶に残る風景が写らない」場所もあり、かつての様子をどう伝えるか悩んだ。
 アパート群のあった場所を背景に住人だった同級生を写したり、現在も島で生活している人々を撮ったりして工夫を重ね、1980年代、帰省した際に撮った風景や仲間の写真も織り交ぜた。山﨑さんは「閉山後、全国に散った人や島民ら、ゆかりのある全ての人に見てもらいたい」と語った。
 B5判、103ページ。3千円。800部発行。長崎市のメトロ書店本店と好文堂書店で販売中。


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