〝世界の宝、子どもたちの夢〟 体操・内村が現役引退 長崎県内からねぎらいの声

2014年の長崎国体。詰め掛けた多くの観客が内村の華麗な演技を見守った=長崎市、県立総合体育館

 「世界の宝」「子どもたちの夢」-。体操の内村航平(33)=長崎県諫早市出身=が現役引退を表明した11日、県内からも数々の栄光をたたえ、ねぎらう声が上がった。
 2009年から世界選手権と五輪を合わせて個人総合8連覇の偉業を成し遂げた絶対王者。県体操協会の鹿摩幸政理事長(64)は「日本、特に長崎の人は地元の選手が世界チャンピオンであり続けたことが誇りだった。いつまでも活躍してほしかったけれど、本当にご苦労さまでした、ありがとう」と感謝した。
 「航平君はいつも子どもたちに夢を与えてくれていた」。内村の幼少期から親交がある同協会の佐藤久美子副理事長(63)はそう振り返る。今回の決断も尊重した上で「これからも子どもたち、日本、世界のために、航平君ができることを陰ながら応援したいと思う」とエールを送った。
 地元にも多くの足跡を残した。13年には古里の諫早市に自身の名が愛称になった市中央体育館(内村記念アリーナ)が完成。「スポーツを好きになってもらう場に」という内村の期待通りに、世代を超えて腕を磨き、披露する場になった。大久保潔重市長(55)は「たくさんの夢や希望、勇気を与えていただいた。これからもずっと郷土諫早の誇り」とコメントした。
 14年の世界選手権5連覇直後の長崎国体は「Nagasaki」のユニホームを着て出場した。定員の2倍の約2千人が前日から列をなして世界最高峰の演技を観戦。当時、一番乗りで入場券を手にした長崎市の公務員、中島瑞萌さん(27)は「生で演技を見られたのは一生の思い出。自分のことだけじゃなくて、地元や何かのためにという思いを感じた」と懐かしんだ。
 次世代も刺激を受けてきた。諫早市の創成館高体操部で、昨年11月の県高校新人大会男子個人総合を制した山﨑成さん(16)は「小さいころからの憧れ。つま先まで伸びている演技、着地は美しい。もう見られない寂しさもあるけど、映像とかを見てまねして、少しでも上達したい」と郷土の偉大な先輩を慕い、気持ちを新たにしていた。


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