貯金なしなのに戸建てを購入し、子どもの学費がないと焦り出したアラフィフ夫婦

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、会社員の夫と中学生の子どもと暮らす49歳パートの女性。これまでお金を気にせずに使ってきたという相談者。住宅を購入し、子どもの高校受験を迎え、お金がないことに焦り出したといいますが、今から家計改善して間に合うでしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。


50歳目前の夫婦と中学生の子どもと暮らしています。貯金なしなのに8年程前に戸建て購入。しばらく私は専業主婦をしていました。

住宅と車のローン、夫の生命保険は夫の給料から天引きされています。しかし、ザル勘定で生活してきていたため、気付けば貯金がなく子どもは来年受験生。高校の学費がない……と今更焦りだし今から貯金をしていこうと思っています。

家計の見直しをしつつ貯金していこうと考えていますが、毎月の生活費のほかに年間で2台の車検代、固定資産税などの税金支払いもあり、子どもの今後高校の学費や家のメンテナンス費用、家電の買い替え等も出てきて、毎回数十万単位でお金がかかるのかと焦りがとまりません。

家を売却して社宅に戻った方がいいのか、これから頑張れば何とかやっていけるのか……。社宅に戻ったとしても定年を迎えたら出ていかなくてはいけなくその資金もないです。売却して賃貸にしてもオーバーローンになると家賃を払う余裕はありません。

こんな状況になるまで好き放題使い、家計管理出来なかったのは自分が悪いのは重々承知です。アドバイスを頂けたらと思います。よろしくお願いします。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、49歳、パート

・夫:48歳、会社員 ・子ども:13歳(中学1年)

・住居の形態:持ち家(戸建て・関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:36万(私15万円、夫21万円。夫の給与から住宅・車ローン、夫生命保険、学資保険天引き住み。今後プラス4万くらいできるよう私のパートを増やす予定です)

・年間の世帯の手取りボーナス額:30万円(住宅と車のローンのボーナス払い天引き済)

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:太陽光返済2万8,000円(住宅ローンは夫の給与から天引き済)

・食費:7万円(外食代含む)

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:4万2,000円(塾代3万2,000円、中学学費5,000円、修学旅行積立金5,500円)

・保険料:3万円(車2台分の保険1万3,000円、私の生命保険2社1万5,000円、子ども共済2,000円、子どもの学資保険1万3,000円は夫の給料から天引き済)

・通信費:3万5,000円(2人分スマホ代2万1,000円、ケーブル会社の固定電話+テレビ+インターネットセッ1万4,000円)

・車両費:2万円(2台分のガソリン代)

・お小遣い:2万6,000円(3人分)

・その他:日用品 1万円、病院代6,000円、雑費&使途不明金 2万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:6~7万円(昨年の6月から始めました)

・ボーナスからの年間貯蓄額:5万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):240万円(子どもの学資保険は18歳満期で300万円予定)

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:3,186万円(住宅ローン2,800万円、車300万円、太陽光69万円 私のカード借金17万円。私のカード借金は夏までに全額返済してしまおうと思っています)

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼 FP YouTuberの秋山芳生です。今回のご相談者様は49歳の既婚女性です。今まで家計管理をしておらず、あまり貯蓄できていなかったようですが、13歳のお子さんの教育費と老後の資金を考えると不安ですよね。もうすぐ50歳になられますが、これからどのように巻き返していくべきか、

・家計改善のポイント
・教育費の考え方
・住宅と老後について

というテーマで一緒に考えていきたいと思います。 まずは家計の改善ポイントの洗い出しからはじめていきましょう。

住宅ローンは借り換えを検討の余地あり

現在、住宅ローンは給与天引きになっており、毎月いくら払っているかは記載がないので不明です。住宅ローンが2,800万円あるので、8年前に仮に1.36%の固定金利で借りていた場合は、残り26〜27年ほど約10万5,000円払う計算になりますね。手取り36万円で給与天引き10万5,000円とすると、本来の手取りは46万5,000円と考えられますので、住宅費の割合は太陽光のローン返済2万8,000円と合わせても28.9%となり高すぎる訳ではありません。ただし住宅ローンを組んだ8年前に比べると、金利は大きく下がっており、住宅ローンを他の金融機関に借り換えをすることで支払い総額を下げられる可能性があります。

借り換えの際は手数料と変動金利をしっかり考慮

仮に住宅ローンを固定金利1.36%から、変動金利0.5%に変更できれば、返済期間が約3年短くなり、支払い利息を367万円少なくできます。借り換えの際には手数料がかかり、司法書士に支払う登記費用、印紙税などが発生しますので、利息を少なくした分と手数料などの費用を比べても得であれば借り換えてもいいでしょう。

住宅ローンの手数料は金融機関にもよりますが、ローン総額の2.2%のところが多く、登記費用は20万円前後、印紙代が2万円と考えておけばいいでしょう。相談者様の場合は、2,800万円の2.2%で61万6,000円と、登記費用と印紙代で22万円が発生するので、合計83万6,000円がかかりますが、それでも住宅ローンの金利が367万円少なくなるのであれば283万4,000円安くなる計算になります。

一方で変動金利に変更することは、今後の金利上昇のリスクを自分が背負うことになりますので、万が一金利上昇した時に繰り上げ返済ができるような資金計画も重要になり、より筋肉質な家計になることが重要です。

車両保険は要再検討

毎月支払っている保険料3万円は高すぎると思います。内訳をみると、「車2台分の保険1万3,000円、私の生命保険2社1万5,000円、子ども共済2,000円、子どもの学資保険1万3,000円は夫の給料から天引き済」となり、無駄が多い印象です。

車の保険は2台で1万3,000円なので、年間で15万6,000円と高額ですね。おそらく車両保険に加入していると思われるので見直しで大幅に改善します。自動車に乗る以上は「対人対物無制限」の自動車保険は必要になりますが、車両保険は、大抵自損事故で車が凹んだとか傷ついたものを修理するためのものです。車両保険を利用しようとしても、10万円までは免責などの場合も多く、利用した場合に保険の等級が下がってしまい保険料が高くなってしまいます。保険の本質が「万が一のことがあったら自分の力では対処できない事故や災害」に対応すべきものと考えると、車両の修理に高い保険料を払うのは非効率なことが多いです。

生命保険にも大きな改善の余地が

また、生命保険も相談者様のものだとすると不要です。大黒柱である夫は、お子さんが自立されるまでの間は収入保障保険など効率的な死亡保険に入るといいでしょう。お子さんの共済も、医療費は3割負担であることや高額療養費もありますので、支払わなければいけない費用も限定されているので不要です。

学資保険は、たいして増えない上に保障も小さいので特に新規で始める場合はおすすめしません。ただし、すでに始めていて途中解約で返戻金が少なくなってしまう場合は継続してやり切る方がいいでしょう。保険の見直しだけで、1年間の固定費を20万円は削減できるので、一つ一つの保険の意味を再確認しながら削減されるといいと思います。

固定電話は本当に必要?

通信費も3万5,000円と高額です。この中で、スマホ代が2人分で2万1,000円ですが、格安SIMや格安携帯に替えるだけで大幅に減らせます。仮に7,500円の通信料2台と、3,000円2台の端末代金の支払いだとしたら、通信費は3,000円以下に減らせます。端末代の返済がありキャリアを変更できない場合は、端末代をまず一括で返済しましょう。

また、ケーブルテレビの会社に、固定電話+テレビ+インターネットセットで1万4,000円と高い費用を払っていますね。固定電話が本当に必要かを考えて、不要であれば解約するといいでしょう。

借金は金利の高いものから効率的に返済する

現在、住宅ローンの他に、車300万円、太陽光69万円 、カード借金17万円があるので、こちらは効率的に返済をしていきたいものです。借金は金利の高いものから返済するのが鉄則となります。おそらく、カードローンと太陽光の金利が高いと思いますので、240万円ある貯蓄から一気に返済してしまったほうがいいと思います。

また、利子のつくカードローンで買い物をしながら、無利息の貯蓄を6、7万円貯めているのは本末転倒なので、借り入れをしないで家計をコントロールしていきましょう。自分の家計状況を無理なく把握するために、自動家計簿アプリなどを利用して、家計の状態を徹底的に把握することが重要です。

教育費はそれほど心配しなくても大丈夫

13歳のお子さんの教育費についてはそれほど心配しなくてもいいと思います。高校は無償化が進んでいるので、公立やそれほど高くない私立を選択できれば生活費の他はそれほど持ち出しが増えることはないでしょう。一方、大学費用は、受験費用と入学費用がかかるのである程度の準備が必要になりますが、学資保険を継続して300万円ほど準備ができていますし、大学の4年間も足りない分を支払ってあげられる期間になるので、学資用に貯蓄を増やすというより、毎月の収入の中から足りない分を支払えるように家計をコントロールをされるといいと思います。

余剰資金が生まれたら十分老後資金作りに間に合う

先にお伝えした固定費の改善ができれば、月の支出は無理なく3万円以上は減らせると思います。既に、毎月の貯蓄が6〜7万円ほど貯められている上に、カードローンや太陽光設置の借金返済もできてしまえば、月に10万円以上は余剰資金が生まれます。その上で、さらに4万円ほどアルバイトの収入が増えたら、約20万円の黒字家計が出来上がるはずです。

家計をしっかりとコントロールできるようになって、安定的な余剰資金がでたら、そのうちの一部を確定拠出年金やつみたてNISAなどの投資に回されるといいでしょう。これだけの黒字が続けば、これからでも老後資金を十分に作っていけるはずです。

住宅の売却よりも先に考えるべきこと

最後に住宅の売却についてですが、売却価格が高く、住宅ローンの返済が十分にできるならば検討してもいいと思いますが、まずは家計を見直して資産を増やし、「住宅の売却価格」+「現金や金融資産」が、「住宅ローン残高」よりも大きい状態(純資産が黒字)にすることが重要です。純資産がマイナスの状態だと、自宅を売却した際にオーバーローン状態になり、残額を高い金利のローンで返済しないといけなくなりますし、売却自体が困難になることもあります。今後の人生でさまざまな理由から住宅の売却も必要になる可能性もありますが、まずは純資産を黒字化させるべく、家計の徹底的見直しを優先するといいと思います。

先々の不安は目の前の家計を改善することで自然に解決していくことが多いです。以上、参考になれば幸いです。

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