毎月赤字なのに投資やふるさと納税を始めたアラサー夫婦。効率が悪い理由と家計改善策は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、夫と0歳の子どもと暮らす28歳専業主婦の女性。夫の給与だけで生活を始めて11カ月目ですが、毎月赤字気味とのこと。家計を改善させようとふるさと納税やつみたてNISAの活用を始めましたが、プロから見ると……? FPの秋山芳生氏がお答えします。


新婚の専業主婦です。夫の給料のみで生活して11カ月目。生活防衛費確保のため、330万円を貯めたいのですが、なかなか貯められません。むしろ、毎月ほぼ赤字になってしまいます。どうすればよいでしょうか。

子どもが0歳なので、私の仕事復帰は未定です。

少しでも節税したり、貯金を増やそうと、ふるさと納税を始めたり、私の貯金を切り崩してつみたてNISAも始めました。他にもやったほうがいい方法があればアドバイスください。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、28歳、専業主婦

・夫:29歳 ・子ども:0歳

・住居の形態:賃貸(近畿地方)

・毎月の世帯の手取り金額:27万5,000円

・年間の世帯の手取りボーナス額:100万円

・毎月の世帯の支出の目安:25万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万5,000円

・食費:4万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:1万3,000円

・通信費:1万8,000円

・車両費:3万4,000円

・お小遣い:2万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):40万円

・現在の投資総額:3万3,000円

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。今回はお子さんがお一人のアラサー夫婦からのご相談です。ご主人のみの片働きでなかなか貯蓄が増えない中、つみたてNISA投資、ふるさと納税などのお得な制度をどのように利用していくべきかを一緒に考えていきましょう。

以下の順番で考察をお伝えしていきます。

1:家計の状態の洗い出しと課題の洗い出し
2:生活防衛費がなぜ必要か?
3:4つの袋(口座)を分けて整理する
4:つみたてNISAの正しいはじめかた

1:家計の状態の洗い出しと課題の洗い出し

まず家計の収支状況を詳しく見ていきたいと思います。

毎月の手取り収入が27万5,000円とボーナスで100万円があるので、合計すると430万円となり、額面では600万円(年)を超えます。現状では、毎月の支出が収入より多くなってしまうこともありボーナスでマイナス分を補填している状況です。

家賃は、8万5,000円で、毎月の手取り収入27万5,000円の約30%となっているので、高すぎるということはありません。食費、光熱費も比較的少なく抑えられていると思います。

改善ポイントとしては、保険、通信費、自動車関連費用になります。

保険を見直すポイント

保険の1万3,000円については見直しをおすすめします。おそらく、死亡保険と医療保険に入っていると思われますが、死亡保険は万が一のことが起こった際、毎月一定の金額が振り込まれる「収入保障保険」が効率的になりますので、「この先20年間の間に万が一死亡したら2,000万円の保険金が出る」という定期定額型保険に入っていたらぜひ見直してみましょう。

また、医療保険に入っている場合は解約してもよいでしょう。日本の公的保険は現役世代であれば医療費の3割負担ですし、一カ月あたりの医療費の支払い上限を決めた「高額療養費制度」もあるので、自分が負担しなければいけない医療費は限定的です。また、傷病手当や障害年金もありますので、「病気になったら怖い」という気持ちに負けて多くの医療保険に入るのではなく、公的な保障をしっかりと理解して、現金で備えることが効率的と言えます。

通信費と車両費の見直しの可能性

通信費として1万8,000円の支出がありますが、見直しできる可能性があります。スマホが3大キャリアで月に6,500円×2台を利用し、インターネット通信費が5,000円と仮定すると、スマホ代を6,500円から3,000円以下に変更できれば、月に7,000円下げられます。

車両費については詳細がわからないので改善ポイントを詳しく分析できませんが、カーローンの金利が高い場合は繰り上げ返済や借り換えを考えてもよいかもしれません。

使途不明金はしっかり把握しよう

そのほか、お小遣いの2万5,000円は、衣服や美容、交際費などを含むとすれば多すぎるわけでもありませんが、貯蓄を効率的に行うためには、内訳を把握して引き締めポイントを探してみましょう。

月の支出は25万円と記載されていますが、ひとつひとつの支出を足し上げると23万円にしかならないので、2万円ほどの使途不明金があるようです。何に使っているかを把握できないと家計改善は難しいので、きちんと家計簿をつけて管理することをお勧めします。

トータルでは、保険で8,000円から6,000円ほど支出を抑えられると思います。通信費やその他の支出と合わせて、月に1万5,000円は支出を改善できるでしょう。

2:生活防衛費がなぜ必要か?

生活防衛費として330万円を貯めたいとのことですが、生活防衛費を「なぜ貯めるのか」「いくら貯めるのか」をしっかりと理解できているとモチベーションを高く維持できると思います。生活防衛費は、その名のとおり「収入が途絶えて、困窮するようなことがあっても、しばらく生活を守っていけるだけのお金」です。つまり、病気や怪我、会社の倒産などで働けなくなった時でも生活を破綻させないためのお金です。

この基準になる金額は、生活にかかる費用の6カ月分と言われます。相談者様は1カ月25万円なので、6カ月分は150万円となります。

なぜ6カ月分なのかというと、6カ月分あれば会社が倒産した場合や働けないような怪我や病気でもリスタートしやすい期間が担保できるということもあるのですが、そもそも、会社員や公務員であれば「傷病手当」や「失業給付(雇用保険の基本手当)」があります。傷病手当は、それまで働いていた会社の給料の約2/3が最大1年半出ます。ということは、会社員や公務員であれば6カ月分の生活費があれば、手当金と併せて1年半はそれまでと同じだけの生活費を払うことができます。1年半の生活が担保できれば大抵の状態に対応できることになります。一方で、個人事業主となると傷病手当や失業給付がないため、1年から2年分の生活費用がまかなえる貯蓄が必要になります。

相談者様は生活防衛費330万円を目標にしていますが、夫が会社員であれば多すぎる可能性があります。生活費の6カ月分であれば、生活防衛費は150万円と考えてよいでしょう。

3:4つの袋(口座)を分けて整理する

貯蓄する上で、1つの口座でさまざまな目的の資産を管理しようとすると、内訳が分からなくなりがちです。そこで「生活費」「生活防衛費」「将来かかる費用(学費など)」「老後資産」の4つの口座を分けて整理すると、何にいくら貯まっているかがわかりやすくなります。

生活費の口座には、1.5カ月分の生活費が給料日になると入っている状態を目安にするといいでしょう。1カ月分ギリギリだと、ふとしたタイミングで他の口座のお金を引き出してしまったり、場合によっては借入が必要になってしまったりするので、半月分は余力があるとベストです。

生活防衛費は、先述の通り6カ月分の生活費用を貯めておきましょう。教育費や使うことが分かっている目的別の費用も分けて管理すると、目標までの進捗がわかりやすくなります。老後資金は、20〜50代の方であればリスク許容度に応じて証券口座で株式や投資信託などの金融商品を、NISAやつみたてNISA、iDeCoなどの税制優遇制度を利用して長期運用で増やしていくといいでしょう。

4:つみたてNISAの正しいはじめかた

投資は、「なんのために、いつ、いくら必要か」によって最適なやり方が異なります。例えば学資の場合、子どもが18歳と必要な時期が決まっているため、資産の増減がない現金で貯めていくのが王道です。住宅の頭金が5年後に必要ならば、こちらも投資でなく現金で貯めていくべきものになります。

一方、老後資産をつくる場合は、60歳まで引き出せないけれど、掛け金に所得控除が受けられるiDeCo(個人型確定拠出年金)などがよいでしょう。新婚なので、まだ今後のライフプランは固まっていないが余剰資金を現金で遊ばせておくのはもったいないという場合は、いつでも解約できる「つみたてNISA」が有用です。

ただし、生活防衛費がしっかりと貯まっていないと、「想定外のことがあるとすぐにつみたてNISAを解約しないといけなくなる」ので、ある程度の現金が貯まってからでないと長期投資を失敗しかねません。6カ月分の生活防衛費を確保してから、学資などの現金で貯める分と、運用に回す余剰資金を分けて投資するのが理想的です。

3カ月分の生活防衛費が貯まったら並走させてもよい

ただし、6カ月分の生活防衛費や学費を貯めてから投資を始めると、なかなか投資に回す機会が訪れず、時間を味方につけた複利運用の旨味を受けづらいのも事実です。考え方として、3カ月分程度の生活防衛費が貯まってから、貯蓄で増やす分と投資で増やす分を分けて計画を立てて、資産マネージメントをするとよいと思います。現在は、貯蓄を切り崩して現金を投資に回している状況ですが、一旦つみたてを停止して、まずは月の収支を黒字にして生活防衛費がある程度貯まってから再開したほうがいいと思います。

お得な制度を使い倒す前に余剰資金を生み出しましょう

ふるさと納税やつみたてNISA、iDeCoなど、お得な税制優遇制度はしっかりと使い倒していきたいものですが、まずは現金を確保して生活の基盤を安定させることが最重要といえます。家計の内訳を把握し、無駄な支出を減らすことで生まれた「余剰資金」を使って、投資やふるさと納税をするのはよいと思いますが、日々のキャッシュフローが赤字なのであれば、まず家計の見直しをして「黒字家計」になることが最優先です。「ボーナスで補填すればトータルで黒字だから大丈夫」という考え方だと、不景気の際にボーナスが少なくなり計算が狂った結果、借入しないと生活が立ち行かなくなるケースも多いもの。まずは毎月の収支の中で家計を黒字にコントロールすることを意識するとよいでしょう。どこか参考になれば幸いです。

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