AR使い平和学習アプリ開発 新年度中に実用化へ 古写真、被爆者の語りで説明 長崎コンベンション協会など

長崎市立山里小にある原爆で犠牲になった児童らを慰霊する「あの子らの碑」を説明する一場面。画面上で当時と現在の様子を見比べながら学習できる=長崎市橋口町、山里小

 長崎国際観光コンベンション協会などは、浦上天主堂など爆心地周辺の原爆に関する遺構を巡る修学旅行生向けの平和学習アプリを開発した。AR(拡張現実)を使い、体験などを語る被爆者や被爆当時の写真などをタブレット上の画面に映し出す。現地を巡りながら使用するほか、事前・事後学習にも活用できる。同協会は新年度中の実用化を目指しており「平和教育の新しい選択肢になれば」と期待している。
 児童生徒に1人1台タブレット端末などを配備する「GIGAスクール構想」や、子どもが主体的に学ぶ「アクティブラーニング」など、学校教育の変化に合わせたプログラムを開発し、デジタルを用いて学習効果を高める狙い。
 同協会によると、ガイドの高齢化のほか、ガイド1人に対して10人程度の学生を案内する場合もあり、声が聞こえづらいなどの課題もあった。学生が自ら操作して主体的な学びにもつなげ、1人1台使用することで密集を避ける利点もある。
 説明は浦上天主堂など計31種類で、長崎原爆資料館が収蔵する古写真など50枚以上も盛り込んだ。説明の項目を選ぶと、タブレット端末などのカメラで現地の様子を映しながら、画面に写真などが現れ、音声が流れる。端末で説明を見ながら現地を訪れ、写真などで被爆当時の状況と見比べて「より深い学び」を目指す。全て場所に関係なく説明は見られる。
 現地学習は3人の被爆者がARで登場。爆心地公園では被爆当時6歳だった池田道明さんが「火の玉が直径280メートルと言われている。この公園よりもっと大きな火の玉が発生した」と語りかけている。
 1月20日は体験会を開き、市や平和団体の関係者ら約30人が参加。長崎原爆資料館の篠﨑桂子館長は「被爆者の代わりになるものではないが、デジタルと組み合わせることで次世代に被爆体験や被爆者の思いをより伝えられたらいい」と話した。

被爆者の池田道明さんが原爆の威力などを語る一場面=長崎市、爆心地公園

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