NPTで日米共同声明 長崎県の被爆者ら歓迎も「口先だけで終わらないで」

 日米両政府が核拡散防止条約(NPT)に関する共同声明で政治指導者らに被爆地広島・長崎訪問を呼び掛けた21日、長崎県の被爆者は歓迎する一方、「口先だけで終わらないで」と実現に向けて動きだすよう両政府に注文を付けた。
 県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長は、呼び掛けを「画期的」と高く評価。その上で「行動に移すことが大事。世界の首脳に広島・長崎を訪れてもらうための枠組みをつくる必要がある」として岸田文雄首相の行動力に期待した。
 駐日米大使が初めて長崎原爆の日の平和祈念式典に出席したのは2012年。16年には当時のオバマ大統領が広島を訪問し、米国の被爆地訪問に対する意識はこの10年で高まったとみられる。
 長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長は「目新しいことではないが、呼び掛けるのはいいことだ」と冷静に受け止める。「まずは言い出した日米首脳が広島だけでなく、長崎も訪れるべき」とくぎを刺した。
 一方、県平和運動センター被爆連の川野浩一議長は「岸田首相は被爆地が地元なのに、核兵器廃絶に向けて主体的な動きが見えない」と不満を示す。今回の呼び掛けにも「バイデン大統領の動きに同調しているように映る。大統領本人にも被爆地訪問を迫ってもらいたい」と求めた。
 田上富久市長は取材に「共同声明の意義は大きく、感謝したい。各国リーダーの動きが被爆地訪問の呼び水になる。行動する人が増えるよう被爆地も努力するので、日米両政府からの後押しを期待したい」と述べた。


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