負債1,000万円未満の倒産 1月は20件、2000年以降で最少を記録 【2022年1月】

 2022年1月の負債1,000万円未満の企業倒産は20件(前年同月比39.3%減)で、8カ月連続で前年同月を下回った。1月としては、2000年以降、2004年と2007年の22件を下回り、最少を記録した。
 負債1,000万円未満のコロナ関連倒産は3件(前年同月6件)で、やや落ち着きをみせた。ただ、形態別では、2年ぶりに20件すべてを「破産」が占め、小・零細規模ほど事業再建が難しいことを示している。
 産業別では、最多はサービス業他の12件(前年同月比14.2%減)で、全体の6割(構成比60.0%)を占めた。訪問介護事業(1→2件)など医療,福祉事業が3件(前年同月比200.0%増)に増加した。
 原因別では、最多は「販売不振」で13件(同50.0%減)と半減したが、業績不振から事業継続を断念するケースが多い。資本金別は、1,000万円未満が19件(同36.6%減)と大半(構成比95.0%)を占め、ほとんど小・零細規模の企業だった。
 コロナ関連の資金繰り支援策は、大企業から中小・零細企業まで多くの企業が恩恵を受けた。ただ、売上回復が遅れるなかで借入金が膨らみ、過剰債務の解消が急務になっている。
 新型コロナの新たな変異株「オミクロン株」の感染急拡大で、コロナ収束は不透明さを増しているが、小・零細企業の体力は疲弊し、時間の経過とともに支援効果は薄れつつある。
 また、コロナ支援策は縮小しており、支援策に依存した経営者のなかには判断の先送りも限界に達し、廃業を選択する可能性が高まっている。コロナ禍も3年目に入り、事業再構築や経営再建だけでなく、廃業に向けた新たな支援策も必要となっている。

  • ※本調査は、2022年1月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産20件、新型コロナ関連倒産は15.0%

 2022年1月の負債1,000万円未満の企業倒産は20件(前年同月比39.3%減)で、8カ月連続で前年同月を下回った。コロナ関連の資金繰り支援や給付金などの下支えもあり、2000年以降の1月度では2004年と2007年の22件を下回り、最少を記録した。
 負債1,000万円未満の倒産のうち、新型コロナ関連倒産の構成比は15.0%(前年同月18.1%)で、前年同月より3.1ポイント低下した。
 緊急事態宣言の全面解除で、2021年10月以降、事業の本格的な再開が期待されたが、新たな変異株「オミクロン株」の感染が急拡大。2021年1月に「まん延防止等重点措置」が発令され、これまでに対象地域は35都道府県に広がり、期限延長の検討も始まっている。長期化するコロナ禍でさらに業績回復の遅れが懸念され、「過剰債務」問題への対応が急がれる。

1000万未満

【産業別】10産業のうち、増加はゼロ

 産業別は、10産業のうち、増加はゼロ、減少は6産業だった。
 最多は、サービス業他の12件(前年同月比14.2%減)で、3年ぶりに前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は60.0%(前年同月42.4%)で、前年同月より17.6ポイント上昇した。
 サービス業他では、飲食業2件(同4件)、美容業2件(同1件)、訪問介護事業2件(同1件)、広告業、フィットネスクラブ、自動車一般整備業、電気機械器具修理業が各1件など。
 このほか、建設業3件(前年同月比40.0%減)は4年連続、小売業3件(同50.0%減)は2年ぶりに前年同月を下回った。また、卸売業(前年同月3件)、金融・保険業(同1件)、運輸業(同2件)は、それぞれ発生がなかった。
 情報通信業は前年同月と同件数の2件だった。農・林・漁・鉱業は2011年以降、製造業と不動産業は2年連続で、それぞれゼロが続く。  新型コロナ関連倒産は、サービス業他2件(前年同月4件)、建設業1件(同ゼロ)の計3件(同6件)発生した。

1000万未満

【形態別】すべての倒産が破産を選択

 形態別は、法的倒産が20件(前年同月比37.5%減)と100%を占めた。件数は3年連続で前年同月を下回ったが、2年ぶりに100.0%(前年同月96.9%)となった。
 内訳は、20件(前年同月比37.5%減)すべて破産だった。小・零細企業が主体で、先行きの見通しが立たず事業継続をあきらめ、消滅型の「破産」を選択しているようだ。
 1月としては、再建型の「会社更生法」は10年以上、「民事再生法」は2年連続、清算型の「特別清算」は5年連続、「取引停止処分」(前年同月1件)も2年ぶりに、それぞれ発生がなかった。

【原因別】販売不振の構成比65.0%

 原因別では、最多は「販売不振」の13件(前年同月比50.0%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は65.0%(前年同月78.7%)だった。
 「既往のシワ寄せ(赤字累積)」はゼロ(前年同月2件)で、7年ぶりに発生がなかった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は13件(前年同月比53.5%減、前年同月28件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は65.0%で、前年同月の84.8%より19.8ポイント低下した。
 このほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」は3件(前年同月2件)。「他社倒産の余波」は前年同月と同件数の1件だった。
 また、「事業上の失敗」(同1件)、「事業外の失敗」(同ゼロ)、「運転資金の欠乏」(同1件)は、それぞれ1件だった。

【資本金別】1千万円未満の構成比95.0%

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が19件(前年同月比36.6%減、前年同月30件)で、3年連続で前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は95.0%で、前年(90.9%)より4.1ポイント上昇した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が11件(前年同月比22.2%増、前年同月9件)、「個人企業他」が5件(同44.4%減、同9件)、「1百万円未満」が3件(同57.1%減、同7件)、「5百万円以上1千万円未満」がゼロ(前年同月5件)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」は1件(同3件)で、2年連続で前年同月を下回った。
 「5千万円以上1億円未満」と「1億円以上」は、2013年以降の10年間では発生していない。

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