少年たちを麻酔で眠らせて潜水 収監の可能性も 奇跡の救出劇の裏側 「THE RESCUE」予告

2月11日より劇場公開される、タイ洞窟遭難事故の舞台裏を追ったドキュメンタリー映画「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」から、救出作戦の裏側について語られる本編映像が公開された。

遭難から16日が経過し、洞窟内の少年たちは、酸素の減少や体力低下が進む絶体絶命の状況にあった。そんな中、少年たちに麻酔を打って両手を縛り、眠らせた状態で潜水する作戦が立てられる。ウェットスーツの上から少年たちに注射をする必要があるため、医師で洞窟ダイバーのハリスが指揮を執り、注射の経験のない民間ダイバーたちに、ペットボトルを使って基本的な打ち方を指導したことが明かされている。また、救出に失敗すれば世界各地から集まったダイバーたちはタイの法律により収監される可能性もあり、車で逃亡する計画がひそかに練られていたことも語られている。

「THE RESCUE 奇跡を起こした者たち」で描かれるのは、2018年6月23日にタイで発生した遭難事故。洞窟探検をしたサッカーチームに所属する12人の少年は、豪雨によって洞窟が浸水したことによって、出入り口をふさがれてしまう。捜索作業が始まるものの、洞窟内は増水し救助は不可能と思われた。タイ海軍特殊部隊、米軍特殊部隊など数千人が応援のために集まったが、洞窟ダイビングは死のリスクが高く、特殊技能が必要であるため、少年たちの救出活動は進まない。そこで世界各地から集められたのは、民間の洞窟ダイバーたちだった。彼らを中心にした決死の救出作戦が始まる。

「フリーソロ」で2019年アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した、エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィとジミー・チンの2人が監督。救出劇の詳しい内容を明らかにしながら、洞窟探検のエキスパートたちの果敢な挑戦と功績を映し出したドキュメンタリーとなっている。2021年のトロント国際映画祭では観客賞を受賞した。

本作を鑑賞した著名人や専門家によるコメントも発表された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■辻政信(JAXAバンコク駐在員事務所前所長)
救出には、洞窟の水を抜く、穴を掘る、ダイバーを送るの3つの方法が考えられた。JICAは現地にポンプ車を送り、JAXAは「だいち2号」で宇宙から岩の割れ目を探した。この映画はダイバーによる救出活動を中心に、優れた物語に仕上がっている。

■三宅繁輝(元JICAタイ事務所次長、現アフガニスタン事務所次長)
事件当時私は現地にいましたが、一雨ごとに100万m3もの雨が洞窟内に降り注ぎ、濁流で30㎝先が見えない水中を5㎞進み、
更に子供等を連れ帰るのは不可能ではないかと言われていました。
必要な手立てを打ちつつも、最後は自らのリスクを負い救援を成功させたダイバーや関係の皆様の勇気に敬意を表します。

■秦辰也(シャンティ国際ボランティア会常務理事)
波乱の末、洞窟ダイバーたちが起こす奇跡に涙が止まらない。
世界中を巻き込んだ、空前絶後の人命救助ドキュメンタリーだ。

■矢田海里(「潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景」著者、ライター)
不可能と思われた救出を可能にしたダイバーたちの執念の軌跡が細部まで描かれている。
善意と信念に満ちた17日間の奮闘に驚愕した。

■吉田浩文(「潜匠」のモデル、潜水士、潜匠建設(株)代表取締役社長)
映像のクオリティーの素晴らしさに驚いた。
潜水救助作業中の水の流れやフェイスマスク越しからの表情が、厳しい条件下での捜索を物語っている。
このドキュメンタリー映画こそ民間ダイバーの発想力と技術力の高さを物語る最高作品だと思います。

■吉田勝次(洞窟探検家、一般社団法人日本ケイビング連盟会長)
漆黒の闇に閉じ込められた子供たち。
救助するためのあらゆる手段が失敗に終わる中、ケイブダイバーの光だけが届いた。

■よしひろまさみち(映画ライター)
あの遭難事故は日本でも大きく報じられたが、そこで欠けていた情報は、命がけの救出作戦を担ったヒーローたち。
こんなにも困難な作戦だったのか、と驚き、そして胸を打つ。

【作品情報】
THE RESCUE 奇跡を起こした者たち
2022年2月11日(金・祝)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:アンプラグド
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