双子を出産予定の夫婦「夫婦同時に1年間育休を取得したいけれど、家計は大丈夫?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、双子を出産予定の32歳、公務員の女性。夫婦同時に1年間の育休を取得するつもりですが、育休手当のみでやっていけるか不安だといいます。また、職場復帰のタイミングも迷っていると言いますが…。FPの薮内美樹氏がお答えします。


春に双子を出産予定です。夫婦同時に1年間の育休を取得しようと思っていますが、育休手当のみでやっていけるか不安です。その後は、妻(私)のみ育休延長を希望していますが、手当がゼロとなるため延長せず職場復帰するか迷っています。

現在ある程度の現金貯蓄はあり、投資も始めていますが、いずれ住宅購入もしたいと考えているため、これから生まれる子どもの教育費をどうやって準備すればよいか(現金貯蓄か学資保険かジュニアNISAか)などにも迷っています。また、現在それぞれ夫婦とも月額7,000円ほどの生命保険(死亡保障と医療保障)に入っていますが、医療保障は不要なので死亡保障を増やすために収入保障保険への乗り換えを検討しています。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、32歳、公務員

・夫:33歳、公立学校教員、手取り月収30万円(通勤手当込み)

・子どもの人数:2人(春に出産予定)

・住居の形態:賃貸(地方)

・毎月の世帯の手取り金額:50万円(夫30万円、妻20万円)

・年間の世帯の手取りボーナス額:170万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万3,000円

・食費:6万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:2万5,000円

・通信費:8,000円

・車両費:4万7,000円

・お小遣い:4万円

・その他:3万2,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:8万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,000万円

・現在の投資総額:300万円

・現在の負債総額:奨学金180万円(妻、無利子)

・ボーナスからの年間貯蓄額:120万円

薮内:この春、ご出産を控え、2人の赤ちゃんに同時に会える楽しみと、初めての育児が双子ということで不安を抱えておられることかと思います。夫に、1年間、育休を取ってもらえたら、ご相談者にとって、非常に心強いことかと思います。ご相談者は育休延長も検討しておられるそう。育休中は、収入が減るうえ、2人のお子様の生活費が増えることで、経済的な負担は大きくなります。お金のことを心配することなく、子育てに専念するために、育休中の収支予測を立ててみましょう。

出産後の支出予測は?

まずは、ご夫婦で育休を取られる1年間、収支がどうなるか確認してみましょう。

現状、貯蓄を除く毎月の生活費は22万円です。ご出産後は、オムツ代やお尻ふきシート、ミルク代、被服代などで、お一人のお子様につき、1万5,000円~2万円程度は支出が増えると考えられます。また、光熱費や水道代などの支出が増えることも想定し、5万円程度を見込むと、必要な生活費は月27万円となり、年間324万円となります。

さらに、ボーナスの手取り170万円から、120万円の貯蓄分を差し引いた50万円を、年間の生活費に上乗せすると374万円となります。その他、ベビーカーやチャイルドシートの購入、お宮参りやお食い初めなどの産後の行事費などで、色々と費用がかさむことも考えられます。概ね、年間400万円程度の支出が見込まれます。

育休中の収入予測は?

育休中、公務員の方は、育児休業手当金が支給されます。支給額は、育休開始から180日までは、標準報酬月額の67%程度、180日以降は、標準報酬月額の50%程度です。

夫の標準報酬月額が35万円、ご相談者の標準報酬月額が25万円と仮定して、ざっくり、ひと月あたりの支給額を計算してみましょう。

【育休開始から180日まで】
夫23万4,500円+相談者16万7,500円=合計40万2,000円

【育休開始から180日以降】
夫17万5,000円+12万5,000円=合計30万円

育休開始から180日までは、夫婦で月額40万円ほど、180日以降は、月額30万円ほどの支給額となります。育児休業手当金は非課税で、民間企業の健康保険料や厚生年金にあたる共済掛金も免除になります。住民税については、前年分の所得に対して、翌年6月以降に徴収されます。育休中でも、前年に所得があれば住民税の支払いがあるので、心づもりしておきましょう。

なお、公務員の方であれば、妻の産休中は、給与が支給されます。産休の期間は、産前は6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後は、出産の翌日から8週間までです。地方公務員の方だと、産前も8週間(多胎妊娠の場合は14週間)としているところがほとんどです。ご相談者の場合、双子なので、産前14週間、産後8週間となります。出産後は、ざっくり2カ月近く給与をもらった後、180日間は給与の67%が支給され、その後、お子様が1歳になるまで給与の50%になるというイメージです。

ボーナスについては、基準日(6月1日、12月1日)の6カ月以内に勤務した期間があるときは、勤務期間に応じて支給されます。今春、ご出産予定とのことなので、6月のボーナスは、ご夫婦とも支給対象となります。

上記により、育休中でも、出産後、1年間の世帯の手取り収入は、500万円程度は見込めるのではないでしょうか。家族が増えることにより、児童手当や扶養手当も2人分、受け取ることができます。支出が400万円程度であれば、夫婦で1年間、育休を取られても、貯蓄を取り崩すことなく、やりくりできそうです。

育休延長で、相談者の収入がゼロになるとどうなる?

ご相談者は、育休延長を希望されていらっしゃいます。公務員の方は、3年間、育休を取得することができますが、育児休業手当金が支給されるのは、原則、お子様の1歳の誕生日の前日までです。保育所に入所を申し込んでも、希望者がいっぱいで入園できないというような特段の事情がある場合に限り、最大2歳まで育児休業手当金を受け取ることができます。

今回のご相談では、2年目以降は、ご相談者の希望で育休延長を考えておられるようなので、夫の収入のみになります。現状、夫だけでも、少なくとも、400万円以上の手取りがありそうなので、収入の範囲内で、ある程度、生活費はカバーできるのではないでしょうか。今まで、頑張って貯めてこられた充分な貯蓄もありますので、ご相談者が最大3年間、育休を取られても何の心配もないでしょう。

使途不明金を正確に把握しましょう

ただし、一点、気になる点があります。

毎月の世帯の手取り金額が50万円あるのに対して、毎月の世帯の支出目安は、8万円の貯蓄分を含め、30万円となっています。月額収支の差額は20万円と、かなり大きな金額です。

毎月の生活費の22万円のうち、車両費の比率が高く、奨学金の返済も含まれているとすると、家賃を除く生活費は、8~9万円程度とかなり抑えられている状況です。貯蓄額からみても、無駄のない家計運営をされておられることは間違いないと思いますが、詳細不明の20万円のうち、費目に上がっていない支出がどの程度あるのか気になります。現状の支出が正確でなければ、ご出産後の収支計画を立てても不安が残ります。ご出産前に、一度、年間の支出額を把握しておきましょう。

現状、ご夫婦の世帯の年間手取り額は770万円です。例えば、昨年1月1日と今年の1月1日の通帳残高を比較していただくことで、1年間で、どれくらい貯蓄に回せたのか確認できます。投資もはじめられているとのことなので、昨年の投資総額と貯蓄額の合計額と、手取り年収との差額から、だいたいの年間支出を計算できます。一度、確認してみてください。

教育資金の目安は?

教育費については、マイホーム購入計画や老後資金の準備などと合わせて、計画を立てることが大切です。

老後資金については、ご夫婦ともに公務員として、定年まで働かれるご予定であれば、2人分の退職金、公的年金があるので、ある程度は準備できると考えられます。

住居費と教育費については、お子様の進路や優先順位をどのように考えるかによって、それぞれの予算額も変わってきます。一般的には、教育費の準備は、学費が高額となる私立大学への進学に向けて、お子様一人につき、300~400万円程度が目安とされています。児童手当+5,000円で概ね300万円、+1万円で400万円程度を準備できます。また、大学は自宅外通いを想定される場合、仕送り分も考慮しておく必要があります。親として、大学進学費用をどこまで準備してあげたいか、準備してあげられるか、マイホーム購入とのバランスを考えて、プランを立ててみてください。

教育費はどうやって準備すればよい?

教育資金の金融商品選びについて、貯蓄、学資保険、ジュニアNISAで、迷っておられるそう。ジュニアNISAは、お子様ひとりにつき、非課税投資枠は年間80万円となっていますが、利用者数が伸びず、2023年末に制度の廃止が決まっています。廃止に伴い、2019年~2023年に購入された投資商品は、18歳まで非課税期間が延長されることや、2024年1月以降なら、払い出しも自由にできるようになり、使い勝手はよくなっています。

ご相談者の場合、最大、2年分の160万円までは利用可能となります。お子様の大学資金の備えとしてお考えであれば、あと18年間あるため、運用期間はある程度確保できそうです。ただし、2年間で投資しないといけないので、長期に渡りコツコツ買って、価格変動リスクを抑えるという、時間分散効果はあまり期待できません。教育資金については、元本割れリスクのある投資商品メインで準備することはお勧めできません。安全性の高い貯蓄や学資保険などと併用し、ジュニアNISAを一部活用されてはいかがでしょう。

医療保険の見直しポイントは?

公務員の方は、一般的に、同じ月の医療費が2万5,000円(標準報酬月額53万円以上の上位所得者は5万円)を超えた分は、高額療養費に上乗せして、共済組合から払い戻してくれる手暑い保障があります。貯蓄もしっかりあるので、現役中は、民間の医療保険でカバーする必要性は低いと考えられます。

ただし、保険適用外の治療を受けられる場合、医療費が高額になることもあります。特に、がんの治療では、他の病気に比べて、先進医療や自由診療など、保険適用外の治療の選択肢が出てくるケースもあります。がんが心配な場合は、保険適用外の治療費をカバーできるがん保険に加入するのも一考です。また、本人の希望で、個室や4人以下の部屋を希望される場合は、差額ベッド代も自己負担になり、長期間の入院となると、高額になります。差額ベッド代の備えが必要という場合、貯蓄でカバーするのか、保険で備えるのか、検討してみましょう。

死亡保険の考え方

死亡保障については、万が一の場合、お子様の教育費として、どこまで準備するのか、また、住居費は、マイホーム購入前か後で、大きく変わってきます。マイホーム購入後は、団体信用生命保険に加入することで、ローンの負担は減りますが、ローンを借りられるのが、夫ひとりなのか、ご夫婦なのかで、返済不要となる金額も変わります。特に、ご夫婦で借りられる場合、亡くなられた方のローンだけが返済不要になるのか、それとも、2人分のローンが全額返済不要になるのかなど、加入される団体信用生命保険の保障内容によって異なります。また、団体信用生命保険に、金利を上乗せすることで、がんや3大疾病、8大疾病などの病気に備える特約を付けられるものもあります。団体信用生命保険に加入される際は、保障内容や付けられる特約などが、生命保険や医療保険の保障額にも関係してくるということは覚えておいてください。

現時点では、家賃分も考慮しておく必要があるので、それなりに死亡保障も必要になると思われます。一度、FPや保険の代理店などで、必要保障額を計算してもらわれることをお勧めします。

相談者の働き方がライフプランに影響する

ご相談者が定年退職まで働き続けられるかどうかがライフプランに大きく影響します。ご相談者の復職後も、継続した夫のサポートが重要となります。育休中に、お二人でしっかり話し合って、持続可能な仕事と育児の両立策を模索していただければと思います。

また、育休中は、お子様達の成長を見届けられる貴重な時間です。双子のお子様で大変なことも多いと思いますが、是非、ご家族で賑やかに、楽しく充実した時間をお過ごしください。

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