「つみたてNISAの対象ファンドは金融庁のお墨付きって言うけれど」対象にインデックス型が多い理由

時々、つみたてNISAのメリットについて解説された文章の中に、「つみたてNISAの対象ファンドは金融庁のお墨付きです」と書かれていることがあります。このお墨付きって、どういう意味なのでしょうか。


つみたてNISAの対象ファンドにインデックス型が多いワケ

2022年2月、つみたてNISAを通じて購入できる投資信託の本数は、全部で205本あります。内訳は、「指定インデックス投資信託」が177本、「指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ運用投資信託等)」が21本、「上場株式投資信託(ETF)」が7本です。金融庁の表記は少しだけ難しい言葉が用いられていますが、簡単に言えばインデックスファンドとアクティブファンド、ETFの3つに分類されています。この本数を見ても分かるように、インデックスファンドが圧倒的に多数を占めています。

なぜ、これだけインデックスファンドに偏ったラインナップになっているのでしょうか。

第一の理由は、近年、個人投資家の間でもローコストなインデックスファンドに対する人気が高まっているからです。商品を供給する投資信託会社としても、個人の人気が高い投資信託をつみたてNISAの対象にした方が、より多くの資金が集まる可能性があるので、そこからもたらされる収益が大きくなるのではないかという期待があるのは当然でしょう。

ただ、それ以上に大きな理由があります。それは、インデックスファンドの方が、金融庁によるつみたてNISAの対象と商品としての選定基準が緩いからです。逆の言い方をすると、アクティブファンドでつみたてNISAの対象ファンドになるのは、なかなかハードルが高いということでもあります。

年1.0%の信託報酬率では採算割れ?

では具体的に、インデックスファンドとアクティブファンドの選定基準では何が違っていて、どういう点で選定基準のハードルが異なるのかを考えてみましょう。

運用資産については、国内資産のみのファンドと海外資産も組み入れられるファンドの両方があるという点で、インデックスファンドもアクティブファンドも同じです。またコストについても、買付手数料や、売却・解約手数料をゼロにするというところは共通しています。

こうした基本スペックで異なるのは、コストのうち信託報酬の料率です。インデックスファンドの場合、運用資産が国内資産のみの場合が年0.5%以下、海外資産組入れの場合が年0.75%以下であるのに対し、アクティブファンドは国内資産のみの場合が年1.0%以下、海外資産組入れの場合が年1.5%以下というように、ややアクティブファンドの方が高めになっています。

ただ、インデックスファンドに比べて運用する際のコストが割高になるアクティブファンドの場合、たとえば国内資産のみで運用されるタイプでも、年1.0%以下という信託報酬率の条件は、ファンドの規模がある程度大きくなければクリアできません。運用資産の規模が小さいと、企業リサーチなど投資銘柄を選別する際に必要な諸々のコストを信託報酬で賄うことが出来ず、採算割れになってしまうからです。

運用資金の安定性が高いハードルに

そしてもうひとつ、アクティブファンドの本数が増えない決定的な条件があります。それは、「運用期間が5年以上」、「純資産総額が50億円以上」、「運用期間中の3分の2の期間で資金流入している」という3つの条件です。

つまり、最低でも過去5年間の運用成績を残していて、かつ運用資金が安定していなければ、つみたてNISAの対象として認められないということです。つみたてNISAの対象ファンドでアクティブファンドが少ないのは、この「最低でも過去5年間の運用成績を残していて、かつ運用資金が安定していなければ」という条件をクリアできるアクティブファンドが、全体的に少ないことを意味します。

今から5年前といえば、投資信託の回転売買が普通に行われていた時期でもあります。証券会社や銀行などの販売金融機関は、少しでも手数料を稼ぐため、顧客から買ってもらった投資信託を短期間のうちに解約させ、それでもって新しい投資信託に乗り換えてもらうという取引が横行していました。

したがって、このような時期から運用をスタートさせた投資信託の大半は、「運用期間中の3分の2の期間で資金流入している」という条件のクリアが難しくなると推察されます。

また新しい投資信託を立ち上げるにしても、「運用期間が5年以上」という条件があるので、今、新規設定された投資信託がつみたてNISAの候補になるのは5年先の話になります。このように、結構高いハードルを乗り越える必要があるため、つみたてNISAの対象ファンドに占めるアクティブファンドの本数は、どうしても少なくなってしまうのです。

金融庁のお墨付きはファンドの運用継続性に対するもの

最後に、これは誤解を招かないためにも指摘しておきたいことなのですが、時々、つみたてNISAに関連した記事のなかで、「つみたてNISAの対象ファンドは金融庁のお墨付きがあるから安心できます」というコメントを目にすることがあります。

これ、結構誤解を招きやすい言葉だと思います。何も知らない人がこのようなコメントを見た時、まず思い浮かべるのは、「金融庁がお墨付きを与えている投資信託だから、大きな損を被ることはないだろう」ということではないでしょうか。

でも、つみたてNISAの対象ファンドの選定基準に、リスクの度合いは含まれていません。選定基準にあるのは、投資対象となるマーケット、コスト、資金の安定性の3点だけです。つまり金融庁のお墨付きとは、あくまでもファンドの運用継続性に関してであって、運用成績やリスクに対するものではないのです。この点、つみたてNISAを始めるにあたって、勘違いしないようにしてください。

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