交通渋滞 日常に密接 関心高く 時津 2022長崎知事選 まちの課題点検・9

長崎市方面に向かう車で渋滞する国道206号=時津町内

 長崎市北部に隣接し、商工業が盛んな西彼時津町は、民間会社の調査でも住み心地の満足度が高い地域。その一方で、交通渋滞の煩わしさを感じる人もいる。最近はコロナ禍でやや落ち着いている感もあるが、日常生活と切っても切り離せない渋滞問題の根本解決を求める声は少なくない。
 現在、都内在住の専門学生、尾道葵音さん(19)は時津町出身。約2年前まで、町内の自宅から長崎市中心部に通う高校生だった尾道さんは「通学時はいつも渋滞に悩まされていた」と振り返る。路線バスに乗って国道206号をゆるゆると南下。長崎市に入ったところでスクールバスに乗り換える。このバスに乗り遅れると“悲劇”が待っていた。
 スクールバスが遅れても遅刻扱いにはならないが、それ以外はもちろん「遅刻」。車が前後に連なる町内を抜けるまでの所要時間を約30分とみて早く家を出ても、信号待ちの間に目の前をスクールバスが通り過ぎ、悔しい思いをしたことがある。ラッシュ時の所要時間の予測は至難の業だった。
 渋滞の主な発生場所は、町の中心部を貫き、長崎市へと続く206号の主要交差点や、隣接の西彼長与町につながる国道207号。平日の通勤・通学時間帯や、買い物客らでにぎわう週末の午後などが顕著だ。幹線道路沿いに商業施設が多いのは魅力だが、渋滞の要因にもなっている。
 町が2019年に実施した「まちづくり住民アンケート」でも、「今後のまちづくりで特に力を注ぐべき分野」の設問では「道路の整備」の割合が最も高く、交通問題の関心の高さをうかがわせた。
 昨年12月、町が土地区画整理事業の一環で整備した道路が開通した。206号と207号をつなぐ抜け道的な役割も果たし、町区画整理課は「一定の効果は生んでいる」としているが、道路はさらに延長する計画で「狙っている効果を完全に発揮しているとはいえない」と話す。
 県が建設中の地域高規格道路「西彼杵道路」(佐世保市-時津町)の時津工区(日並郷-野田郷、延長3.4キロ)は新年度中に供用開始予定。206号のバイパス的役割で渋滞を緩和できるか。幹線道路とのアクセスなども課題だ。
 西彼杵道路と長崎市を結ぶもう一つの地域高規格道路「長崎南北幹線道路」。県は未整備区間の長崎市茂里町-時津町野田郷について22年度の事業化を目指しているが、完成までに10年以上かかるとみられている。
 尾道さんは将来、長崎にUターンしたい気持ちもあるという。そのとき住むなら「やはり時津がいい。でも…」。渋滞のない住みよい古里の実現に期待を寄せた。


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