友田市政 2期目の課題<上> アジフライの聖地 国内外への発信強化

アジフライに加工される前のアジ。刺し身でも食べられるほど新鮮=松浦市調川町、「三陽」松浦工場

 任期満了に伴う松浦市長選で無投票再選された友田吉泰市長(57)の2期目がスタートした。1期目では公約として掲げた「ともだビジョン」の実現に取り組み、“アジの水揚げ高日本一”を生かした「アジフライの聖地」プロジェクトや、木育を取り入れた長崎県内自治体初の「ウッドスタート宣言」などユニークな施策で注目を集めた。2期目に向けた施策の中から今後の展開や課題などを探った。

 今や松浦の代名詞となった「アジフライの聖地」。2019年4月の「聖地」宣言以降、刺し身でも食べられる新鮮なアジを使ったフライはふっくら肉厚、ふわふわ、サクサクな食感で食通をうならせ、「アジフライの概念を変えた」とまで評された。
 そのユニークな取り組みはメディアで紹介され、同市が定めた「アジフライ憲章」に沿ったアジフライを提供する市内の連携店も宣言当初の20店舗から33店舗に増え、全国からアジフライを目当てに多くの観光客が訪れるブームとなった。
 さらに、アジフライマップ(連携店の紹介)付きの同市の観光情報誌「meets!まつら」は日本地域情報コンテンツ大賞を、プロジェクト自体も国土交通省関連の地域づくり表彰審査員特別賞を受賞するなど、一連の取り組みは松浦の知名度を格段とアップさせた。
 だが、友田市長は「コロナ禍でここ2年間は十分な施策の展開ができなかった」と悔しがる。実際に九州の揚げ物を一堂に集めるイベントや首都圏でのPRなどの企画は軒並み中止や延期となった。
 2期目に当たっては「アジフライの聖地は松浦の伸びしろの一つ。ただのグルメ観光ブームで終わらせてはならない」と強調する。コロナ収束後を見据え、大都市圏で松浦産アジフライを提供してもらう店の開拓や、日本貿易振興機構(ジェトロ)と連携し、海外に売り込むことも視野に入れる。
 既に市内で約5年前からアジフライの加工製造をしている「三陽」(福岡市)は、一昨年から松浦産アジフライをニューヨークや香港、カナダに輸出を開始。松浦魚市場も欧州に水産物の輸出を可能にする食品衛生管理の国際基準「EUハサップ」取得の手続きを進めている。友田市長も「水産加工品であるアジフライは輸出の有力なコンテンツになる」と期待する。
 市内の連携店では巻き網や定置網で漁獲したアジや釣りアジを使い、パン粉や揚げる油の温度、ソースなども工夫し、それぞれ個性あるアジフライを提供している。観光客を呼び込むためにも松浦に行けばいろんなアジフライが食べられることをもっと周知し、連携店にはレシピをさらに磨いてもらい、アジフライの“本場”としての魅力アップが望まれる。


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