観光 基幹産業、打撃深刻 新幹線に期待 長崎県・雲仙 2022長崎知事選 まちの課題点検・10

旅館の受け付けに置かれた新幹線開業PRのミニのぼり=雲仙市小浜町雲仙、雲仙いわき旅館

 新型コロナウイルス感染拡大で長崎県雲仙市の基幹産業、観光が受けている打撃は深刻だ。減少が続いている観光客数は、コロナ禍の人流抑制の影響で、2020年には初めて年間200万人(延べ人数)を割った。
 今も、まん延防止等重点措置が県内全域に適用され、小浜と雲仙の両温泉街を歩く観光客はまばら。「宿泊割引キャンペーンや補助金など国や県の支援に感謝しているが、経営体力にも限界がある」。小浜温泉街で福徳屋旅館を営む本多伸吉社長(51)は危機感を募らせている。
 両温泉街ではほとんどの旅館・ホテルが、運転資金の実質無利子融資、雇用調整助成金、感染拡大防止のための施設改修費補助、観光客の受け入れ態勢整備費用など国や県の経済支援を活用。コロナ収束後の誘客を見据えながら営業を続けている。
 福徳屋旅館は感染リスクを下げるために、補助金を使って食事用の個室を増やした。昨年末には露天の家族風呂を2室設けたが、年が明け、1月下旬に県内宿泊割引キャンペーンが停止し、ほとんどの予約がキャンセルになった。
 改修費の4分の3は補助金で賄えるが、運転資金として借りた融資の返済が控えている。「家族風呂を造ったからといって宿泊料金の値上げはできない。魅力を上げて常連客を増やし、稼働率を上げていくしかない」と本多社長。「そのためにも、県には他県に負けない観光キャンペーンを展開してもらいたい」と力を込める。
 県内や近県からの客が多い小浜温泉街に比べ関東、関西など遠方からの客が多い雲仙温泉街では、今年秋に部分開業する九州新幹線長崎ルートに期待が掛かる。
 「次は新幹線で来てくださいね」。雲仙温泉街の雲仙いわき旅館は、新幹線PRのミニのぼりを受け付けに置き利用を呼び掛けるが、同館の石動義高専務(65)は「全線フル規格じゃないと誘客効果も落ちる。生きているうちに実現するのかなあ」と不安も漏らす。
 JR諫早駅で降りる新幹線の利用客を、どうやって招き入れるかが課題。それと併せて、石動専務は「新幹線開通を機に、雲仙と諫早駅を結ぶ路線バスの便を、時間帯限定で長崎空港まで走らせれば、空路の客も増やせる」と一案を巡らせる。
 「一日でも早く県の県内宿泊割引、国の『Go To トラベル』が再開し、秋の新幹線開業につながっていかないか」。石動専務は温泉街の体力回復へ、こんな流れをイメージしている。


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