新型コロナウイルス感染第6波の拡大に歯止めがかからない中、軽症者らの宿泊療養施設となっている「ホテル丸治」(宇都宮市泉町)でも連日10人前後が入退所するなど慌ただしさが増している。看護師らは療養者の健康状態の把握、ホテル関係者らは食事の用意などの生活支援に追われている。
「おはようございます。熱と(血中)酸素飽和度を教えてください」
10日午前10時すぎ。看護師が電話で療養者一人一人へ、自分で測ってもらった飽和度など健康状態や症状の有無などを尋ねた。
「何か症状があるときはいつでもお電話ください」
受話器から聞こえる息づかい、声色まで気を配る。電話に出ない時など部屋を訪問する場合もある。
入所者は10日朝時点で56人。同ホテルの福田治久(ふくだはるひさ)専務(48)は「受け入れは今、ぎりぎりに近い状態」と話す。医師は日中1人、看護師は昼夜とも2人が常駐する。
現場を統括する50代女性保健師は「軽症で入ってきても入院調整が必要になる人もいる」と緊張感をにじませる。
ホテル内は療養者とそれ以外の人の動線を分ける「ゾーニング」を実施。療養者がいるエリア(レッドゾーン)へはマスク、医療用ガウン、キャップ、手袋など対策をより徹底して立ち入る。療養者が退所した部屋は、翌日には新しい人が入所できるよう業者による消毒やベッドメーキングを早急に進める。
午前11時。昼食の準備。食事は3食ともホテルで作り、提供する。弁当の数に加え、アレルギー対応など希望に沿った内容になっているかを一つ一つ確認。その後、スタッフらはガウンを着用し、療養者のいるフロアへ弁当を届けた。
福田専務によると、おかゆ希望者が多い時もあれば、ご飯大盛りを希望する人がいる時も。食事内容の希望から療養者の体調に想像力を働かせ、献立を工夫している。
スタッフはごみの回収などでもレッドゾーンに入る必要がある。「方法を誤るとごみに触れる可能性もある」(県の担当者)。感染の恐れが隣り合わせの中、生活支援を続ける。
福田専務は「今回は年明けから急に(療養者が)増えた。今は何とかこらえてやっていくしかない」と話した。