『コロナ禍と入試』 変異株拡大「昨年以上の対策必要」 休憩時間短縮や接触回避 志望校選択に影響も

長崎県内 感染者数の推移

 今年も、新型コロナウイルス禍の中で入試シーズンを迎えた。折あしく、オミクロン株による感染が全国的に急拡大。長崎県内の大学などは昨年以上に感染対策を徹底し、生徒も長期間にわたって外出を控えるなど可能な範囲で予防策を講じて試験に臨んでいる。

 消毒、検温を済ませ、1人また1人と受験会場に向かった。席に座り、大学が用意したチェックリストに健康状態を記入。緊張した面持ちで試験開始の時を待った。
 4、5の両日、一般選抜A日程が行われた佐世保市の長崎国際大。感染対策に万全を期すため、昨年に続き受験生全員にリストへの記入を求め、▽平熱より1度以上体温が高い▽せきが繰り返し出る▽明らかに嗅覚や味覚に異常がある-など6項目のうち一つでも該当すれば別日程の受験を求めたが、該当者はいなかった。
 年明け以降の感染急拡大を受け、試験の時間割も変更。受験生が会場にいる時間を短くするため、1時間目の後の休憩時間を20分から15分に短縮。食事中の感染を避けるため、60分の昼食時間を削り、15分の休憩とした。「オミクロン株は感染力が強く、昨年度以上の対策が必要だと考えた」と同大入試・募集センターの担当者。
 4日に受験した県立佐世保西高の金武由さん(18)は公共交通機関は使わず、保護者に車で送ってもらって会場入り。「学校から配布された消毒液のスプレーを使って感染に気を付けていた。無事に受験できてよかった」と安堵(あんど)した表情を浮かべた。

会場入り口で検温する受験生=佐世保市、長崎国際大


 1月15、16日に県内9会場で行われた大学入学共通テストを皮切りに、今月から県内私立大で一般入試が本格化。大学関係者は今年も受験生が安心して試験に臨めるよう感染対策に最大の注意を払っている。
 5日に一般選抜A方式を実施した長崎市の活水女子大。換気のため試験開始前には窓を開け、体調不良の生徒のために別室を用意。保健師を待機させた。面接時も生徒同士の接触を極力避けるため職員が誘導し、終了する度に隅々まで面接室を消毒。同大広報担当者は「事前の準備や当日の運営など、スタッフを増やし対応した」とする。
 同大は、コロナ禍で経済的な影響を受けている受験生を支援するため、一般選抜(共通テスト利用)入試限定で、検定料を従来の7分の1の2千円に減額。すると、志願者数が前年の約1.5倍の277人に増えた。コロナ不況が大学受験にも影を落としている状況をうかがわせた。
 九州・沖縄の6県に会場を分散させたのは長崎外国語大。教職員は学校のバスを活用し、公共交通機関利用を最小限にして現地入り。学内では1月17日からオンライン授業に切り替え、学生が大学を訪れる際には事前の電話連絡を求めた。“厳戒態勢”で臨んだ感染対策。冨田高嗣副学長は「できる限りのことはした」と話した。

 コロナ禍で迎える2回目の受験シーズン。志望校の選択にも少なからず影響を及ぼしているようだ。「感染者数が多い首都圏などの大学に進学せず、県内にとどまってほしい」とある保護者。実際、国公立大の2次試験の志願状況(4日現在)を見ると、長崎大の志願倍率(前・後期)は3.6倍(前年同期比0.3ポイント増)、県立大6.5倍(同1.4ポイント増)とそれぞれアップしている。
 国公立大の2次試験は25日。長崎市の女子生徒(18)は昨年の流行「第3波」以降、1年以上も友人との外出を我慢し、健康管理に努めてきた。今月初め、学校関係者がコロナ陽性者となった。受験生の中に陽性者や濃厚接触者はいなかったが、いつ感染者が出てもおかしくない状況なのだと痛感させられた。
 3月8、9日には県内公立高入試の後期日程が予定される。現在、県内全域に「まん延防止等重点措置」が適用中で、各地の小中高校で感染確認も相次いでいる。受験生や関係者にとって、例年以上に緊張の時期が続く。

◎受験 2年で様変わり 特例措置相次ぐ

 国内で新型コロナウイルスの感染者が初確認されたのは2020年1月15日。この2年で、入試は「ウィズコロナ仕様」に変化し、感染生徒らの受験機会を確保するための特例措置なども相次いでいる。
 20年1月の最後の大学入学センター試験。県内の試験会場ではほぼ例年通りに実施されたが、長崎大と県立大は2月下旬の2次試験で試験中のマスク着用を認めた。3月中旬の県立大後期日程では、試験会場の入り口にサーモグラフィーを設置。試験中のマスク着用は義務となり、換気や消毒液設置などが一般化し始めた。
 21年1月、初めて導入された共通テストは流行「第3波」の渦中だった。文部科学省のガイドラインに基づき、3密(密閉、密集、密接)回避や手指消毒などが「ノーマル」となり、一斉休校などの影響で学習が遅れた現役生を対象とする第2日程が設けられた。
 混乱は続いた。オミクロン株が猛威を振るい始める中で行われた今年1月15、16日の共通テスト。文科省は試験数日前、感染により受験できなかった生徒について、個別試験のみで合否判定を可能とするよう各大学などに通知。県内の大学などは急な要請に戸惑いながらも対応を検討。長崎大は各学部ごとの合否判定基準などを決め、ホームページ上で公開した。
 県教委は県内公立高校入試で、受験生がコロナの影響で前期(今月2、3日)や、後期試験(3月8、9日)の追試験(同16日)を受けられなかった場合、特例で中学校長の調査書などで選抜する。


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