入院後の陽性判明増 通常診療制限を懸念 自治医大付属病院・佐田院長

自治医大付属病院の入口。症状のある人に向けスタッフへの申告をを呼び掛けている=10日午前、下野市薬師寺

 新型コロナウイルスのオミクロン株の感染が広がる中、患者を受け入れる病院では院内での感染拡大に警戒を強めている。自治医大付属病院(栃木県下野市薬師寺)で1月以降、入院前の検査で陰性を確認しても、入院後に陽性と判明する患者が増えた。佐田尚宏(さたなおひろ)院長(62)は「院内での予想外の感染は、通常診療の制限にもつながる」と警鐘を鳴らし、感染対策への協力を呼び掛けている。

 同病院では新規の入院患者を1日に計80~100人ほど受け入れる。中でも全身麻酔が必要な手術を控える患者は、医療者への感染リスクを考慮し、入院の約3日前と手術前の計2回、PCR検査を実施する。

 オミクロン株の感染が拡大した1月以降、入院前のPCR検査では陰性だったが、手術前の再検査で陽性と判明する事例が数件発生した。中には入院前の検査後の会食が要因で感染したとみられる事例もあった。

 同病院では入院患者にもマスク着用など医療者と同様の感染対策を求めている。佐田院長は「仮に一般病棟の大部屋に感染者が入っても、周囲の患者が濃厚接触者となることは防げる」とみる。しかし、院内感染が広がった際の影響は大きく「入院前の2週間は家族以外との会食を控えるなど、感染対策を徹底してほしい」と訴える。

 同病院はこれまで、重症のコロナ患者の治療に当たってきた。オミクロン株では重症者が少ないが、医療従事者自身が感染したり濃厚接触者になったりする事例が増えた。子どもが通う保育園や学校が休業となり、休まざるを得ない職員もいる。スタッフの不足で集中治療室を全て稼働することができず、診療の制限も余儀なくされた。救急搬送も多く、医療体制は逼迫(ひっぱく)した状況が続く。

 佐田院長は「患者が増えすぎれば医療の質を落とさざるを得なくなり、助けられる命も減る。医療資源は有限ということを理解してほしい」と指摘。特に注意するべき場面として会食と長時間同じ空間で過ごすことの2点を挙げ、「何でも自粛ではなく、メリハリのある対策を心掛けてほしい」と呼び掛けた。

自治医大付属病院の佐田尚宏院長

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