言葉は心の使い

 心に思っていることは自然のうちに言葉に表れるという意味のことわざ「言葉は心の使い」。熱戦が続く北京五輪の大舞台で、17歳のアスリートが発した言葉は、まさにそれだった。スキー女子モーグルの川村あんり選手▲金メダル候補として臨んだ初の五輪。予選、準決勝は順調だったが、決勝は5位に終わった。その結果だけ見れば、印象は薄かったかもしれない。だが、直後に涙をこらえながら受けたインタビューは話題を呼んだ▲「申し訳ない気持ちでいっぱい」と話し終えた後、立ち去り際、インタビュアーに近づき「寒い中、ありがとうございました」と感謝を伝えたのだ。悔しさを味わったばかりの子が、取材する側を思いやったのである▲これまで何度か同様の経験をしたことがある。その多くは都市部から離れた山中の会場などが使用される国体取材。車を数時間走らせて到着した際、監督や選手が掛けてくれた言葉は今も忘れない▲「わざわざこんなところまで、ありがとうございます。皆さんのためにも頑張ります」▲川村選手のインタビュー後、自らを省みた。居丈高な口調になっていなかったか、嫌みな話し方をしていないか。17歳から教わった「まず相手の立場に立って」という人としての常識。すっかりファンになってしまった。(城)

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