「佐藤輝にはまだ早い」 阪神OB、V奪取へ大山の“4番固定”を推すワケ

阪神・大山悠輔【写真:荒川祐史】

昨季は143試合中93試合 6月に月間打率.211の不振

プロ6年目を迎えた阪神の大山悠輔内野手は、今季こそ“不動の4番”としてシーズンを全うすることができるだろうか。2005年以来、17年ぶり優勝の成否に大きく関わる問題だ。

大山は沖縄・宜野座キャンプ中の15日、シート打撃で昨季セ・リーグ最多勝&勝率1位の青柳と対戦。初球、内角に食い込むシュート系の球に詰まらされながら、左翼フェンスギリギリまで飛ばした。

現役時代に阪神、ヤクルトなど4球団で計21年間捕手とした野球評論家・野口寿浩氏は「あの球をあそこまで持っていけたということは、バットが振れ始めている証拠だと思う。調子が悪い時であれば、どん詰まりの遊飛か、芯を食ったとしてもファウルになっているはずですから」と指摘した。

昨季は開幕から4番に座り、3・4月は月間打率.300、5本塁打。首位快走の原動力となった。5月には背中の張りで19日間戦線離脱。同25日に復帰したものの、6月に月間打率.211の不振に陥ると、4番の座をサンズやマルテに明け渡す試合が増えた。結局、昨季大山が4番を務めたのは143試合中93試合(他にマルテ32試合、佐藤輝11試合、サンズ7試合)。シーズンの成績は打率.260、21本塁打71打点だった。

「一番しっくりくるのは大山」助っ人頼み脱出がVのカギ

野口氏は「今季は大山に任せるにせよ、他の選手にせよ、“4番はこいつ”と決めたら最後まで貫き通してほしい。キャンプ、オープン戦で競争に勝った者を4番にするにしても、コロコロ変えずに据え続けてほしい」と言う。

その上で「一番しっくりくるのは、これまでも重責を担ってきた大山だと思います。佐藤輝もいずれは4番に座るでしょうが、まだ早い。2年目からチームの勝敗を背負わせるのは酷だと思います。阪神の4番とはいかなるものかを、もっと見て勉強してからでいいのではないか」と話す。

阪神は2018年にロサリオ、2020年にはボーアと、いずれも前年実績ゼロの新外国人選手が開幕4番を務め、いかにも泥縄式に見えた。やはり日本人選手が何年にもわたって務めることが、安定した戦いにつながる。昨季は全143試合で4番を務めたヤクルト・村上や巨人・岡本の姿が理想だ。大山も2年連続で20本塁打を超え、最低限の条件は備えていると言えるだろう。

「チームメートやファンから“大山が打てなくて負けたらしようがない”と思われるバッターになってほしい」と野口氏。矢野監督が今季限りでの退任を宣言して臨む異例のシーズンに、不動の4番が置き土産となるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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