インディカー開幕直前セブリングテストに8チームが参加。琢磨も移籍後初テストに好感触

 2月27日に開幕を迎えるNTTインディカー・シリーズ。2月14、15日にセブリング・インターナショナル・レースウェイで複数チームがテストを実施。デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングに移籍した佐藤琢磨も初テストを行った。

 2022年もインディカー主催による合同テストはなく、今回はチームのプライベートテストとなったが、開幕目前を強く感じさせるエキサイティングな2日間のテストだった。

 同じ日程に集中し、1日目には17台、2日目日に14台がセブリング・インターナショナル・レースウェイのショートコース(全長1.68マイル)で周回を重ねた。天候は晴れ。気温は両日とも最低が摂氏8度で、最高は1日目が18度、2日目は22度まで上がった。

 1日目に走ったドライバーは以下の通りだ。

アンドレッティ・オートスポート:コルトン・ハータ、アレクサンダー・ロッシ、ロマン・グロージャン、デブリン・デフランチェスコ(ルーキー)
チップ・ガナッシ・レーシング:ケビン・マグヌッセン(ドライバー評価テスト)
チーム・ペンスキー:ウィル・パワー、ジョセフ・ニューガーデン、スコット・マクラフラン
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング:グラハム・レイホール、ジャック・ハーベイ、クリスチャン・ルンドガールド(ルーキー)
アロウ・マクラーレンSP:パト・オワード、フェリックス・ローゼンクヴィスト
デイル・コイン・レーシング:デイビッド・マルーカス(ルーキー)
AJ・フォイト・エンタープライゼス:カイル・カークウッド(ルーキー)、タチアナ・カルデロン(ルーキー)
フンコス・ホリンガー・レーシング:カルーム・アイロット(ルーキー)

 各チームの大きな目的は、今シーズンに向けたデータ集積だ。このオフにはアロウ・マクラーレンSP、アンドレッティ・オートスポート、そしてエド・カーペンター・レーシングがそうしたテストを行ってきた。

 タイヤラバーが乗っていない1日目に最速ラップとなる51秒851をマークしたのはコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート)だった。グロージャンは午前中がトップで、1日の総合では3番手。ロッシは8番手止まりだったが、アンドレティ勢のマシンの仕上がりは非常に良いようだ。

 2番手にはデイビッド・マルーカス(デイル・コイン・レーシング・ウィズHMDモータースポーツ)というルーキーが食い込んだ。昨年のインディ・ライツでランキング2位だった彼が優秀なドライバーであることは間違いない。

ルーキーのデイビッド・マルーカス(デイル・コイン)

 彼は昨年中にバーバー・モータースポーツ・パークで行ったテストでも速かった。ただし、この日のベストラップではプッシュ・トゥ・パスを使ってのものだった。どれだけ大きなゲインが得られたかは不明だが、トップと1000分の7秒しか違わないタイムを出せたのは、ドライビングもマシンセッティングも上々だったからだろう。

 トップでテストを終えたハータは、「セブリングは大好きなコースだ。とてもバンピーでストリート用のテストに適している。今日はいろいろなセッティングをトライし、使えそうなコンビネーションを見つけることができた」

「昨年スペックのエンジンで最速はとても気分がいい。新シーズン用のエンジンはパワーアップがされているはず。そちらでセント・ピーターズバーグのコースを走るのが今から楽しみだ。今日の勢いをセント・ピーターズバーグに持ち込み、昨年に続く優勝を飾りたい。開幕戦で勝つことで得られる勢いが非常に大きいことを昨年知った」とコメントした。

 ホンダ勢がトップ3独占。シボレーの最速はチーム・ペンスキーのニューガーデンで、4番手につけた。パワーがそのすぐ後ろの5番手。マクラーレンSPのフェリックス・ローセンクヴィストが7番手だった。ペンスキー期待の若手であるマクラフランは9番手で、昨年2勝のオワードは14番手と振るわなかった。

■セブリングテスト1日目/非公式結果

Pos. Driver Team Time

1 コルトン・ハータ アンドレッティ・オートスポート/ホンダ 51.851

2 デイビッド・マルーカス(R) デイル・コイン・レーシング・ウィズHMDモータースポーツ/ホンダ 51.858

3 ロマン・グロージャン アンドレッティ・オートスポート/ホンダ 52.021

4 ジョセフ・ニューガーデン チーム・ペンスキー/シボレー 52.059

5 ウィル・パワー チーム・ペンスキー/シボレー 52.211

6 グラハム・レイホール レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ) 52.255

7 フェリックス・ローゼンクヴィスト アロウ・マクラーレンSP/シボレー 52.281

8 アレクサンダー・ロッシ アンドレッティ・オートスポート/ホンダ 52.297

9 スコット・マクラフラン チーム・ペンスキー/シボレー 52.329

10 ジャック・ハーベイ レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ 52.362

11 クリスチャン・ルンドガールド レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/ホンダ 52.373

12 カイル・カークウッド(R) AJ・フォイト・エンタープライゼス/シボレー 52.389

13 デブリン・デフランチェスコ(R) アンドレッティ・スタインブレナー・オートスポート/ホンダ 52.407

14 パト・オワード アロウ・マクラーレンSP/シボレー 52.424

15 カルーム・アイロット(R) フンコス・ホリンガー・レーシング/シボレー 52.481

16 タチアナ・カルデロン(R) AJ・フォイト・エンタープライゼス/シボレー 52.540

17 ケビン・マグヌッセン(R) チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ 52.839

## ■パジェノーが最速。琢磨も初テストへ

 2日目はシモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング)が最速ラップとなる52秒113を記録した。前日のハータによるベストは51秒851だったから、0.279秒も遅かった。通常なら、2日目はタイヤラバーがより乗ったコンディションなので速いタイムが出される可能性が高い。しかし、今回は2日目に強い風が吹き続け、マシンから安定感を奪っていた。

 2番手はパジェノーのチームメイトであるエリオ・カストロネベスが出した52秒194。このベテランコンビには今シーズン、おおいに注目した方が良さそうだ。

メイヤー・シャンク・レーシングから参戦するエリオ・カストロネベスとシモン・パジェノー

「最後の走りはとても楽しかった。涼しくなってグリップが高くなっていた。最速ラップをマークできて嬉しい。チームを移籍し、新しいエンジニアとコンビを組んでいるが、考えていた以上にスムーズに仕事を進めて来ることができている」

「テストではタイムだけを追及しているわけではないが、どんな時だって速く走れた時は嬉しい。しかも、今日は多くの項目をテストしてたくさんの成果を得ることもできた。すばらしい1日になった」とパジェノーは語った。

 3番手はマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)で、2日目もホンダ勢が1-2-3だった。シボレーのトップはリナス・ビーケイ(エド・カーペンター・レーシング)の4番手。その次がルーキーのカークウッド。昨年のインディ・ライツチャンピオンは、プッシュ・トゥ・パスを使わずに5番手に食い込んだ。

 昨年度チャンピオンのパロウは52秒377、6度のタイトル獲得を誇るディクソンは52秒422のベストで6番手と8番手だった。目立たない結果だったが、データ収集は十分にできたであろう彼らは、開幕までにさらに一歩マシンを向上させてくるだろう。

ディフェンディングチャンピオンのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)

 佐藤琢磨は今年からデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングで戦うが、これが2022年シーズン向けの初めての、そして開幕前では最後のテストだった。

 たった1日で開幕……というのはなかなか厳しいが、パジェノーのように4日間あるうちの2日間をセブリングでのテスト=ストリート向けテストに投入する案は採用しなかった。残りの3日間を他のコースで使おうという考え方だ。

 DCRのマシンを理解し、エンジニアとのコミュニケーションを深め、マシンセッティングを向上させる。それらが今回のテストでの琢磨の掲げた課題で、それらはほぼすべてが達成された。

 琢磨は担当エンジニアとなったドン・ブリッカーについて、「データエンジニアを務めていたこともあり、データを見る力がある。そこは自分と合うところ」と話した。

 初走行でのベストのラップは14人中の11番手に終わったが、琢磨はDCRのマシンの良さを確認し、エンジニアの能力を高く評価していた。そして、熱意を持って確かな仕事をするクルーたちにも好感触を持った。

51号車を駆る佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシング)

「昨日のうちからクルーたちが一生懸命に用意をしてくれた。朝は電気系のトラブルが少し出たものの、昼間のいちばん暑いコンディションではトップ3のタイムを出せていたし、ユーズドのタイヤでも安定して良いタイムを出し続けることもできていた。それはポジティブな点」

「しかし、最後の方は、涼しくなっていたのに何かスピードが伸びない状態に陥ってしまった。セブリングでのテストはコンディションが1日の中で大きく変化する。そればっかりを追いかけても仕方がない」

「いかなるコンディションでも速い……というようにセッティングを合わせ込み切れなかったのは残念だけれど、今日の自分たちはいくつか良いセッティングの材料を見つけることができた。それらをセントピーターズバーグの開幕戦までにまとめ上げていきたい」と手応えを感じている様子だった。

スーパーフォーミュラに参戦していたタチアナ・カルデロン(AJ・フォイト・エンタープライゼス)

■セブリングテスト2日目/非公式結果

Pos. Driver Team Time

1 シモン・パジェノー メイヤー・シャンク・レーシング/ホンダ 52.113

2 エリオ・カストロネベス メイヤー・シャンク・レーシング/ホンダ 52.194

3 マーカス・エリクソン チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ 52.210

4 リナス・ヴィーケイ エド・カーペンター・レーシング/シボレー 52.269

5 カイル・カークウッド(R) AJ・フォイト・エンタープライゼス/シボレー 52.338

6 アレックス・パロウ チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ 52.377

7 コナー・デイリー エド・カーペンター・レーシング/シボレー 52.414

8 スコット・ディクソン チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ 52.422

9 カルーム・アイロット フンコス・ホリンガー・レーシング/シボレー 52.529

10 デイビッド・マルーカス デイル・コイン・レーシング・ウィズHMDモータースポーツ 52.723

11 佐藤琢磨 デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR 52.802

12 ジミー・ジョンソン チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ 52.947

13 ダルトン・ケレット AJ・フォイト・エンタープライゼス/シボレー 53.025

14 タチアナ・カルデロン AJ・フォイト・エンタープライゼス/シボレー 53.047

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