特大弾と折られたバット2本 「エンジゴジラ」楽天ドラ2安田に見えた魅力と課題

楽天・安田悠馬【写真:宮脇広久】

ヤクルトとの練習試合でバックスクリーンへ“プロ初本塁打”

楽天のドラフト2位ルーキーの「エンジゴジラ」こと安田悠馬捕手が、日に日に存在感を増してきている。17日にはキャンプ地の沖縄・金武町で行われたヤクルトとの練習試合に「5番・一塁」でフル出場し、7回に“プロ初本塁打”をバックスクリーンへ放り込んだ。同時に、1軍生き残りのために克服しなくてはならない課題も見えてきた。

7回2死二塁で迎えた第4打席だった。安田はヤクルト4番手の木澤が初球に投じた真ん中高めのストレートにバットを一閃。打球はバックスクリーンへ向かって伸び、122メートル先にある中堅フェンスを越えた。「打った瞬間、行ってくれたかなと思いました」と言う会心の当たりだった。

かつて巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏に憧れる左の長距離砲で、松井氏の代名詞である背番号「55」を与えられた大砲候補。入団前から「ホームランを50本打ちたい」と臆せず語っており、実際、振り終わった後に投手へ背中を向けるほどの豪快なフルスイングが持ち味だ。空振りした後にバットの先端を天に向かって突き上げる姿から“捕手版ギータ”と呼ぶ声も上がる。

一方で、この日は課題も見えた。2回先頭で迎えた第1打席では、ヤクルト先発・高梨の内角高めのカットボールにバットを折られ二飛。3回の第2打席でも、2番手・金久保の内角速球をファウルした際にバットを折られ、最後は空振り三振に倒れた。

「インコースを攻められ、詰まらされていました」

本塁打以外にヒットはなく、5打数1安打2打点だった。現役時代にヤクルト、日本ハムなどで活躍した野球評論家の野口寿浩氏は「飛ばす力は一級品」と認めた上で「本塁打以外の打席はインコースを攻められ、詰まらされていました。あのコースをどう打つかが課題」とも指摘した。

もっとも、楽天の石井一久監督も弱点は織り込み済みである。「僕が投手だったら(そこを攻める)という所もいっぱいありますが、どんどん削ぎ落して、投げるのが怖いと思われるバッターになっていってほしい。まずはプロの投手の球を体感して、どんどん壁にぶち当たってほしい」とうなずいた。

本職は捕手で強肩も売り物だが、この日は一塁手としてフル出場した。守備機会は1度もなかったが、味方内野手の送球に対しては両脚を広げて捕り「体は人より柔らかい方かなと思います」と笑う。石井監督も「基本的に、一塁に入れたのは打席数を与えたいからですが、守れるに越したことはない。それなりにこなせていたと思います」と評していた。

「いま一番してほしくないのは、目先の小さい結果を求めたスイングをすること」と石井監督。そこは本人も承知の上で、「打ちたい欲が強くてステップの幅が広くなりがちなので、常に狭くと心がけています」と技術的なポイントを意識しつつ「自分のスイングを貫いて、ホームランを打てるように頑張ります」と我が道を行く構えだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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