部員7人の廃部危機から45人の大所帯に 僅か5年で復活した少年野球チームの指導法

千葉・印西市で活動する小林キラーズ【写真提供:小林キラーズ】

小林キラーズは2017年に部員が7人にまで減少、廃部も検討された

野球人口の減少が深刻な中、廃部危機から“復活”を果たしたチームがある。千葉県印西市で活動する少年軟式野球チーム「小林キラーズ」は現在、45人の部員を抱え精力的に活動している。しかし、5年前には部員数が7人にまで減り、廃部まで検討された。復活を遂げた理由は、その翌年に就任した立石学監督の「子どもを第一に考える」方針がある。

和気あいあいとした雰囲気で野球に取り組む少年少女たち。保護者はお茶当番など雑務に追われることもなく、楽しそうに子どもを見つめる。野球経験のある母親は、グラウンド内で練習をサポートしている。「楽しくないと、選手は(野球を)続けないですからね」と立石氏は語る。

小林キラーズは1978年創部の伝統あるチームだ。ところが、2017年には部員が7人になり、試合を組むことが不可能に。翌年から息子がチームに所属していた立石氏が監督を務めることになった。「1年で9人集まらなかったら廃部にしようと考えていたんです」。知り合いや近隣の小学校に声をかけ何とか9人を集めた。

しかし、急場しのぎでは根本的な解決にはならない。野球を続けてもらうことを第一に考え、「楽しむこと」をモットーに“改革”に乗り出した。お茶当番を廃止した他、練習の終了時間を厳守して送迎する保護者の負担を減らした。すると、徐々に部員が集まり始め、今年の主将・中嶋蒼空くんがチームで初めて「スワローズジュニア」に選出されるなど力のある選手も現れた。

「親御さんは、お前たちがバントをするためにバットを買ったわけではない」

選手には遠くに飛ばし、速い球を投げることを求める。「小学生の時はバントよりも遠くに飛ばすのが楽しいじゃないですか。勝つために1球待ったり、身体が小さいからバントさせたりすることはないです」。選手には「親御さんは、そのバットをお前たちがバントをするために買ったわけではない。ホームランを打ってほしいから買ったんだよ」と伝え、たとえカウント3-0からでも思い切りスイングさせる。

その言葉を体現したのが中嶋くんだった。昨年末に行われた「NPB12球団ジュニアトーナメント2021」のイーグルスジュニアとの予選2試合目。2点を追う2死満塁、カウント3-0の場面で甘く入った直球を迷わず振り抜いた。

「第1ストライクが一番甘いと(立石監督から)言われていたので」と中嶋くん。惜しくも打球は右翼ポールの右側を通りファウルになったが、神宮球場のスタンドに届く衝撃的な打球に観客、ベンチも騒然とした。

小林キラーズでは、バントなどの練習をしないわけではない。「練習はさせます。必要な要素ですから」。基本的な技術指導をしっかりした上で、試合では「野球を楽しむ」ことを優先させている。伝統あるチームが復活した背景には、立石氏による時代に合わせた指導があった。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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