OBが感じた阪神・藤浪の“復活の兆し” 菅野へ弟子入りし「いいヒント得たのかも」

19日の楽天との練習試合に登板した阪神・藤浪晋太郎【写真:宮脇広久】

楽天との練習試合で特大ソロ浴びるも…「3ボール」は2回だけ

プロ10年目を迎えた阪神・藤浪晋太郎投手に、復活の兆しが見える。19日に沖縄・金武町で行われた楽天との練習試合では、田中和に中堅バックスクリーン上部のスコアボードを直撃する特大ソロを浴び、3回を4安打1奪三振1四球1失点という結果だったが、現役時代に阪神、ヤクルトなど4球団で21年間、捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「1個四球を出したら止まらなくなるという感じがなくなり、修正が効くようになった」と評価している。

楽天との練習試合では、2番手で3回から登板し、1イニング目は2死から絶賛売り出し中のドラフト2位ルーキー・安田に中前打されたものの、無難に無失点で切り抜けた。

続く4回、先頭の田中和にカウント3-1から、外角低めの151キロ速球をスコアボードまで飛ばされ、1死後にも育成選手のマーキに右前打、2死からは山崎にこの日唯一の四球を与え一、二塁とされた。それでも小深田を外角のストレートで押し込み、力ずくで左飛に打ち取った。

5回には安田から外角低めの速球で空振り三振を奪い、田中和も外角のストレートで投ゴロに仕留めて、前の打席の“借り”を返したのだった。

14人の打者と対戦し、3ボールまで行ったのは、田中和に本塁打された時と山崎に四球を与えた時の2度だけ。そのうち四球は、カウント3-0となってから、内角の速球と外角のカットボールで見逃しのストライクを取って粘り、最後は三振を取りにいったスプリットを見極められたものだった。前週の11日に日本ハムとの練習試合に先発した時も、3回で1死球こそ与えたが、1安打3奪三振、無失点に抑えている。

野口寿浩氏「あとはこの投球フォームをキープしていけるかどうか」

野口氏は「これで今年は絶対大丈夫、とまで言うのはさすがに時期尚早だが、現時点でバランスのいい投球フォームになっているのは確か」と話す。

「右腕をトップの位置へ上げていく段階で、非常にリラックスできている所が良い。昨年まではこの段階で力んでいて上体が突っ込み、腕が遠回りをしていた。今は藤浪本来のトップの位置をつくれて、リリースの瞬間にパワーを集中させることができている」と技術的な根拠を指摘。「1月の巨人・菅野との自主トレで、いいヒントを得たのかもしれませんね」とうなずいた。

藤浪はルーキーイヤーの2013年から3年連続2桁勝利を挙げたが、その後は極端な制球難に陥った。昨年は自身初の開幕投手に指名されたものの、試行錯誤は続き6月には中継ぎに配転。シーズン成績も3勝3敗4ホールド、防御率5.21にとどまった。オフには生き残りをかけ、あえてライバルチームのエース、菅野に弟子入り。自主トレに同行してアドバイスを受けながら、投球フォームを見直した。

「あとはシーズンを通して、このフォームをキープしていけるかどうか。先発ローテーションに入って2桁勝利を挙げるようなら、阪神が優勝を狙う上で非常に大きい」と野口氏。求められているのは、針の穴を通すコントロールではない。抜群の球威があるだけに、試合と自分のピッチングをぶち壊しにしない程度の四死球数に抑えられれば、十分白星はついてくるはずだ。もう1度、スターダムにのし上がる年となるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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