母が家賃を払う家で同居する53歳独身女性「貯金はわずか。母が他界したら路頭に迷う」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、53歳、会社員の女性。離婚後正社員となり、母とともに賃貸物件で暮らしている相談者。18万円の家賃を母が遺族年金で支払っているため、母が他界したら家がなくなるのではと将来を悲観していますが、今からできることはないのでしょうか? FPの飯田道子氏がお答えします。


53歳会社員、持ち家なし、貯金はわずか。

高齢の母親が、父親の遺族年金で、公団の家賃(18万円)を支払っています。遺産で母は生活しており(遺産といっても普通預金2,000万位)、母はどうにかなると思いますが、問題は自分です。

専業主婦から離婚、その後2015年に正社員になりましたが、勤めが長くないので貯金も400万円しかなく、母が他界したら自分は家がなく、路頭に迷うしか道がないのかと将来を悲観して毎日死にたくなるくらい泣いて過ごしています。60歳までは年収約400万の会社員ですが、あと6年。退職金や年金もわずかと思います。ずっと第3号被保険者でしたので、年金なんてないと思っています。

どうしたらいいかわかりません。アドバイスお願い致します。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、53歳、会社員、独身(離婚)

・同居家族:遺族年金の高齢母、認知症気味

・子ども:27歳、24歳(別居)

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:19万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:80万円

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:0円(18万円。母が父の遺族年金で支払い)

・食費:2万5,000円

・保険料:1万8,000円

・通信費:2万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):400万円

飯田:今回は、お母様と賃貸物件で生活する53歳の相談者様です。現在は、会社員として勤務しているものの勤務期間が短く、定年退職まで、あと6年。預貯金も少なく、お母様に万一のことがあったら、住むところがなくなってしまうのでは? と心配されています。相談者様が今からできることには、どのようなことがあるのでしょうか? また、将来に備えてどのようなことを考えておくべきなのでしょうか?

母の病状に注意しつつ収入に見合った物件を探して

今は、お母様の受給しているお父様の遺族年金と遺された2,000万円で家賃を支払っているとのこと。現在の相談者様自身の収入が19万円でありながら、家賃は18万円です。これでは、お母様に万一のことがあったときには、住み続けることはできません。また、収入額が未記入ですが、お母様の遺族年金と合算しても18万円は高すぎます。ご自分の将来を見据えて、今から引越しを検討されてもいいのではないでしょうか?

お母様は認知症気味とのことですが、介護保険でデイサービス等を利用していらっしゃいますか? 認知症の方の場合、住み慣れた住環境が変わると、認知症が悪化するともいわれています。もし、介護保険を利用しているなら、担当のケアマネージャーに、利用していないなら地域包括支援センターへ。引越しをする場合、どのような点に注意したら良いのか、一度、相談することをお勧めします。

もし、ご兄弟姉妹がいらっしゃるのなら、住いと家賃のバランスについて、相談してみてください。今は、同居で生活を送ることが可能ですが、万一、施設に入所しなければならなかったときには、いつもの家賃の支払いに加えて、お母様の施設の費用が加わります。これではお父様が遺してくれた2,000万円は、あっという間に終わってしまいますよ。

自分の預貯金についても考えてみましょう

現在の預貯金額は400万円とのこと。相談者様は少ないとおっしゃっていますが、決して少ない訳ではありませんよ。毎月3万円貯金しているとのことですので、6年間で216万円貯まりますので、単純計算で616万円まで預貯金額を増やすことができます。

また、ボーナスが80万円と記入されていらっしゃいますが、年間貯蓄額が記入されていませんでした。たとえば、そのうちの50万円を毎年預貯金に回していけば、6年間で300万円貯まります。順調に貯められれば、60歳のときには、預貯金額の合計は916万円貯まりますよ。あまり悲観的にならないでください。

また、今の60歳はまだまだ充分に働ける年齢です。60歳以降も働けるなら、年金が受給できる65歳までは働いてみてはいかがでしょうか?

住まいの不安の解消方法

繰り返しになってしまいますが、まず、お母様と同居している今の時点で、自分でも支払い可能な物件に引越しをするのがひとつの方法です。もし、一人っ子でお母様の相続人が他にいないのなら、お父様の遺産を節約するのも自分を守る手段です。

ご兄弟姉妹がいる場合は、お母様の面倒を誰が見るのかを話し合うことが必要です。面倒を見る場合は、お母様が使えるお金に関しても、ある程度の自由や権利を持つようにしてください。

今まで公的年金の3号被保険者だったことで不安を感じていらっしゃるようですが、年金は必ず受給できます。もちろん、必要な金額には程遠いかもしれませんが……。年齢的に、毎年1回、受給見込み額が記載された「ねんきん定期便」が届くと思います。自分はいくら受給できるのかを確認し、不足額を明確にすることが大切です。不足額が分かったら、働いて収入を確保するのか、2人のお子さんに援助を受けるのかも考えてください。

老齢基礎年金を満額受給できるとして試算してみると

2021年の老齢基礎年金額は、満額で約78万円です。今まで欠かさずに年金を納めており、60歳まで納めて続ければ、最低限78万円以上は受給できることになります。この金額は、月額に換算すると6万5,000円です。

住所地によって賃貸物件の値段は大きく違ってしまいますが、たとえば1人で家賃5万円のところに住み替えた場合です。現状の食費2万5,000円、保険料1万8,000円、通信費2万5,000円。その他、水道光熱費が記載されていませんが、これを1万円とした場合の家賃を含めた支出額の合計は12万8,000円。

月額の年金額は6万5,000円なので、6万3,000円不足することになります。65歳から25年間分で1,890万円。預貯金は916万円貯まっている計算ですので、預貯金のみで不足分を賄うときには1,000万円弱不足することになります。不足分をカバーするには、少しでもいいので65歳以降も働くという選択肢が必要になるでしょう。

家族で話し合うことから始めましょう

相談者様の抱えている不安の元になっているのは、1人になった後の生活の不安だと思います。ひとりで抱え込まずに、お母様のことは、ご兄弟姉妹で話し合う。もし、一人っ子なら、お母様のこと、自分の将来の不安について、お子様と話し合ってください。

お母様が元気なうちはお母様と同居する。その後はお子様と同居することも考えられるのではないでしょうか?

頂いた支出内容に未記入な部分が多かったので、一度すべてを記入し、客観的な状況を見つめることが大切です。不安な気持ちは、さらなる不安しか生みません。どうか前を向けるよう、ひとつ一つ、不安を解消していってくださいね。

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