ウクライナ問題で世界は緊迫!株価はどうなる?直近の動向を総復習

昨年後半まではコロナ相場により堅調に推移していた株式市場ですが、2022年に入り世界的に金融政策が緩和から引き締めへと転換され、価格水準を切り下げています。日経平均株価も昨年は2万7,000円から3万円近辺のレンジでの推移が続いていましたが、先月1月27日には2万6,000円台前半まで水準を切り下げ、不安定な値動きとなっています。

2月に入ってからはロシアによるウクライナへの侵攻への懸念が高まり、市場は更なる変動にさらされています。今回はウクライナ情勢について状況を整理し、今後のマーケットとの向き合い方について予習して行きましょう。

※本記事は2022年2月21日執筆時点の情報をもとに制作しています。


ロシアの侵攻リスクが急速に高まる

今回のロシアの動きの背景は、NATO(北大西洋条約機構)への加盟を探るウクライナと、欧米勢力の東方への拡大を防ぐためウクライナを勢力圏に置きたいロシアとの思惑がぶつかったことに起因します。

侵攻がされた場合は、第二次世界大戦以来の安全保障上の脅威になる可能性とも言われており、欧米諸国は外交的な解決を望んでいます。欧米は8年前にロシアがクリミアに侵攻した際には徐々に制裁を与えた結果、抑え込みがうまくいかなかったことから、今回は迅速に経済・金融面での制裁を加えるとしています。

制裁の内容も協議がされており、ロシアの主要銀行によるドル取引停止のほか、ロシアとドイツを結ぶ海底パイプラインである「ノルドストリーム2」の稼働阻止などが挙げられています。

このように警戒感が高まる中、2月に入ってからはロシアとベラルーシの軍事演習実施や、ロシア軍がウクライナ国境での戦力を増強している様子が見られ、緊張感が高まっています。2月14日以降は米国の大使館機能の移行をはじめ、各国もウクライナから滞在している自国民を退避させる動きが強まっています。一時はロシア軍が一部撤退との報道もありましたが、17日にはウクライナ軍による砲撃が観測され、その後も爆発などが複数回発生し、緊迫した状況が続いています。

外交的な牽制は続いていますが、事態は一段と悪い方向へ進んでいるように見えます。

エネルギー価格には更なる上昇圧力となる?

緊迫するウクライナ情勢は、現在マーケットの最大の関心事の一つであるエネルギー価格にも影響を与えます。ロシアは輸出額全体に占める資源の割合が高い資源国家であり、仮にロシアが侵攻を進めた場合はロシアからのエネルギー供給の停滞が予想され、原油価格・天然ガス価格の高騰の懸念があります。

原油価格に関しては上昇が続いています。2月に入りNY原油は1バレル90ドルを超え、さらにウクライナ情勢が緊迫した15日にはおよそ7年5ヵ月ぶりの95ドル台をつけました。その後はロシアの動向に合わせて90ドル近辺で推移していますが、場合によっては100ドルを突破するとの観測も出てきており、世界的なインフレが懸念されている中で上昇圧力に拍車がかかっています。投資の観点では、原油の先物やETFを取引することで利益を上げられる可能性もありますが、最近では価格変動も大きくなっており注意も必要です。

天然ガスに関しては、ロシアへの依存度が高いEUに対し、1月にはアメリカから前年同月比で4倍の輸出がされたことが判明したほか、日本もヨーロッパ向けに融通を予定するなど、事前にロシアをけん制するような動きが出てきています。一方で、各国の融通も長続きはしないものとされており、ロシアの侵攻が実施され経済制裁となった場合は、世界的に供給が弱くなることは避けらないと予想されています。

マーケットではウクライナ情勢の報道が優勢となっているものの、1月以降の値動きは米国の金融引き締め、利上げ観測によるものでした。資源価格の高騰は過熱しているインフレを持続させ、今年の利上げ回数の市場予想にも影響が予想されます。3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げが予想されていますが、FRB高官の発言に対し相場も神経質になっています。米国の金融政策動向もウクライナ情勢と合わせて引き続き忘れてはいけないポイントとなります。

日経平均株価にも下落圧力、個別銘柄を見極めるとき?

2月14日の週は日経平均も大きく変動しました。ウクライナ情勢が緊迫化した連休明け14日、15日は続落し、1月末以来の27000円台割れとなりました。しかし16日はロシア軍の一部撤退報道から世界的に株価が回復したことで27,400円台まで急回復します。ところが、17日は後場に入りウクライナ軍の砲撃がロシアメディアから報じられたことで急落。18日もウクライナ情勢への警戒感から27,000円を割れてスタートも、前場中頃に米露外相会談が行われることが報じられて下げ幅を縮小しました。

このように、最近のマーケットはウクライナ情勢や米国の金融政策に関する要人の発言に神経質に反応する、いわば”ヘッドライン相場”となっています。短期的に利ザヤを稼ぐ投資家にとってはチャンスとも言えますが、中長期的な目線で投資をする投資家にとっては不安な日々と言えるでしょう。

個人投資家の強みは常にポジションを取っている必要はなく、自分で投資のタイミングを自由に選べるところにあります。「休むも相場」という格言の通り、先行きが不透明な今のような相場の際は一時的に投資を見送る、あるいはポジションを小さくしてリスクを落とすといった行動が有効かもしれません。

一方で、このような相場状況においてもチャンスは全くないわけではありません。業績好調な海運株、資源高が追い風となる商社株は逆行高で上昇のトレンドを維持しています。また3月後半にかけては配当や優待を狙う売買も徐々に活発化してくることが予想されます。ニュース等では日経平均株価など株価指数が取り上げられがちですが、個別株に目を向けると、すべての銘柄が下落しているわけではありません。さらに、昨年までは高くて買いにくかった銘柄の中にも、最近の調整で値ごろ感が出ているものもあるのではないでしょうか。

相場状況が悪いときこそ、安く銘柄を仕入れるチャンスでもあります。銘柄選びに時間を使い、次の上昇機会に向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。

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