鷹・田中正義、最速156キロも「速いだけでは通用しない」 先発枠入りへの課題とは

西武との練習試合に登板したソフトバンク・田中正義【写真:福谷佑介】

野口寿浩氏が150キロ超え連発の田中正義を解説「投球の幅を広げていくことが重要」

ソフトバンクで先発ローテ入りを目指す2人がそろって好投した。22日に今年初の対外試合として行われた「球春みやざきベースボールゲームズ」の西武戦で、先発した田中正義投手が2回パーフェクト、2番手の大竹耕太郎投手も3回3安打無失点に抑えた。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏の目にはどう映ったか──。

プロ6年目を迎えた田中正は鮮烈な印象を残した。最速156キロをはじめ、150キロ超えを連発。1回から1番・鈴木、2番・外崎を連続空振り三振に仕留め、結局2イニング、打者6人を完璧に封じた。

2016年のドラフト会議では5球団の1位指名が競合した中でソフトバンクが交渉権を引き当てたが、昨年までの5年間は相次ぐ故障もあって1軍未勝利。通算29試合の登板は全てリリーフで、先発はない。昨季自己最多の18試合に登板し、防御率2.16をマークしたことが覚醒のきっかけとなるか。

野口氏は「この時期に150キロ超えを連発されたら、そりゃ調整途上の打者は打てません」と苦笑。その上で、「これから打者が状態を上げていく中で、このままのピッチングスタイルで抑えきれるかどうか。パ・リーグの各打者は速い球に強く、単に速いだけでは通用しない。田中正としては今後変化球の精度を上げ、投球の幅を広げていくことが重要になると思います」と指摘する。

この日は全25球中、68%の17球がストレート。フォークが5球、スライダーが2球で、本人が特に力を入れて磨いているカーブも1球投じた。「苦しい時でもカウントを稼げる変化球と、ウイニングショットになりうる変化球が欲しい。それは両方同じ球種でも、違っても構わない。いずれにせよ、そこが鍵になると思います」と野口氏は話した。

西武との練習試合に登板したソフトバンク・大竹耕太郎【写真:福谷佑介】

技巧派左腕・大竹耕は3回3安打無失点、野口氏「有利なカウントから勝負を」

一方、3回から登板した大竹耕は、田中正とは対照的な左の技巧派。カーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、チェンジアップなど変化球を駆使し、3イニングで毎回ヒットの走者を許したものの、粘りの投球でそれ以上進塁させることはなかった。

2017年の育成ドラフト4位で早大から入団したが、1年目の7月には支配下登録を勝ち取り、同年に3勝。昨季こそプロ入り後初の0勝に終わったものの、通算33試合(先発29試合)10勝7敗の実績がある。

野口氏は「今のソフトバンクには最低でも150キロを超える剛速球投手がめじろ押しで、ともすると大竹耕のようなタイプは見劣りしがち。このチームの先発ローテに生き残っていくには、さらに制球を磨いて、支配的な投球を見せていく必要があると思います」と見る。具体的には「2球目までに必ずストライクを取り、常に1-1以上の有利なカウントから勝負することが望ましい」と話す。この日はのべ11人の打者と対戦し、カウント2-0となる場面が3度あった。

ソフトバンクの開幕先発ローテは千賀、石川、東浜、和田の4人が確定的。残る2枠を田中正、大竹耕、笠谷、杉山、松本、大関らで争っている。昨季は8年ぶりのBクラスとなる4位に沈んだソフトバンクだが、チーム防御率3.25はリーグトップで、競争は相変わらず極めて厳しい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2