「2人のためにも生き続けて」宮古島2児殺害、無罪の母に裁判長が説論

 2人のためにも生き続けて―。幼い息子2人を手に掛け、殺人の罪に問われた元介護職員の母親(40)に無罪を言い渡した24日の那覇地裁判決。公判で息子たちのことを「私の宝物。命よりも大切」と語った被告に、小野裕信裁判長は「無理心中を図ったが、あなたは死んでいない。2人の供養をするのも責任の形だ」と説諭した。
▼判決内容「心神喪失の疑い残る」
 家族仲が良く、自衛官の夫と家事や育児に取り組んでいた被告。自身の考えなどを書き記す習慣があり、公判で証拠提出されたノートには家族への愛情あふれる言葉も並んでいた。「長男へ。勉強を頑張ってくれてありがとう。次男へ。言葉をたくさん話すようになってくれてありがとう。夫へ。いつもありがとう」

 ただ、もともと悲観しやすい特性があり、新型コロナウイルスの影響による自粛生活で、抑うつ障害が悪化したという。夫や家族への謝罪の言葉がノートに残されていた。判決は「心神喪失だった合理的な疑いが残る」と判断した。

 言い渡し後、小野裁判長は「事情を知らない人から、子ども2人を殺して無罪なのかと、冷たい視線を投げられるかもしれない。あなた自身も、刑罰で責任をとった方がいいと思ったかもしれない」とした上で、検察の証明が不十分だったと指摘。「判決後のノートの最初のページには、2人のためにも生き続けると書いてください」。傍聴席のあちこちですすり泣く声が漏れる法廷で、被告に語りかけた。

 
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