<南風>他者との共生

 去る2月22日は「猫の日」。猫の鳴き声「ニャンニャンニャン」と読む語呂合わせから1987年に制定されたそうだ。「猫と一緒に暮らせる幸せに感謝し、猫とともにこの喜びをかみしめる記念日を」という趣旨で、猫の日にはさまざまなイベントや啓発活動が行われている。ちなみに、世界ネコの日は8月8日。

 2021年に一般社団法人ペットフード協会が行った全国犬猫飼育実態調査の結果では猫の飼育頭数は894万6千頭。家族の一員として飼育されている猫がいる一方で、地域には飼い主のいない猫(野良猫)も多く存在している。それゆえに、野良猫に関わる問題も多くあり、特にふん尿による苦情、エサやりを巡り近隣トラブルにまで発展するケースもあった。

 このような問題への対策として沖縄県でも地域猫活動を推奨している。この地域猫活動はボランティアによる動物愛護活動とは異なり、地域住民が主体となり、野良猫の不妊去勢手術を行うとともに、地域の理解の下、住民などの有志により、野良猫を適正に管理していくことで、野良猫の数とトラブルを減らしていく取り組みである。

 だが地域の合意や理解が得られない場合も多く、普及していない現状がある。猫に対して持っている感情は一人一人違う。猫が好きな人、無関心な人、嫌いあるいは苦手な人が混在して地域に住んでいる。迷惑を受けている人、エサやりを続けている人、それぞれが意見を交わす必要もある。

 地域猫活動の考え方は、排除ではなく、考えの違う他者、存在との共生。立場の違う人の意見に耳を傾け、対立ではなく互いに妥協が必要になることもあるだろう。私はこの考え方は成熟した地域づくりにもつながると考えている。野良猫問題を入り口に、地域の多様な活動への発展も期待できるのではないだろうか。

(畑井モト子、琉球わんにゃんゆいまーる代表理事)

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