<社説>琉球新報活動賞 地道な活動に学びたい

 「一隅を守り千里を照らす」を基本理念に、社会の一線で活躍する気鋭の人物、団体を顕彰する第44回琉球新報活動賞がきょう2氏、4団体に贈られる。各分野の発展に心血を注ぎ、地道に挑戦を続けてきた姿に学びたい。 首里城下にチョウを翔ばそう会(大城安弘会長)は首里城周辺にチョウを繁殖させることを目的に結成され、放蝶(ちょう)や食草の植栽活動に取り組んできた。園児らへの飼育指導やチョウに関する啓発といった幅広い活動は、2020年にオオゴマダラを県蝶に指定することにつながるなど功績は大きい。

 新垣徹さん(慶良間太鼓同志会顧問)は渡嘉敷島で和太鼓の慶良間太鼓を立ち上げ指導してきた。青年会時代に余興で創作和太鼓を披露したことをきっかけに青年会メンバーで結成。大人だけでなく、幼稚園児、中学生らも指導し作曲にも携わる。園児として太鼓をたたいたメンバーが今では子どもたちに教える側になった。島に根付いた新たな芸能が着実に継承されている。

 中城村南上原組踊保存会(仲座包子会長)は子どもたちの創作組踊の公演を核に活動する。南上原には伝統芸能はなかったが、故事を基に創作。13年の初演は大人が演じたが、見ていた子どもたちの関心が高まり、15年に保存会と子ども組踊塾を結成した。移入の多い地域での活動の継続が住民のよりどころとなり、地域の誇りにもなっている。

 上間喜壽さん(上間フードアンドライフ代表取締役会長)は両親から継いだ弁当と天ぷらの店を成長企業へと押し上げた。負債を背負った逆境からスタート。「何を求めているのか」と顧客理解を重視し、飛躍へとつなげた。沖縄の間食文化から着想したコンビニでの天ぷら販売は大ヒットとなった。中小企業の経営について情報発信を積極的に行うなど、挑戦心は尽きない。

 人形劇団かじまやぁ(桑江純子代表)は人形劇を通して沖縄の文化としまくとぅばを伝える活動を継続してきた。台湾の伝統人形劇に学び、沖縄の民話や伝説を題材にした独自の人形劇を確立した。74年の結成からことしで48年。沖縄の風土に裏打ちされたストーリーで子どもたちの心に沖縄文化としまくとぅばの魅力を伝え続けている。

 東洋企画印刷(大城孝代表取締役)は沖縄の幅広い年齢層に応じた出版活動を続けて創業25年となる。教科書の出版を皮切りに業務を開始。琉球史の入門教科書「琉球・沖縄史」(新城俊昭著)で知られるほか、近年は文化芸術誌「モモト」、ライフスタイルマガジンの「porte」を創刊。沖縄の歴史、現在を未来へと伝えていく活動で沖縄の出版文化の発展にも貢献している。

 社会活動、地域振興、産業、文化芸術、出版の各分野で受賞者が果たした貢献は計り知れない。

 刺激を受けた後進が育っていくことを期待したい。

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