先の収入が読めない37歳自営業。優先はiDeCo?NISAは「つみたて」か「一般」か?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、最近投資を始めたばかりという37歳フリーランスの方。先々まで現在と同じ収入を得られる保障がないため、iDeCoやNISAをどのようなバランスで運用していけばよいのかわからないといいます。自営業者の上手な将来への備え方は? FPの伊藤亮太氏がお答えします。


現在37歳フリーランス歴5年になります。いつも来年までの仕事は確保できていますが、それ以降の収入がどうなるかは不明確といった働き方です。

相談は最近始めた投資についてです。収入が少なくなっても続けていけるよう、つみたてNISAを選択しましたが、仕事のある現在は年間40万の非課税枠の投資では余剰金が出ています。

現在貯蓄に回している月20万程の資金も投資に回したいと思っています。ですが先程も挙げた通り、いつまでその収入が続くかはわかりません。投資は老後の生活資金への一部充当が目的です。iDeCoは資金拘束が不安で月1万5,000円と少なめです。

今年はもう積立を始めてしまいましたが来年は一般NISAで120万円の非課税枠を利用して運用したほうがよいでしょうか?一般とつみたての変更はあまり行わないほうが資産運用にはプラスでしょうか?

他の案として「つみたてNISAを続けて余裕がある時には課税口座でのスポット購入をする」や「現預金を増やし続ける」など色々なパターンを考えては悩んでいます。不安定な収入の中で少しでも有意義なお金の働かせ方を見つけたいです。アドバイスよろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、37歳、自営業、独身

・住居の形態:賃貸(関東地方・一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:39万6,000円

・ボーナス:なし

・毎月の世帯の支出の目安:14万2,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:4万9,000円

・食費:2万3,000円

・水道光熱費:1万2,000円(年間費を月割)

・教育費:1万円

・保険料:4,600円

・通信費:7,100円(ネット+スマホ+クラウド)

・お小遣い:1万円

・その他:日用品3,000円、猫費8,000円、iDeCo1万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:22万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):500万円

・現在の投資総額:10万1,000円

・現在の負債総額:0円

伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太です。回答させていただきます。

私も自営業の身ですから、いつ何時収入が減るのではないかという不安に駆られる気持ちは大変よくわかります。相談者様は投資は老後資金のためとお考えのようですが、私はいざ収入が減った時のためと考えてもよいのではないかと思います。

つまり、長期的なビジョンでは老後資金確保ではあるものの、いざ収入が減った時の補填としても活用していくのがいいと考えます。

老後資金目的ならつみたてNISAよりiDeCoがベター

さて現状でいえることは、既に現在の貯金総額が500万円ありますよね。毎月の支出の目安が14万2,000円ですから、1年間で185万円ほどあれば生活できる見込みです。ここからおおよそ2年半~3年程度の生活費は確保できていることがわかります。すぐに投資する金額を取り崩すこともなさそうなため、とりあえずコツコツ気長に投資していくスタイルでいいでしょう。

また、いまの収入がある程度持続できそうであるならば、iDeCoの毎月の投資額を増やしたほうがいいように思います。所得控除が適用されるため、節税につながります。つみたてNISA、一般NISAはいずれも非課税のメリットはあるものの、所得控除は適用できません。そのため、資金拘束に不安があるのであれば一気に増やすのではなく月1万5,000円を2万円とか3万円ぐらいまで増やすことを検討されてみてはいかがでしょうか。本来、老後資金対策として投資を活用されるのであれば、iDeCoを活用すべきだからです。

老後資金対策が目的であれば、NISAに関してもつみたてNSIAを継続すべきです。ご相談者様はどうも目先の利益を考えているように思えますが、20年後を見据えた投資を行うのがそもそもの目的です。目的を見失ってはいけません。

余剰資金は「経営セーフティ共済」に掛けるのもおすすめ

さて、月々22万円の貯蓄ができる中、年間では264万円を投資にまわすことができます。このうちつみたてNISAを仮に年間40万円、iDeCoを仮に年間で36万円利用するとしましょう。それでも188万円余剰資金が残ることになります。

自営業の場合は、特に何かあった場合の備えが重要となりますから現預金で持っておくのでもよいでしょう。なお、私だったらこの余剰資金のうち一部で「経営セーフティ共済」を利用します。「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇を受けられるほか、いざという時には、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れできます。

そのため、例えば月2万円を経営セーフティネットに積み立ててみてはいかがでしょうか。こうすることで年間24万円を必要経費に算入でき、節税が図れます。収入が減った時などに解約し資金の補填を行うことも可能です。40カ月以上積み立てれば、積み立てたお金が満額戻ってきます。なお、掛金の上限はトータルで800万円となっています。

「小規模企業共済」も節税効果が得られる

この他、「小規模企業共済」を使う方法もあります。「小規模企業共済」は個人事業主などが利用できる、積み立てによる退職金制度です。毎月の掛け金は全額が所得控除の対象となり節税が図れます。退職や廃業時には積み立てたお金を受け取ることができます。場合によっては掛金の範囲内で事業資金の貸付制度も利用できます。月額上限は7万円となっていますが、例えばこれも月2万円ずつ積み立てていかれてはいかがでしょうか。もちろん、節税に視点をあてるのであれば、月額7万円利用してもよいと思います。

こうした節税の仕組みをまずは利用して、コツコツお金を貯めることを検討してみてはいかがでしょうか。投資の非課税よりも、所得控除による節税のほうが確実であり、浮いた税金分も投資にまわすことが可能となります。先に節税の流れを作り、老後資金対策へとつなげていくほうが無難だと思います。いざとなれば現金化できますしね。

預貯金用とスポット投資でバランスをとって

仮に、経営セーフティネット共済に月額2万円、小規模企業共済に月額2万円ずつ積み立てた場合、年間で48万円の資金が貯まっていきます。それでもまだ140万円くらい投資できる資金が残ります。

現在はコロナ禍をはじめ、ウクライナ情勢など世界経済を揺るがすような状況が続いており、必ずしも楽観的な状況とは言えません。そのため、いざ大きく株式市場が下落した場合に備えて、例えば残り70万円は預貯金を増やす財源に、残り70万円を複数回でスポットで投資できるように計画されてみてはいかがでしょうか。あとは投資の経験を積むことです。いつ買い時か探れるように日々の金融市場をチェックしてください。

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