2軍監督はキャンプ、OP戦でどこを見る? 巨人原監督“参謀”が語る選手の見極め

巨人で強打の内野手として活躍した岡崎郁氏【写真:共同通信社】

岡崎氏は2012年に巨人ヘッドで日本一、2度の2軍監督も経験

プロ野球は開幕へ向け、キャンプからオープン戦へと進みつつある。この時期、各球団の1・2軍のコーチ陣は選手たちのどこをチェックし、どのようなプランを描くのか。巨人で1軍ヘッドコーチ、2軍監督などを歴任した岡崎郁氏は首脳陣にとって、シーズンを占う上でこの時期が最も大事という。グラウンド上では見せない葛藤があった。

「1軍ヘッドコーチの仕事は、キャンプとオープン戦が一番大事です」。岡崎氏はそう言い切る。というのは「この時期にはまだ、監督はそこまでチームに関わらない。監督の仕事は公式戦が始まってから指揮を執ることで、1軍コーチはそれまでに、監督がバントのサインを出した時にはバント、ヒットエンドランのサインを出した時にはヒットエンドランを決められるようにしておかなければならない」からだ。「監督のやりたいことを、先回りして準備しておくくらいでないといけない」と矜持を抱いている。

岡崎氏が1軍ヘッドを務めたのは2011年と12年の2年間で、いずれも原辰徳監督の第2次政権下。巨人は2012年以来、日本一にはなっていない。一番の腕の見せ所である以上、キャンプ中はチームで最初にグラウンドへ行き、引き揚げるのは最後だった。

「選手たちの体調を見ながら練習メニューをつくる。オーバーワークになってはいけないし、かといって練習不足になってもいけない。3月に入れば、コンデションを見ながらオープン戦に出場させたり、居残りで練習させたりする。キャンプ、オープン戦でケガ人が出た場合は、ヘッドコーチの責任だと覚悟していました」

巨人で内野手・指導者として活躍した岡崎郁氏【写真:中戸川知世】

2軍監督のチェックポイント「打者の場合は選球眼」

同じキャンプ、オープン戦期間中でも、立場が2軍の指導者となると、その仕事は大きく異なる。「1軍の選手枠は31人だが、2軍は育成選手を含めると50人以上もいて、2軍内でも実力差が大きい。選手の力量によって教え方が変わる。高卒ルーキーは“ロー発進”で行こうとか、3、4年目の1軍予備軍には少し鞭を入れてハードに追い込んでみようとか……」と説明する。

2軍のオープン戦で岡崎氏が最初にチェックしたポイントは、打者の場合は選球眼だった。「1軍と2軍の一番の差は、ストライクからボールになる変化球の精度にあるからです。打者はストライクを打っている分には1軍も2軍もそれほど変わらず、ボール球を振らされずに見極められるかどうかが決め手になる」。前年に比べて成長が見られれば、大いに期待が持てるわけだ。

2軍の場合はイースタン・リーグの公式戦が始まっても、並行してキャンプ同様のチーム練習が継続される。「あくまで“リング”は1軍。2軍は勝負に勝つことではなく、勝負に使える選手を育成することが目的」という事情があり、長いスパンで選手を見守る。岡崎氏は巨人で2006年から07年に2軍打撃コーチ、2008年に2軍ヘッド兼内野守備走塁コーチ、2009年から10年は2軍監督、2013年から15年には2度目の2軍監督を務め、いずれも原監督第2次政権時代だった。

「コーチというものは、監督の手足。基本的に異を唱えることはない」と肝に銘じてきた岡崎氏は、選手、指導者、フロント時代を合わせて通算33年間在籍した巨人を昨年限りで退団した。原監督は2019年から“第3次政権”を樹立し、1軍ヘッドには元木大介氏(兼オフェンスチーフコーチ)、2軍監督には二岡智宏氏が就いている。そこには変わらない流儀が脈々と受け継がれている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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