早岐瀬戸のワカメ漁

 佐世保市の針尾島は大村湾の入り口に浮かび、東西両側に隙間、つまり瀬戸がある▲西側は幅約200メートルの針尾瀬戸で、二つの西海橋が架かり言わずと知れた渦潮の名所。東側の早岐瀬戸はさらに狭く10メートルほどしかない場所もあり、川のように潮の流れが速い▲その急流にもまれ、名産のワカメが育つ。2月に口開けとなるワカメ漁は早岐の早春の風物詩ともなっている。先日、長年漁をしている川原義博さん(73)の船に乗せてもらった▲船を出すのは潮の流れが穏やかな時間帯。漁には竹ざおの先に専用の金具を付けた「芽の葉取り」という道具を使う。水深2~3メートルほどの海底に張り付いたワカメを芽の葉取りをくるくると回してはがしとる。「芽の葉」とは地元の言葉でワカメのことだ。海をのぞき込むと一面にゆらゆらとワカメが揺れていた▲早岐の早春の風物詩がワカメ漁なら、初夏の風物詩は5月初旬に始まる早岐茶市。400年以上の歴史があるという茶市に、川原さんは毎年干したワカメを出しているという。だが、新型コロナウイルスの影響で2年連続で中止となっている▲感染が収まらず今年もどうなるのか気掛かりだ。地域の季節を彩る行事が中止になるのは寂しい。海底で揺れていたワカメが茶市に並んでいるのを想像しつつ、感染の収束を願う。(豊)

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