ソフトボール日本リーグ 本塁打王とベストナイン Neo長崎・調和政 「地元でやれる環境に感謝」

ルーキーイヤーに本塁打王とベストナインに輝いた調=大村市総合運動公園

 ソフトボールの日本リーグ男子で昨季、Neo長崎の調和政(長崎県スポ協スポーツ専門員)が本塁打王とベストナイン(捕手)に輝いた。高校、大学で数々の実績を残し、古里で再出発したルーキーが手にしたタイトルは、若返りが進むチームにとっても明るい材料。主砲の自覚を強めた23歳は、2年目以降もさらなる飛躍を誓っている。

■好敵手

 佐世保西高時代に日本一やU19日本代表で世界一を経験。日体大でも全日本大学選手権で4連覇(4年時はコロナ禍で代替大会)を達成するなど“勝ち癖”がついていただけに、社会人1年目の昨季は「勝つ難しさ」を痛感した。チームはリーグ全17試合で3勝14敗。下から2番目の17位に沈み、個人も前半2節は8試合で本塁打2本と、タイトルは「取れるなんて思ってもいなかった」。
 転機は昨夏の三重国体九州ブロック大会。チームメートで日本代表歴もある38歳の森勇紀(壱岐高教)らからアドバイスされて「自分のポイントをつかめた。ボールがよく見えて捉えられた」。リーグ後半は9試合で6本塁打。全国のスラッガーを一気に抜き去った。
 原動力の一つは、全国各地の他チームで活躍する多くの同郷選手の存在。「長崎出身の選手が盛り上がることで、そのレベルの高さを感じるし、高校から切磋琢磨(せっさたくま)したことが今に生きている。現地でもよく話すし、刺激を受けている」。終盤まで本塁打王を争ったのも大村工高出身の松尾翔輝(デンソー)だった。
 特に3連覇を飾った平林金属の右腕で、高校、大学とバッテリーを組んでいた小山玲央は特別な存在だ。「初めて敵」になった昨季の対戦成績は3打数無安打。「打たれたくない感じがめっちゃ伝わってきた。今、日本で一番いいピッチャーだと思う」と1年目の敗戦を潔く認めた上で「今季はガツンと言わせたい」と雪辱に燃える。

■つなぐ

 もう一つの活力は、教職員らを中心に地道に力をつけたクラブチーム、Neo長崎の存在。最大の目標だった2014年長崎国体での優勝こそ逃したが、活動を止めずに19年茨城国体で悲願の頂点に立った。当時、自身も大学3年で出場し、地元勢と融合して喜び合った体験は大きかった。さまざまなことを犠牲にしながら、長年その舞台に懸けたチームの情熱を肌で感じた。
 それだけに「次は自分たちが」という思いは強い。春からは県内の学校で講師として働く予定で、チーム内のベテランたちと同様に仕事と競技を両立させる多忙な日々が待つ。それでも「長崎にいながら高いレベルのリーグで戦える恵まれた環境」への感謝は大きい。有力な若手も複数入り、チーム力を維持向上させる流れもできつつある。
 だから、2年目以降は個人だけではなく、チームの躍進も求めなければならない。「大前提」と言い切る国体での結果はもちろん、日本リーグでは上位5チームによる決勝トーナメント進出は外せないと思っている。そのために「もっと打線のつながりが必要だし、捕手としても1年目の学びを踏まえて全国の強打者を抑えないといけない」と責任感を口にする。
 長崎県は小中高の競技力が全国トップレベルにあり、今や“ソフトボール王国”とも言える。「そこでプレーしていくことの楽しさを伝えたい」。地元国体後も変わらずに挑戦を続けてきた先輩、環境を整えてくれる関係者に恩返しして、この好循環を次世代へとつなごうと心に決めている。

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