年収900万ジョブホッパーの31歳独身女性。彼女のマイホーム購入が「アリ」な理由

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、年収900万円の31歳独身会社員の方。毎月12万の家賃がもったいないと感じており住宅購入を検討している相談者。しかしジョブホッパーで、今は高収入でもいつまで維持できるか不安があるといいますが、プロの意見は? FPの氏家祥美氏がお答えします。


結婚の予定はない独身女性31歳です。年収は、いまは900万円と少し余裕がありますが、ジョブホッパーのためいつまで維持できるか、いくつまで働けるのか自信がありません。また退職金もありません。

賃貸がもったいないと感じ、老後に借りられるのかという不安もあり、家を買いたいですが、いつ買うのがいいでしょうか。考慮すべき点もあれば教えてください。

また今は一時的に現金比率が多めですが、半分は自分で貯めたもので、半分は相続によるものです。500万円くらいを防衛費としてとっておき、残りは毎月30〜100万円ずつ投信ETFに移していくつもりです。

【相談者プロフィール】

・女性、31歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(東京都都心部)

・毎月の世帯の手取り金額:49万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:70万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費:4万5,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:1万円

・通信費:7,000円

・お小遣い:6万円

・その他:3万円

・毎月の貯蓄額:5万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,480万円

・現在の投資総額:565万円

・現在の負債総額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・退職金なし、年金不明

攻めの転職で高収入を獲得した相談者

氏家:ご相談者さんはかなり攻めの姿勢の持ち主のよう。自称「ジョブホッパー」とありますが、転職をこれまで何度も繰り返してきたようで、現在の年収は900万円と、同年代女性のなかではかなりの高収入を得ています。ご自身にとってよりいい経験を積める場所、より高く自分を買ってくれる職場を求めて、アグレッシブに動いてきた証です。

「いつまで維持できるのか、いくつまで働けるのか自信がありません」「退職金もありません」というところを見ると、勤務先は外資系企業や、伸び盛りのベンチャー企業といったところでしょうか。長期で人を育てることを前提にした旧来型の日本の企業が退職金を手厚く支払う傾向があるのに対して、こうした企業ではいま即戦力となる人材に、その時の働きに応じた報酬を支払う傾向があります。その一方で、日本からの撤退や事業の方向転換によっては、突然に職を失うこともありえます。

マイホーム購入は節税面でも「アリ」な選択

では、そんなご相談者さんにとって、マイホーム購入は賢い選択となるのでしょうか。

31歳の独身女性、という点だけを見ると、多くの場合、マイホーム購入をお勧めしません。なぜならば、頭金として十分な資産を持っていないことが多く、近い将来、結婚や出産などによりライフスタイルが変わる可能性も大きいからです。そういった場合は、ライフスタイルが固まり、頭金がたまるまで待った方がいいでしょう。

その点、ご相談者さんの場合には「結婚の予定はない」と価値観がはっきりしています。さらに、年収や預貯金の額も問題ありませんから、単身用のマンションを今持つことに大きな支障がありません。

さらに、税金面でのメリットもあります。独身ですから、配偶者控除や扶養控除など家族のための税金の控除が利用できないほか、家族のための生命保険が必要ないことから生命保険料控除もあまり利用していません。賃貸暮らしで住宅ローン控除も利用していないこともあり、税金をかなりしっかりと納めているはずです。これからマイホームを購入して住宅ローン控除を利用することができれば、大きな節税メリットを得られるでしょう。

収入減のリスクに備え将来貸しやすい物件を選ぶ

住宅購入を検討するにあたっての懸念材料としては、将来的な収入減少があります。いざとなったときに人に貸したり売却したりしやすい物件を選びつつ、支払い余力のある形で住宅ローンを組むことで対応していきましょう。

ここで、ご相談者さんの家計を見ていきましょう。手取り月収は49万円。このうち約30万円を支出して、5万円を毎月貯蓄しています。残りの14万円については明記されてはいないものの、31歳で投資残高が500万円以上あり、今後についても投資意向が強いことから、投資に回っていると思われます。また、毎月の30万円の支出のうち、12万円が家賃として支払われています。

現在、東京の都心にお住まいということですから、購入の場合も都心を希望されると思います。現在、都心のマンションは高騰しているため、エリア、築年数、広さ、予算などとのバランスを見ながら、物件を選んでいくことになると思います。

5000万円の物件を購入した場合、月の支払いはいくら?

ここでは、あくまでも一例として、都心で単身用のマンションを5,000万円で購入するとして考えてみましょう。

現在、預貯金と投資で2,045万円お持ちです。ここから1,000万円の頭金と、その他諸費用を支払います。住宅ローンは4,000万円を35年ローンで支払うとしましょう。金利0.5%とした場合、1か月の返済額は10万3,834円となります。購入した場合、ここに管理費や修繕積立金が上乗せされます。マンションの規模や築年数、付帯サービスなどによって大きな差が出る部分ですが、ここでは仮に両者合わせて3万円としておきましょう。この場合、住居費負担は毎月13万3,834円となります。現在の家賃負担が12万円ですから、いまよりも1万4,000円程度の負担増となります。

できるだけ繰り上げ返済をして金利上昇対策を

不安要素としては、金利の上昇や収入減少があると思います。金利が仮に2%となった場合、月々のローン返済が13万2,505円に上昇します。0.5%の場合には10万3,834円なので、約3万円返済負担が増すことになります。このリスクについては、余裕があるときにあらかじめ繰り上げ返済資金を貯めておき、金利が上がったときにローン残高を減らしておくことである程度対処できます。

また、現在よりも収入が減った場合についてですが、現在、貯蓄を5万円、投資を14万円ずつできているのであれば、もしも収入が今より10万円減少したとしても返済は継続できるでしょう。

2022年からの住宅ローン控除の変更点をチェック

ここまで、ご相談者さんにとって、住宅購入は「アリ」な選択ということで、住宅購入を前提とした家計について試算をしてきました。続いて、住宅購入の前提となった住宅ローン控除について、今年から大きな変更があることをお話しておきます。

昨年までは年末ローン残高の1%が控除されていましたが、2022年入居からは控除率が0.7%に引き下げられます。これは、近年の住宅ローン控除利用者の金利が1.0%未満のことが多く、住宅ローンを借りている人ほど利益を得る状態が続いていたことを見直すためです。適用期間は新築の場合、一部を除いて13年間、中古住宅の場合には10年となります。詳しくは下記の図表をご覧ください。

なお、新築を希望する場合、2023年12月末までの入居であれば、床面積が40㎡以上あれば住宅ローン控除の対象になります。それ以降の新築物件、もしくは中古物件の場合には、50㎡以上ないと住宅ローン控除の対象になりません。物件選びの参考にしてください。

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